マンション売却の査定額の決め方は?査定額を高くするための注意点を教えてください。

自宅マンションの売却を考えています。不動産会社に査定をしてもらう予定です。不動産会社は、どこを見て、どのように査定するのでしょうか?
できるだけ高い査定金額を出して欲しいです。掃除したら査定額がアップしますか? また、査定前にリフォームしたほうがいいですか?

この記事に登場する専門家

菅 正秀

宅地建物取引士、マンション管理士、住宅ローンアドバイザー、福祉住環境コーディネーター。
大阪府大阪市生まれ。大学卒業後、弁護士事務所に勤務、宅地建物取引士資格取得を契機に大手不動産会社に転じる。法律知識を活用し中古住宅、中古マンションの仲介営業を担当。ステレオタイプの不動産会社のイメージを払拭して、顧客と不動産会社が健全なパートナーシップを結べる一助なるコンテンツ作成を心がけている。

今回のご質問者様のご相談内容は、

  1. 不動産会社の査定項目や査定方法が知りたい。
  2. どんな準備をしたら、査定金額が高くなるのか知りたい。

の2点になります。

大切な資産であるマンションですから、できるだけ高く売りたいですよね。

不動産会社からどれくらいの金額が出てくるのか、不安半分、期待半分・・・
ちょうどご自身の健康診断の前日の心境に似ているかもしれませんね。

本記事では、宅地建物取引士であり、業界経験20年以上の筆者が、不動産会社の査定の実態(どこをどう見て、どのように評価して、金額を出しているのか)についてわかりやすく解説していきます。

筆者は、実際に毎月数件の不動産査定をしておりましたので、最後までお読みいただければ、安心してマンションの査定を依頼できるだけでなく、査定書の読み方まで分かるようになります。

1、そもそも「マンションの査定」とは

まず覚えておいていただきたいのは、

査定価格 ≠   マンションの価格 ≠   売り出し価格 ≠   売却価格

ということです。

そもそも、不動産会社が行う「査定」とは、売り出し価格の参考として 3 ヶ月程度(媒介契約期間)で買い手が付くことを目安に算出したものです。

言わば不動産会社の予想価格です。

あなたのマンションの価格は、不動産会社が決めるのではないことを忘れないでください。

不動産会社の査定価格で必ず売れるという保証はないのです。ですから、高い査定価格を出した会社が良い会社ではないのです。

不動産会社の査定価格 = 参考価格

であり、あなたのマンションをいくらで売りに出すかは、あなたご自身が決めれば良いのです。

売主希望価格 = 売り出し価格

ですが、売り出し価格 ≠   売却価格 であり、

売却価格 = 売主と買主の合意価格 = マンションの価格

になります。

不動産会社の査定価格は、あくまで参考価格なので、1社だけの価格では参考になりません。
必ず複数の会社に査定してもらいましょう。
その中から、実際に売却をまとめてくれそうな不動産会社をパートナーにしましょう!

詳しくは、マンションを高く売る定石を解説した別記事「中古マンションです。転勤が決まりできるだけ高値で売りたいです。(中古マンションを高く売却する方法)」を合わせてお読みください!

中古マンションです。できるだけ高値で売りたいです。(中古マンションを高く売却する方法)

2、マンションの査定手法

MEMO
これからご説明する査定手法は、国土交通省の外郭団体である「公益財団法人 不動産流通推進センター」が作成し、国土交通省が利用を推奨している「既存住宅価格査定マニュアル」に基づいています。
多くの不動産会社が利用していますし、利用していなくとも項目が少し違うだけでやり方そのものは同じです。

マンションの査定書サンプルを添付しておきますので参考にしてください。
マンションの査定書サンプル

マンションの査定手法は、あなたのマンション(査定マンション)と似通った実際に売買されたマンション=事例マンションと、あなたのマンションを比較して価格を算出します(取引事例比較方式)。

具体的には、

①査定マンションと事例マンションを、評価項目に照らして、それぞれの評点を出します。

②事例マンションの単価に、①の評点を比較した倍率を掛けて査定マンションの単価を計算します。

③査定マンションの単価に、査定マンションの面積を掛けて「査定価格」を算出します。

※算出した査定価格について調整の必要がある場合は、「流通性比率」によって査定価格の調整を行います。

3、マンション査定のプロセスと評価項目(査定方法=見られる箇所)

それでは、査定現場の実態を見ていきましょう!

①まず、事例マンションの選定からスタートします。

マンションの取引事例の中から適切なものを選定します。
選定した取引事例によって査定精度が高くも低くもなりますので、非常に重要です。

取引事例として選定すべきマンションとは

  • 買い急ぎや、売り急ぎといった特殊事情のない物件
  • 取引時点が過去1年以内の物件
  • 同種、同等、同類型の物件(査定マンションと似通っている)

というものです。

査定マンションと同一マンション内の物件が一番いいです。

※事例マンションが査定した不動産会社が取引にかかわったのか、そうでなければ、どの程度取引の経緯を把握しているのか確認しましょう。

②査定マンション、事例マンションに評価項目の評点をつけます。

評価項目は、

  • 経過年数(築年数)
  • ⒈交通の便
  • ⒉立地条件
  • ⒊住戸位置
  • ⒋専有部分
  • ⒌修理・管理、保守・清掃、管理員
  • ⒍敷地
  • ⒎建物部分、設備・施設

になります。

②査定マンション、事例マンションに評価項目の評点をつけます。

具体的にどこをどう評価するのかは、以下のとおりです。

経過年数(築年数):
もちろん、経過年数は新しいほど評価されます。10年経過を標準として、10年未満をプラス、11年以降をマイナスにそれぞれ1年きざみで評点をつけます。

 

⒈交通の便:
「バス便」より「徒歩圏」の方が評価されますし、同じ「徒歩圏」でも徒歩6分を標準とし、5分以内をプラス、7分以降をマイナスの評点をつけます

 

⒉立地条件:
・周辺環境は、住宅地としての優劣、住商混在か、住工混在か等、住環境を評価します。
・店舗への距離は、生活必需品を販売する店舗へのアクセスを評価します。
・公共施設利用の利便性は、公共施設(公園、役所、学校、病院等)へのアクセスを評価します。

 

⒊住戸位置:
・所在階は、対象マンションが何階部分にあるかを評価します。3階を標準に、4階以上をプラス評価、2階以下をマイナスに評価します。
・開口部(バルコニー)の方位は、南を標準に、東、西、北はマイナス、南東角部屋や南西角部屋はプラスに評価します。
・日照・通風の良否は、開口部(バルコニー)の前面に日照・通風を阻害する建物・構造物があるかないかで評価します。

 

⒋専有部分:
・室内の維持管理状況は、過去のリフォームや室内の維持・保守の状態の評価です。
・柱・梁・天井の状況は、天井の高さ、柱型や梁型の位置・大きさによる利便性を評価。
・住戸のゆとりは、リビングの広さや、収納の個数・広さ、バルコニーの広さ等を評価。
・専用庭またはテラスの有無では、1階住戸でも専用庭があるとプラス評価になります。
・外からの騒音・振動は、窓を閉めた室内で日常生活に気になる程度の状態かを評価。
・眺望・景観は、夜景等が特に優れている場合にプラス評価します。
・バリアフリー対応状況は、高齢者等への配慮がなされているかの評価です。

 

⒌修理・管理、保守・清掃、管理員
・修理・管理では、適切な修繕計画の有無、管理費・修繕積立金が平均的かを評価します。
・保守・清掃の状況や、管理の形態、管理員の勤務体制を評価します。

 

⒍敷地
・土地についての権利は、敷地に対する権利が所有権かどうかを評価します。地上権・賃借権は、たとえ定期借地権であっても大きくマイナスになります。買主の住宅ローン融資に制限がかかるためです。

 

⒎建物部分、設備・施設
・建物の外観・エントランスの仕様や仕上げ(グレード)や広さを評価します。
・耐震性は、新耐震基準か、長期優良住宅かの評価です。
・省エネルギー性能は、次世代省エネルギー基準適合かどうか評価します。
・設備・施設では、セキュリティ設備の状況やインターネットの対応の評価です。

以上、非常に多岐に渡ります。

③評価が出揃ったら、査定マンション、事例マンションの評点を集計します。
④事例マンションの単価に、③評点を比較した倍率を掛けて査定マンションの単価を計算します。
⑤査定マンションの単価に、査定マンションの面積を掛けて「査定価格」を算出します。

実際は、③④⑤はシステム化されていますので、自動計算です。

⑥流通性比率による調整

自動計算で算出した査定価格が、流通市場性の優劣(売りにくいか、売りやすいか)が認められる場合には、流通性比率(0.93〜1.07)を乗じて査定価格を調整します。

実は、不動産会社の査定価格にバラツキが出るのは、ここの調整によることが大半の理由になります。詳しい内容については項をあらためて説明します。

4、不動産会社の実力が分かる「流通性比率」

この流通性判定の基準には、

  1. 単価と総額の関係(単価は妥当でも面積が大きく、マンションの総額が大きくなり売りにくい場合)
  2. 購入者層と購入価格帯のミスマッチ
  3. 査定マンションの所在地域における人気度や需給関係(供給が少なく希少性があり売りやすい場合)

があります。

これは、査定する不動産会社の抱えている購入者層の違い(集客力)や、地域情勢・市況の把握力、販売ノウハウの違いによって、強気に査定できるかどうか変わってくるからです。

つまり、

流通性比率の違いから不動産会社の実力が把握できる

のです。

査定をした不動産会社に、この流通性比率の根拠を詳しく聞いて見ましょう!

5、売りやすいマンション、売りにくいマンション

筆者の経験から、売りやすいマンション売りにくいマンションの具体例をお伝えしておきます。

まずは、売りやすいマンションから

  • 立地条件が良いマンション:駅徒歩1分や駅直結
  • 特徴のあるマンション:天神祭の花火がリビングから見られるマンションや桜並木に面して4月に必ず売れるマンション
  • 売主さんの対応が良い:いつ買主さんを案内しても、にこやかな対応で売り込みすぎないマンション

逆に、売りにくいマンション

  • 管理費、修繕積立金が異常に高い:特殊な設備があり毎月5万円ほど必要
  • 相場より異常に高く値引き不可:周りの売り物件の比較に使われる
  • 売主さんの対応が消極的:なかなか案内できない、本音を言ってくれない

もちろん売りにくいマンションというだけで、「売れない」ということではございません
ただ、筆者のこれまでの経験からこういった傾向はわかりやすく表れています。

6、マンションの査定を依頼するときの注意点

最後に、あなたがマンションの査定依頼をする時の注意事項をまとめてお伝えします。
  • 査定にあたって、リフォームやハウスクリーニングをする必要はありません。
    →これらをするかどうかは販売戦術になるので、売りに出すときに不動産会社と相談して決めてください。
  • 設備の不具合や雨漏りなどの不具合は隠さず伝えましょう。
    →瑕疵担保責任を問われたり、引渡し後に思わぬトラブルになります。
  • 必ず複数の不動産会社に査定をしてもらいましょう。
  • ご自身でも、匿名査定やAI自動査定サービスなどでマンションの相場を知っておきましょう。
  • 住んで見ないとわからない情報は、不動産会社に教えてあげましょう。
    →不動産会社の担当者がセールスしやすくなります。

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不動産一括査定サイトとは?

不動産一括査定サイトとは、マンションを売ろうかなと思ったときに、売りたい物件の情報をスマホやパソコンで入力するだけで、無料で複数の不動産会社に査定(売却予想価格)を出してもらうことができるサービスです。

マンションを売るのが初めてで、不動産会社に知り合いのいない方にぴったりなサービスです。

不動産一括査定サイトは、少し検索してみるだけで30を超えるサイトが出てきます。イエウール、イエイ、マンションナビ、ホームズ、すまいバリュー等、より取り見取りです。

マンション(中古)に特化した不動産一括査定を提供しているサイト「マンションナビ」は、全国の多くの範囲を網羅しているので試してみてもいいかもしれせん。

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注意
不動産一括査定サイトを利用するポイントは、「どれくらいで売れるのかを知ること」「どの不動産会社が高い査定額を出してくれるのかを見ること」ではありません。

あなたとパートナーを組むべき「信頼できる不動産会社」を選ぶために利用してください。

そのためには、不動産一括査定サイトで、査定依頼を発信するボタンを押す前に出てくる不動産会社の候補のプロフィールを良くみて慎重に選んでください。

ボタンを押すまで、あなたの情報は流れていませんので安心してゆっくり吟味してください。もし良さそうな会社がなければ、他の不動産一括査定サイトに変えましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

不動産会社のマンション査定の実態を、詳しくお伝えしました。
随分と細かく見るものだと思われたかもしれませんね。

実は、人気のマンションだと、同じマンションの事例が沢山ありますので、実際にお部屋を確認しなければならない項目以外は、すぐにできてしまうものなのです。

大事な項目は「流通性比率」です。不動産会社の実力が見えてくることは既にお伝えしましたが、本当は、あなた(売主)のご事情も加味しなければならないのです。

ご事情によっては、スピード重視しなければいけないことも、強気で同じマンションのライバル物件がなくなるまで待って勝負できる場合もあります(もちろん市況の傾向も見ておかなかればなりませんが)。

マンションの売却は、不動産会社との良いパートナーシップが成功の秘訣になります。

優秀な不動産会社と担当者に出会われることを祈念しております。

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菅 正秀

■宅地建物取引士、マンション管理士、住宅ローンアドバイザー、福祉住環境コーディネーター。 ▼大阪府大阪市生まれ。大学卒業後、弁護士事務所に勤務、宅地建物取引士資格取得を契機に大手不動産会社に転じる。法律知識を活用し中古住宅、中古マンションの仲介営業を担当。 その後、顧客と一緒にモノづくりをするために、地域中小建設会社に移り、注文住宅・賃貸マンションの受注営業を担当。大手建設会社との競合が激しい中、操業以後に流入してきた近隣住民のクレームにお悩みの経営者さんに、不動産会社時代の人脈を使い工場の移転先を斡旋した上で、その跡地に93戸の賃貸マンション建設の受注をするなど、15年間で約32億円の受注する実績をあげる。 現在は、建築にも明るい不動産コンサルタントとして、不動産会社のエスクロウ業務(契約管理)・新人社員指導等を行なっている。ステレオタイプの不動産会社のイメージを払拭して、顧客と不動産会社が健全なパートナーシップを結べる一助なるコンテンツ作成を心がけている。