【土地を売る・土地を売却】これさえ読めば絶対に後悔しない

土地を売る大まかな流れ

こちらでは土地売却に関する下記のような疑問について、わかりやすく解説していきます。

「所有している土地を売却したい、でも何から手をつけたら良いの?」

「土地を早く高く売りたいけど、良い方法はある?」

「土地を売却するとき、トラブルになるようなケースって?」

「土地を売却するまでの流れやタイムスケジュールを知りたい」

「土地を売却するときに必要な書類や費用について教えて欲しい」

土地売却の経験豊富な人を探すことは難しく、初心者の方だとなおさら進め方がわからず悩まされるでしょう。土地を売る際の全体的な流れについて要点をまとめました。イメージを掴む参考にしてみてください。

①売却準備

土地を売るため、まずしなければならないのが「準備」です。マンションのような建物とは違って、土地の売却に関しては事前に確認すべきことがいくつかあります。土地が特に「更地」である場合、土地を売却できる状況にしておかなければなりません。

土地を売却する際、一番多いトラブルが「越境」「境界」問題です。後ほど詳しく紹介しますが、準備のステップでは売却予定の土地が、隣地と明確に区別できるかを確認しておくことが重要。隣地との「境界」を明示することが売主としての義務となります。

また土地の広さや地域によっては、「土壌汚染」「埋蔵文化財」「地下埋設物」の調査も必要になるでしょう。見た目は普通の更地であったとしても、地中に何があるか素人では判断不能です。少し土を掘ったくらいでは、土地がどのような状態なのかもわかりません。

こういったことを調査するには費用が発生すると同時に、時間がかかることもあります。土地を売却しようと検討しはじめた段階で、早めに不動産会社に相談したり不動産査定をしたりして準備に取り掛かりましょう。

②価格査定

売却準備と同時進行させておきたいのが、土地の価格査定です。査定にはいくつかの方法がありますが、自分でやるのが一番手っ取り早くお金もかかりません。

しかしながら「準備」のステップでお伝えした通り、土地の売却には素人だとわからない事柄も多く、それがトラブルの引き金となる可能性もあります。土地の売却を本格的に検討しているのであれば、不動産会社への見積もり依頼も必要になるでしょう。

ここでは簡単に、自分で土地の価格(目安)を調べる方法について紹介します。PCやスマホにアクセスできる環境であれば、誰でも手軽に土地の査定額を調べることが可能です。その際に注意したいのが、「土地の価格の種類はひとつではない」という点。「一物四価」とも不動産業界では言われますが、土地の値段には4つの種類があります。

それが「公示価格」「相続税路線価」「固定資産税評価額」「実勢価格(相場)」で、どれも土地の価格を知るうえでは大切な指標です。どの数字も資産価値を知る参考になりますが、それぞれ「目的」が違っています。

・公示価格

一度は目にしたことがある言葉かもしれません。新聞やニュースで毎年「最高額」が話題になる、日本国内の土地取引の指標となる数字です。国土交通省が日本全国に定めた「標準地」を対象に、1平方メートルあたりの土地価格を示します。この計算をするのは、国家資格を持った「不動産鑑定士」です。

国土交通省の「土地総合情報システム 地価公示・都道府県地価調査」を利用すれば、都道府県、市区町村名を選ぶだけで、簡単に所有している土地の公示価格がわかるでしょう。

公示価格と同じような指標に、「基準地価」があります。公示地価は国が公表するものですが、一方の基準地価は都道府県が公表するもの。別名「都道府県価格調査」です。

公示地価は、基準日が1月1日時点、基準地価は7月1日時点という違いがあります。2つの数値の基準日が「半年ずれている」ことから、1年を通して土地の価格に変動があったとしても偏った数字にはなりません。不動産業界の実務でも、この2つの価格を参考に土地の価格を算定します。

公示価格 基準地価
基準日 1月1日時点 7月1日時点
公表時期 3月 9月
発表機関 国土交通省 都道府県

・相続税路線価

「相続税路線価」(※通常は「路線価」)はその名の通り、相続税の計算をする際の基礎となる価格です。この路線価は公示価格の8割とも言われていて、贈与税、相続税を計算する際の目安にもなります。

土地の価格というよりは、土地が接する「道路」によって価格が決定される計算方法です。土地は道路に接していなければ価値が低くなるだけでなく、どういった道路に接しているかによっても金額はかなり変わるでしょう。

所有する土地が接している道路に示された「1平方メートルあたりの価格」に、土地面積を乗じて評価額を算出します。相続税路線価は、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」を利用することによって、自分で評価額の目安を知ることができます。

相続税路線価
基準日 1月1日
公表時期 7月初旬
発表機関 国税庁

・固定資産税評価額

「固定資産税評価額」は参考程度に覚えておけば問題ありません。「固定資産税」「都市計画税」「不動産取得税」「登録免許税」など、土地に課税される税金を計算する基礎となる価格です。

公示価格の7割と言われていますが、その計算方法はなかなか複雑です。

固定資産税評価額
基準日 1月1日(3年に一度評価替えを実施)
公表時期 3月・4月
発表機関 市区町村

・実勢価格(相場価格)

現状で取引されている土地価格が最もわかりやすいのが、「実勢価格」です。不動産業の関係者でなくとも、実際に取引されている土地の価格は自分で知ることができます。

「所有している土地の近隣が、実際にどれくらいで売却されているのか」を調べてみましょう。国土交通省の「土地総合情報システム 不動産取引価格情報検索」を利用して、取引時期や都道府県を選択すれば、簡単に近隣の不動産取引価格がわかります。

③媒介契約

土地の売却を不動産会社(業者)に依頼することを、「媒介」と言います。「仲介」「斡旋」とも表現されるでしょう。土地を売却する際には一般的に、不動産取引のプロである不動産仲介会社に売却を依頼します。この際に行う書面での約束が媒介契約です。

この媒介契約にも「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3方式があり、メリット・デメリットはさまざま。契約方法ごとの特徴については、後ほど詳しく解説します。

④土地販売活動

媒介契約を不動産仲介会社と結んだら、土地の販売活動が開始されます。販売活動期間はおよそ1ヶ月~半年が一般的です。土地の売却については、マンションや戸建てのように「内覧」があるわけではなく、売主のほうで対応ということは通常ありません。

ただし購入希望者から土地に関する詳細な質問を受けた場合は答える必要があります。「準備」のステップでも触れましたが、購入希望者が気にすることとしては「境界」「越境」「土壌汚染」「地下埋設物」などが多いでしょう。

更地なので見学すれば見た目や環境はわかりますが、「権利」や「地中」のことは調べようがありません。土地の使用履歴なども含めて、事前に確認しておくことが重要です。

⑤売買契約

土地の購入希望者が決まったら、いよいよ売買契約を締結します。契約時に必要な書類には取り寄せに時間がかかるものもあるため、早めに用意を始めましょう。事前に媒介依頼している不動産会社の担当者から知らせがあるはず。しかし知識として知っておくと、いざというときに安心です。

MEMO
・権利証(登記識別情報通知書)
・固定資産税・都市計画税納税通知書、固定資産税評価証明書
・筆界確認書、越境の覚書、測量図
・抵当権抹消書類
・印鑑証明書
・実印
・本人確認書類(委任状)
・住民票

大手住宅メーカーが被害に遭ったとしてニュースになった「地面師」詐欺は、記憶に新しい方も多いかもしれません。土地の売却に関しては権利関係が複雑で、トラブルもつきもの。事前の調査や必要書類をしっかりと確認しておくことが大切です。

売買契約時には、一般的に手付金を受領します。手付金は売買代金の10%が相場となっていますが、買主との交渉次第でしょう。

⑥決済・引き渡し

引き渡しと言ってもマンションや戸建てとは違い、鍵の受け渡しがあるわけではありません。書類のやり取りになります。売却残金の決済、固定資産税・都市計画税の清算、実測売買のときには公簿面積との差額を清算という流れが一般的です。仲介手数料の支払いもこのときになるでしょう。

残金の決済方法には小切手、振込、現金支払いなどがありますが、小切手決済が安心感もあり現実的です。

⑦確定申告

土地を売却した年の翌年には、確定申告が必要となります。

土地売却までの期間はどれくらい?

土地売却までの大まかな流れがわかったところで、実際にはどれくらいの期間で売却ができるのでしょうか。完了までの目安をわかっていたほうが、資金計画も立てやすくなります。

明確な期間があるわけではないものの、土地の売却にかかる期間の目安としては3ヶ月~半年が一般的です。ただし土地の値付けや、広告活動の方法などによっても売却までの時間は左右されます。売り出すタイミングも関係してくるでしょう。

「できる限り早く売りたい」という場合、どのくらいの期間で売却したいのか、あらかじめ担当営業と相談しておきます。ただし媒介契約の方法にも影響されることを覚えておいてください。

現況と登記内容が異なることがある

土地を売却する際に陥りがちな落とし穴に、「現況」と「登記内容」との違いがあります。更地の場合、隣地に家が建っていたり道路があったりすれば、ある程度はどの辺りまでが土地の範囲かわかるでしょう。

しかしながら、これはあくまでも「見た目」「現況」での判断です。土地の権利を証明する登記簿謄本の記載内容とは、異なっているケースが非常に多くあります。「違うこともある」というより、異なっている場合のほうが多いほどです。なぜそのようなことが起こるのか、土地売却時のトラブルを避けるためにも頭に入れておきましょう。

そもそも登記簿謄本だけではわからないことも多々あります。不動産取引において書面だけを信用してしまうのは考えものです。トラブルの引き金となりやすい、2つのポイントについて解説します。このときポイントとなるのは「境界確認書」と「地積測量図」です。

境界確認書

境界を理解するうえでは、「越境」も知っておかなければなりません。まず境界と越境は、分けて考える必要があります。

①境界

境界とは、土地の範囲を特定して隣地との境・境界線を明確にすること。なぜ境界の確定が必要かと言えば、土地を売却するときだけでなく、相続や所有者の名義を変更する際にも問題になるためです。

比較的最近に区画整理されて分譲された住宅地などなら、販売する前にしっかりと測量を行い、隣地との境目に「境界標」を埋め込んでいることが当たり前となっています。しかしながら昔に親の世代から相続した土地や、住宅密集地で住民の入れ替わりがないようなエリアだと、境界標もないケースも珍しくありません。

慣習で昔からある塀や目印を隣地との境界としていることもあります。それでも不自由なく生活できてしまうので、売却時になって驚くことになるでしょう。土地の登記を行う際に「正確に測量をする」という決まりがあるわけではため、曖昧になっている家庭も多いのです。

ただし土地を売却する際、境界の曖昧さは買主にとって非常にリスクが高くなります。たとえば隣地・ご近所づきあいのなかで、境界をあまり意識せず今まで生活していたとしましょう。しかし新しい買主がそれで納得するかはわかりませんし、売主もしかりです。

新たに隣地の所有者が土地を売却しようとしたとき、「どこからどこまで」でさらに揉める可能性もあります。境界を明確にしなくても登記できてしまう法の不備とも言えますが、今後土地の売却を検討する場合には必須の条件と思ったほうが賢明です。

買主が銀行から借入をして購入するときには、融資の利用ができない可能性もあります。

では、この「境界」を確認するにはどのような方法があるのでしょうか。

境界には2種類あり、それぞれ「民々境(ミンミンザカイ)」「官民境(カンミンザカイ)」と呼ばれています。境界が確定しているかを知るには、「測量図」「筆界確認書」といった書類の確認が必要です。

民々境と官民境
・民々境(ミンミンザカイ)
隣地(私有地)と自分の土地の境

・官民境(カンミンザカイ)
道路(私有地以外)と自分の土地の境

官民境に関しては、自分の土地と接する道路を管理する役所で調べることができます。もし市道に接しているようなら、市役所の道路を管理する土木課などの担当部署で「境界確認書」など境界がわかるものがあるか調べてみましょう。境界確認書が確認できれば、官民境に関しては問題ありません。

厄介なのは民々境です。境界を正確に調べるには「測量」が必要。この「測量」にも「現況測量図」と「確定測量図」があるうえに、測量技術が低い頃に測定された数値だと、正確でない可能性もあります。

現況測量図とは簡易的な測量図で、隣地との境界確認を一切しないで作成されたものを言います。おおよその面積や範囲を表しているに過ぎません。通常、売買時に利用されることはないと思ったほうが良いでしょう。

現況測量図でも、もう少し正確で隣地所有者の立ち会いのもとに作成された測量図もあります。官民の境界確認を省略した、私有地の境界についてある程度信用できる書類です。売主・買主双方の承諾があれば売却にも利用されます。

最も信頼性が高く、法的にも効力がある測量図が「確定測量図」です。売却予定と対象地、その土地に隣接する土地の所有者立ち会いのもとに境界確認を行い(官民確認書も含む)、この確認作業に基づき作成されます。

「確定」というお墨付きは、すべての境界が確定していることの証明です。この確定測量図があることで、トラブルを未然に防ぐこともでき、また買主も安心して購入することができるでしょう。

この測量は、もちろん無料ではありません。また売主・買主どちらが負担するのかという問題も気になるところ。実際の測量費用はエリアや業者によって料金に幅があります。以下はあくまでも相場です。

測量費用
・現況測量図……30万円~50万円
・確定測量図……50万~90万円

※土地の面積や場所、測量に要する日数によっても変動

官民の境界を省略した現況測量図でも、売買取引はできます。ただし買主が確定測量図を求めているような場合、費用をどちらが負担するのかは交渉次第でしょう。

確定測量図があったほうが、高値で売却できる可能性は高くなります。早期での売却も十分可能です。一方で確定測量図の作成には時間がかかり、費用も安いものではありません。費用対効果を検討して、売却計画を練ってみてください。

②越境

境界と似ているようで全く違う土地の問題が、「越境」です。境界と同じく、実務ではしばしばトラブルの要因になります。「境を超える」という文字通り、境界線を越えて隣地に何らかの不具合が生じているような状況です。代表的な越境事象を見てみましょう。

・樹木が隣地に越境している。

・地下の配管などが隣地に越境している。

・建物や屋根のエクステリアが隣地に越境している。

更地の場合には、樹木や地下の配管、取り壊されていない壁や塀などが問題になりやすいもの。とはいえ越境に関しては、境界ほど解決が難しい問題ではありません。隣地所有者との話し合いで済むことも多くあります。具体的な解決方法は以下の通りです。

・越境している障害物の除去

・境界線を変える(売却のときにはあまり現実的ではない)

・将来的に撤去する覚書を作成する

最も簡単な方法が、越境している障害物を除去もしくは撤去することです。大掛かりな作業が必要なケースを除けば、すぐに対処できます。境界線を変えるとなると解決までに時間がかかる可能性もあるため、売却以前に解決しておくのがベターです。

将来撤去する覚書の作成とは

土地を売却するにあたって、障害物を撤去する了解を得ておいて、未然にトラブルを避ける目的で作成する書類です。越境問題を黙ったまま売却すれば、あとあと大きな問題になることもあります。場合によっては瑕疵担保責任になるかもしれません。

地下にある配管など、すぐに撤去できないような場合も多くあります。このときは将来的に取り除くことを証した覚書を締結する形が一般的です。

売却活動をする場合には、今まで問題なかったような些細な越境問題も、大きなトラブルに飛び火することがあります。事前に境界をしっかりと確定しておくだけでなく、越境についても隣地所有者と確認をとることが大切です。

地積測量図

地積測量図とは、土地の登記簿謄本(登記記録)に関連して法務局に備え付けられている図面のこと。その土地の形状、地積(面積)と求積方法などが記載されています。地積測量図について理解することで、現況と登記内容が違うこともよくわかるでしょう。

まず覚えておきたいのは、地積測量図はすべての土地にあるとは限りません。不動産仲介会社から「法務局で取り寄せてください」と言われ、調べたものの所有する土地に地積測量図がないなんてことも、あり得る話です。

理由を述べておくと、不動産登記に関する法律が改正され、地積測量図の法務局への備え付けが必要になったのは昭和35年(1960)以降。それ以前の土地の場合には、ないケースが一般的でした。また不動産登記法が改正されたあとも、分筆(区分け)して登記された土地しか対象になりません。

つまり古い土地であればあるほど、地積測量図は存在しないのが普通です。測量の技術も、昔と今では精度が全く違う現実も考慮する必要があります。

登記簿に記載された地積だけで売買契約した場合、あとあと売却のときに測量をしたら全く違う地積だったなんてことは珍しくありません。こういったネガティブな情報を、買主も簡単に知ることができる時代です。

売却する際には、確定測量図があるのが一番安心。隣地所有者立ち会いのもと測量をし直すことも検討しましょう。ときには揃えられる公的な書類をすべて取り寄せることで、可能な限りリスクを減らす対策も必要となります。

「公募売買」と「実測売買」の違い

「境界」や「越境」、測量図について理解したところで、土地売却時の実務的なことについて解説しましょう。土地売却を検討するようになると、「公募売買」と「実測売買」という言葉をよく目にします。

登記簿謄本に記載された地積と、実際の地積は違うと前述しました。しかし実務上は売買対象面積を「登記面積」か「実測面積」にするのか、一方に決めなければなりません。

①公募売買

登記簿に記載された面積(地積)で売却するのが公募売買です。土地の登記簿謄本に記載されている面積を売却対象とします。

頻繁にあることですが、売買契約締結後に実測をして実測面積が違っていたとしても売却代金の清算はしない契約です。どちらかと言うと地積測量図が法務局に備えられていて、最近分譲された土地や分筆された土地で利用されます。

②実測売買

公募売買とは反対に、売却対象の土地を実測して売却するのが実測売買です。実測図がないような場合には公募面積で仮計算しておき、決済までに実測を行って差額を決済時に清算する形になります。

測量の費用負担は交渉にもよりますが、どちらが負担しなければならないという決まりはありません。

土地を「早く・高く売る」を両立することが難しい理由

誰しも当然、土地を売却するのであれば「高く」「早く」売りたいと思うはず。しかし現実的に、この2つを両立するのは難しい可能性もあることを理解しておきましょう。

まず、できる限り土地を早く高く売るにはどうしたら良いのかについて具体的にお話します。

方法1:安売り

最も簡単な方法で、適正価格(相場)よりも安い金額で売り出せば、買手が見つかる可能性は高くなるでしょう。

 

方法2:買取業者へ売却

ひとつ目の方法と同じような考えになりますが、より早く売ることに特化したのが買取業者への売却です。スピーディに売ることはできますが、当然ながら相場よりだいぶ安い金額になります。

 

方法3:土地売却に強い不動産会社に依頼し「専属専任媒介契約」を結ぶ

方法1・2よりは不確定要素が少し高くなりますが、土地の売却に関しては仲介会社によって得手不得手が異なります。担当者ごとの実力が違うだけでなく、媒介契約(後ほど解説)の仕方によっても業者の報酬額は変わるため、「やる気」にも差が出るでしょう。

そこで土地売却に強い不動産会社の選び、報酬でやる気を引き出して早く・高い買手を見つけてもらう方法です。

高く早く 時間をかけて高く
人気のエリアであれば、高くても買い手が見つかりやすい。ただし限定的。 希望価格で買ってくれる人を気長に待つ。ただし時間をかけることで、かえって土地の価値が落ちる可能性もある。
安く早く 時間をかけて安く
相場より安い価格を打ち出せば、早く売れやすくなる。 相場よりも安くしても、人気のないエリアであればなかなか書いては見つからない。

スピーディかつ高値で土地を売却する3つの方法を見てみると、「早く」と「高く」の両立が難しい理由が見えてきたかもしれません。土地を早く売却するにはタイミングも重要ですが、一番確実なのは「値下げ」で安くすることです。そうなると、高く売却できることにはならないでしょう。

また早く・高くの両立は売主の感覚的なところもあり、取引金額に納得してトラブルなく売却できれば、「多少時間がかかっても満足」という方もいます。そういったことを考慮するなら、方法3について前向きに検討してみるのもおすすめです。

不動産仲介会社もビジネスとして営業活動をしているため、報酬が高いほうが積極的に販売活動をする傾向にあります。ケースバイケースで一概に専属専任媒介契約が良いとも言いにくいところもありますが、期間限定で任せてみるのも良いでしょう。

不動産会社によって仲介と買取がある

土地の売却で不動産会社を利用するとき、「仲介」と「買取」のいずれかの方法を検討することになります。売却を考える理由や状況は、売主によってかなり違うはず。良い新居が見つかり、できる限り早期に購入するため資金が必要であったり、相続税対策での売却や財産を整理だったりということもあるでしょう。

こうした売却資金や状況に合わせて、仲介か買取にするのかを決めるのがベターです。

①仲介

不動産売却の際に最もよく利用される手段です。仲介を依頼する場合、買主となるのは一般のエンドユーザー。個人はもちろん法人のこともありますが、不動産取引を業としているようなプロが相手ではありません。

②買取

買主となるのは不動産業者です。基本的には転売益を商売とするようなプロが相手ということになります。仲介業者は一般の売主と一般の買主をつなぐ役目を果たしますが、買取の場合には間に誰も入る(仲介)ことなく売却できる仕組みです。

こういった仕組みの違いから、仲介と買取それぞれにメリット・デメリットがあります。

メリット デメリット
仲介 実勢価格(相場)に近い金額で売却できる

・売却に関する情報を集めやすいので、一括査定サイトなどある程度自分でも価格の根拠などを理解できる

売買契約が成立するまでの時間が読めない
買取 買取業者が提示した金額に納得できれば、すぐに現金化できる。

・土地の売却に伴う瑕疵担保責任が免除

・取引に伴う仲介手数料が不要

市場価格(相場)よりも相当低い金額で売却する可能性がある

・買取に関する情報が少ない

仲介のメリット

①実勢価格(相場)に近い金額で売却できる

土地売却を仲介に依頼すると、多くの場合「レインズ」という不動産会社専門の情報サイトに登録されます。大手・地元の不動産会社など大小問わず、多くの人に土地の情報が共有されるということです。また広告活動を通じて販売されることも多いので、適正な金額に近づく傾向にあります。

②売却に関する情報を集めやすく、価格の根拠などを理解できる

①とも共通しますが、誰でも簡単にアクセスできる場所に土地の情報が公開されるため、相場から大きく外れた価格になるということはありません。不動産取引がはじめてだったとしても、ある程度の情報を自分で判断することも可能でしょう。

仲介のデメリット

①売買契約が成立するまでの時間が読めない

買主次第という一点に集約されますが、契約成立までの交渉やさまざまな要因がうまくいかないと、売却には至りません。

買取のメリット

①買取業者の提示金額に納得できれば、すぐに現金化も可能

仲介による売却では、販売活動を開始するまでの準備・広告作成などを経て、はじめてエンドユーザーを探すことになります。3ヶ月~半年以上売却までの時間がかかるケースも珍しくないでしょう。

一方の買取業者なら、土地を査定して、売主さえ金額に納得できれば即売却も可能です。最短なら1週間前後、長くても1ヶ月ほどで土地を現金化できます。

②土地の売却に伴う瑕疵担保責任が免除

土地を売却する際、売主には「瑕疵担保責任」という土地の隠れた瑕疵(土壌汚染・地下障害物など)に責任を持つ義務が法律によって定められています。売却後3ヶ月以内など条件を設定できますが、その期間内に瑕疵が見つかった場合、売主が責任を負うことになるのです。

しかしながら、この瑕疵担保責任は買主が個人であるときのルール。相手が不動産買取の専門業者なら、責任を免れることができます。

③取引に伴う仲介手数料がいらない

仲介によって土地を売却する場合、売買契約が成立したら成功報酬として、依頼した仲介会社に仲介手数料を支払わなければなりません。売却価格によって手数料金額は違いますが、通常は「成約金額×3%+6万円(別途消費税8%)」で算出が可能です。

5,000万円で土地を売却したケースで計算すると、仲介手数料は約168万円(税込)にもなります。

しかし買取の場合には、直接取引となるため仲介手数料は不要。取引金額が大きくなるほど、仲介手数料の負担も大きくなります。売却に伴う費用を事前に用意しなくて良いというのは魅力的です。

買取のデメリット

①市場価格(相場)よりも相当低い金額で売却する可能性がある。

買取業者に買い取ってもらうときの売却額は、仲介と比較するとかなり低い傾向にあります。業者は転売益・収益性が高い賃貸物件に転用することを目的に買い取るので、採算がとれる金額でないと意味がないためです。

物件の立地条件や状況にも左右されますが、相場の6割前後になるケースも少なくありません。

②買取に関する情報が少ない

全く同じ土地など存在せず、市場(相場)価格といっても、あくまで目安にしか過ぎません。仲介による売却なら、それなりに関連した情報を集められます。「安い」「高い」のおおよその判断を、素人でも知ることができるでしょう。

一方で業者による買取の場合、一般の買主が価格の根拠や買取相場を知ることは容易ではありません。買取業者としても、がんばって買い取る必要などなく、売主の足元を見て買取金額を決めることも多々あります。

買取のメリット・デメリットに対し、仲介はほぼ反対の利点・欠点を持っています。これは土地売却だけでなく、家の売買でも変わりません。詳しくはこちらを参照ください。

3つの媒介契約の違い

土地の売却を依頼(仲介)するにあたっては、不動産会社と正式に契約を結ぶことになります。これが媒介契約と呼ばれるものです。不動産会社との約束の結び方によって、媒介契約は3つの方式に分けられます。

①一般媒介契約

②専任媒介契約

③専属専任媒介契約

この3つの違いを理解することによって、土地を高く、そして早く売却できる可能性が高まるかもしれません。不動産業界特有の言い回しさえ理解できれば、さほど難しい内容ではないためご安心を。それぞれの特徴を確認してみましょう。

一般媒介契約
「一般」という文字からもわかるように、不動産仲介でよく利用される媒介契約です。この契約において、売主はどの不動産会社とも自由に土地売却の仲介を依頼できます。複数社に依頼しても良く、また意思が変わったりトラブルが起きたりした場合、いつ媒介契約を解除しても問題ありません。

知り合いや身内からの紹介で売主を見つけてくることも可能です。

専任媒介契約
「専属」よりは少し緩く、「一般」と比較すると売主の自由が少し制限される契約方式です。専任媒介契約を不動産会社と結ぶと、その業者はレインズ(不動産流通機構)という不動産会社だけが参加するネットワークに、売却予定地を登録しなければなりません。

また売主には定期的(2週間に1回以上)に、売却活動状況を報告する義務が発生します。この契約には期限があり、3ヶ月が最長です。自動更新はありません。これより短い期間の契約でも問題なく、依頼者が再び仲介業務を依頼しない限りは契約期間終了となります。

専属専任媒介契約
「専属」が一般や専任と最も大きく違うのは、「売主を自ら探すことができない」ということです。一般や専任の場合には、自ら売主を見つけることもできました。しかし専属の場合、媒介契約を結んでいる不動産会社の探してきた買主としか、売買契約はできないのです。それだけ売主の自由がない契約方式と言えます。

3つの特徴を理解できたところで、それぞれのメリット・デメリットを見比べてみましょう。

媒介契約方式 メリット デメリット
①一般媒介契約  ・売主に何の制約もなく、複数の不動産会社に土地の売却を依頼できる

・売主の急な売却計画の予定変更でも、トラブルなく媒介契約を終了できる

 ・依頼された仲介会社側からすると報酬(仲介手数料)は早い者勝ちなので、積極的に広告や販売活動をしにくい

・土地の条件によっては、売却を仲介してくれる不動産会社が名乗りでない可能性もある

②専任媒介契約  ・「専属」ほどではないものの「一般」よりは不動産仲介会社が積極的に売却活動をしやすい

・販売状況の報告が義務であるため、売却活動の現状を定期的に把握することができる

・「専属」の場合、自分で買手を見つけても契約できないが、「専任」なら不動産会社を挟まず契約することも可能

・レインズ(指定流通機構)への登録が義務であり、多くの仲介会社にアクセスされる可能性も高い

 ・「専任」に甘んじて販売活動を積極的にしない仲介会社もいる

・「専属」ほどではないが、自社での両手取引(報酬が最も高い)を意識しすぎて、売却に時間がかかる恐れもある

・契約期間によっては仲介の依頼を解除したくても最長3ヶ月間、時間を無駄にしてしまう可能性もある

③専属専任媒介契約  ・報酬(仲介手数料)が高くなる可能性が高く、ほか2つと比較して仲介会社が積極的に販売活動をする傾向にある

・販売状況の報告が義務(1週間に1回以上)であり、現状を常に把握できる。

・レインズ(指定流通機構)への登録が義務のため、多くの不動産会社にアクセスされる可能性が高い

・売主買主双方からの仲介手数料を見込んで(両手取引)、ほかの業者に積極的にアプローチすることもある

 ・「専属」に甘んじて販売活動を積極的にしない仲介会社もいる

・自社での両手取引(報酬が最も高い)を意識しすぎて、買手が見つかるまで時間がかかりやすい

・自分で買主を見つけたとしても、専属専任契約を結んだ仲介会社を通さないと契約はできず、仲介手数料が無駄になる可能性もある

・契約期間によっては、仲介会社が気に入らなくても最長3ヶ月間は我慢しなければならない

大手不動産会社の問題点

「学歴」や「ブランド」に弱い日本人の国民性もありますが、土地の売却を依頼する不動産会社を選ぶ際にも「大手」と「中小」の違いを気にする人がいます。不動産業界の裏側を知っていれば、大手不動産会社と中小で大差はないことが理解できるでしょう。

とはいえ初心者の方だと、ネットのネガティブな書き込みや世間の印象から、不動産会社選びで不安な気持ちになってしまうこともあるはず。そこでここからは、よく話題となる「大手不動産会社の問題点」について詳しく解説します。

大手不動産は信頼感、実績などの魅力があると同時に、上記でも触れた「両手取引」「囲い込み」が起こりやすいのが実情です。

両手取引

土地を売却する際に、不動産会社と媒介契約を結ぶ方法としては3方式あります。この媒介契約方法のなかでも、「専属」「専任」契約のときに問題となるのが両手取引です。これは仲介をした不動産会社の報酬(仲介手数料)の計算方法が関係します。

不動産を仲介した業者は、売主から成功報酬をもらうことが可能です。また買主を自分たちで見つけて来たときには、買主からも仲介手数料をとることができます。つまり売主と買主を同時に見つけることができれば、両方から仲介手数料をもらえるということ。これを両手取引と言います。

一般媒介契約だったとしても両手取引は不可能ではありませんが、売主がすでに決まっている「専属」「専任」と比べると、そう簡単にはいきません。専属、専任媒介契約をした不動産会社は、当然ながら買主も自分たちで見つけようとし、できれば自社のみで売り買いを完結させたいと考えます。そこで問題となるのが「囲い込み」です。

囲い込み

両手取引の見込みがある「専属」「専任」媒介契約を結んだ不動産会社は、買主を自分たちで見つけるまで「交渉中」「条件が合わない」といった理由で、他社からの紹介を断ることがあります。信義則に反する行為であり、あまり認められるべき行いではありません。その一方で、両手取引が見込めるために広告費をかけられることも事実です。

ただし売主側からすれば、それによって売却までの期間が延びてしまうこともあります。好条件での買主を逃すことも考えられるでしょう。専属、専任で媒介契約を結んだ際には随時売却活動の報告を受ける段階で、こういったリスクがあることを認識し、担当者に適宜質問することも大切です。

両手取引と囲い込みを理解のうえで、大手不動産会社と地元(中小)の不動産会社の違いについてまとめてみます。

大手と地元(中小)不動産会社のメリット・デメリット

メリット デメリット
大手不動産会社 ・土地購入希望者のリストが多い

・財閥系、銀行系の不動産会社だともともとの顧客数も豊富

・広告宣伝費の額が違う

・トラブル時の補償が見込める

・金融情勢など最新の動向に強い

・売主を選ぶ可能性もある

・両手取引、囲い込みをする傾向が強い

・営業担当者のスキルに差がある

地元(中小)不動産会社 ・地元(地域)ならではのパイプが強い

・レスポンスが良く、対応に小回りが利くことが多い

・無理なお願いも聞いてくれる可能性がある

・自社で抱えている顧客リストが大手と比べると圧倒的に少ない

・地域や土地の状況によって得意分野が違うこともある

・広告費予算が少なくなりがちなので、早期での売却が見込めない可能性もある

土地売却なら、大手と地元の不動産会社どっちが良い?

上記のような事実を踏まえたうえで、大手不動産会社と地元の不動産会社、どちらに土地の売却を依頼したほうが良いのか考えてみましょう。

実際のところ、すぐに売れるような人気の土地以外は「レインズ(指定流通機構)」という、不動産産業者だけがアクセス可能なネットワークに登録されることになります。どの業者でも土地の情報を知ることができるため、大手と中小の違いはほとんどありません。

地元の不動産屋に土地売却仲介を依頼したとしても、大手不動産会社が買主を紹介することもあり、その逆もしかりです。ただでさえ売れにくい土地の場合、両手取引や囲い込みが行われるとリスクが大きくなるでしょう。

そのため大手や地元(中小)にこだわらず、多くの不動産会社に依頼するというのも選択肢のひとつです。不動産一括査定サイトなどを利用すれば、大手・中小を問わずまとめて探すことができます。なかでも気になった1社にお願いをするのも良いでしょう。

土地売却にかかる費用

売買価格の次に気になる「お金」事情が、土地の売却にかかる費用です。土地を売却したときは、お金を受け取れるだけでなく、いくつかの費用を支払わなければなりません。

・仲介手数料

・税金

・印紙税

・登録免許税

・譲渡所得税

・その他

上記のような費用の概算と、支払うタイミングについて表で確認していきます。

費用項目 内容 費用金額 支払い時期
仲介手数料 土地仲介を依頼した不動産会社へ支払う報酬 ※売却価格が400万円を超える場合

【売却価格×3%+6万円】×消費税

※売却価格200万円~400万円まで

【売却価格×4%+2万円】×消費税

※売却価格が200万円以下の場合

【売却価格×5%】×消費税

 ※注

売買契約時に半金、決済引き渡し時に残金を支払う形が一般的(不動産売却を結んだ媒介契約書の内容による)
印紙税 売買契約時に、売買契約書に貼付する必要がある収入印紙代 ・売却価格が100万円超500万円以下:1,000円

・売却価格が500万円超1,000万円以下:5,000円

・売却価格が1,000万円超5,000万円以下:1万円

・売却価格が5,000万円超1億円以下:3万円

※軽減特例適用時

売買契約時
抵当権抹消費用 売却する土地に抵当権が設定されている場合などにかかる ・登録免許税で、土地の筆数に応じて一筆ごと1,000円

・抵当権抹消手続きをする司法書士に支払う報酬15,000円前後

(※自分で抵当権抹消手続きをすることも可能。難しい場合には専門家に頼むこともできます)

残金決済時まで
測量・土壌汚染調査費用等 土地売却にあたり、確定測量図や土壌汚染調査を売主負担で実施した場合にかかる費用 30万以上(どこまで測量を正確にするか、費用負担を買主と折半するかなどによって開きがある) 売買契約時まで

※注:平成30年1月1日から仲介手数料に関する法律が変わりました。売主からの仲介手数料の上限が400万円以下の土地の売買価格で、通常の売買と比較して現地調査、境界確認等の費用を要するものについては、法定の計算方法により算出した金額と現地調査等の費用を合計した金額以下、かつ18万円(税別)以下となります。

実質、仲介手数料の値上げとも言えますが、これは国の空地・空き家対策です。地方など売却しにくい物件や調査に費用がかかるとき、不動産業者が業務を請け負わないリスクを減らす意図があります。

地積が登記簿上と異なるとき

土地の売却をする際、一般的には登記簿謄本の地積をもとに費用を計算します。固定資産税の評価額を求めるときも、登記簿にある地積で計算するケースが大半です。しかしながら、長年分割されていなかったり、測量技術が整っていなかったときの数値のまま登記されたりしていて、現況の地積とは異なる場合もあります。

このとき売主は、事前に「地積が登記簿上と異なる恐れがある」旨を告知するのが義務。現況の地積をどのように測定するかによって、費用や負担割合を検討しなければなりません。確定測量図や地積測量図がすでにあるのなら、それをもとに買主と話し合いをします。

しかし、そういった資料がないときには測量費用がかかることになるでしょう。測量費用の相場は土地の地積や形状によってかなり幅がありますが、30万円前後が目安です。

境界が不明瞭なとき

土地の地積が登記簿謄本や確定測量図で判明していたとしても、隣地との境界は全く別問題です。土地売却時において、不明瞭な境界でトラブルになるケースは多いもの。境界確定にかかる費用は売主負担となるため、頭に入れておきましょう。

過去に地積を正確に測量したなど、すでに資料があるときには、隣地所有者立ち会いのうえでの確認のみになります。しかし測量図や地積図がない場合には、売却をする前に用意しなければなりません。

契約を依頼した不動産会社とも相談が必要になり、また境界確認書や覚書を用意するのにも1ヶ月半~3ヶ月前後の時間がかかります。境界確定に必要な測量費は30万円前後。早めの確認が大切になるでしょう。

売買契約後の契約破棄は手付金の2倍

売買契約を結んだのち、やっぱり土地の売却を辞めたくなったり、何かしらのトラブルが起きたりして、契約を解除するような状況になるかもしれません。こうした売買契約後の契約解除(破棄)ときに、手付金や仲介手数料の扱い方はどうなるのでしょうか。

まず土地の売買契約を結ぶ際に受領することになる「手付金」について説明します。

手付金

売買契約を結ぶ際、手付金を必ず支払わなければならないという決まりはありません。支払われる場合には、売買価格の10~20%前後を手付金として受け取ることになるでしょう。売主としては売却までにかかる諸費用の負担を軽くする意味があり、買主側も手付金を支払うことで、直前の契約解除を防ぐことにつながります。

つまり手付金は、契約の拘束力をより強くする効果と同時に、それだけ売主・買主の法的責任を高くするのです。

①契約解除(破棄)に伴う「手付金」の扱い

何らかの理由で、土地の売却を解除する必要が生じてしまったとき、受領した手付金が問題となります。土地の売買契約書を交わしただけの段階なら、契約書に記載された解除事由や、合意解除など交渉次第で解決することもあるでしょう。ときには賠償問題となることも想定されますが、ケースバイケースです。

ただし手付金を受領していた場合には、すでに金銭のやり取りが発生してしまっています。解決のためには売買契約のルールを決める「民法」の理解が必要です。簡単な決まりだけお伝えしましょう。

売主から契約解除をする場合は、「受領した手付金の倍返し(2倍)」がルールです。難しく考える必要はなく、売買契約後に手付金を受領していたら「倍返し」と覚えておきます。

逆の立場で、買主が売買契約後に解除を申し入れるには「手付金」を諦めなくてはなりません。売主・買主ともに、自分の都合で契約解除をするときは「手付金」相当のペナルティーがあるということになります。

たかが売買価格の10~20%程度といっても、土地の売却金額から計算したら相当な金額になるでしょう。売買契約はそれだけ慎重にしなければなりません。仮に土地の売却契約金額が5,000万円だったとすれば、10%で500万円、20%だと1,000万円です。

②契約解除ができるのはいつまで?

もうひとつ、頭に入れておきたい重要な決まりがあります。「いつまでなら手付金の倍返しで契約解除ができるか」ということです。

受領してしまった手付金分の損にはなりますが、契約解除ができれば土地を売却する必要はなくなり一安心。しかしながら、タイミング次第では契約の解除ができなくなる可能性もあります。それは「相手(買主)が契約の履行を着手するまで」です。例をあげて見てみましょう。

・手付金だけでなく、中間金の支払いもあった

・買主が更地に建てる住宅などの契約をした

・買主が売買契約をもとに住宅建築の借入をした

上記のような理由で買主が契約の履行をしているときに、契約の解除はできません。土地の売却をするか、相当の賠償金を支払って契約解除をするしか方法はなくなってしまいます。金額が金額なので、土地の売買契約を結ぶ際には、十分売却の意思を固めてから手続きを進めることが大切です。

売買契約解除時の手付金の扱い方がわかったところで、今度は契約解除時の「仲介手数料」について解説します。

③売買契約後の契約解除に伴う「仲介手数料」の扱い

土地の売却を不動産会社に依頼したときは、報酬として仲介手数料が発生します。媒介契約時の交渉次第ですが、土地の売買など比較的取引金額が大きく、事前に経費がかかるような場合もあるでしょう。このときは売買契約締結時に50%、引き渡し時に残金という支払い方をすることもあります。

契約締結後に契約解除となった場合、この仲介手数料を取り戻せるのか売主としては気になるところです。答えからお伝えすると、契約解除の理由によります。

売主や買主の都合で契約解除になったケースなら、仲介手数料の支払いは必要です。それ以外の売買契約で取り決めた解除事由や、合意解除になるようなケースでは交渉次第となります。仲介手数料の支払い方法や時期は、仲介会社との取り決めで自由に決めることが可能です。

売主都合以外で契約解除になったときの支払い方法や額については、事前にしっかりと決めておきましょう。仲介手数料のことをあまり深く考えず、トラブルになることも少なくありません。万が一のときも冷静に対応できるよう、しっかりと理解しておくことが大切です。

土地売却後に売主が負う瑕疵担保責任の種類と事前対策

土地の売買契約を結んで無事決済、引き渡しが済んで安心していたら、いきなり不動産仲介会社から電話がかかってくることもあります。良い連絡であれば何よりですが、場合によっては悪い知らせかもしれません。土地を売却したあとでも、売主が心配しなければならないトラブルが「瑕疵担保責任」です。

不動産の瑕疵については、耳にする機会もしばしばあります。しかし、土地の瑕疵はどのような状態を指すのでしょうか。

瑕疵担保責任とは?

そもそも「瑕疵」とは、売買契約した目的物(土地)に通常認められる品質・性能を欠く状態を指したもの。また、この「瑕疵」には4種類の状態があります。

「物理的瑕疵」「法律的瑕疵」「環境的瑕疵」「心理的瑕疵」、それぞれを簡単に見てみましょう。

①物理的瑕疵
土地に何らかの土壌汚染、地中埋設物・障害物があって、通常の利用が困難な状況など。

②法律的瑕疵
土地が市街化調整区域である場合や、農地・法令などの制限によって自由な土地利用が制限されてしまう。

③環境的瑕疵
日照障害、近隣からの騒音、異臭、近隣に反社会的組織の事務所があった場合など。

④心理的瑕疵担保
対象の土地で、過去に自殺や殺人事件、火災、事故などがあって心理的なマイナス影響がある。

こういった瑕疵が土地に発見されたとき、民法上「発見後1年」は売主に対し損害賠償を請求できます。もし契約内容を達成できないようであれば、契約の解除も可能です。現実的には契約の解除といっても難しいことも多く、損害賠償が一般的となります。

以上が民法という契約のルールですが、実務上で問題となるのが「隠れた瑕疵」と言われるトラブルです。

隠れた瑕疵とは

通常、土地の売買契約を結ぶ前には、しっかりと土地の状況や近隣とのトラブルなどを調査します。このため、頻繁に瑕疵が発見されるようなことはほとんどありません。しかし、なかには念入りに調査しても見つからなかった、売主も知らないような瑕疵が発覚する場合もあります。

法律(民法)の原則だと、売却後いつ瑕疵を発見したとしても、責任を追及できてしまう状態です。これでは売主にリスクがありすぎて、土地の売買取引が円滑に進まなくなってしまい、現実的ではないでしょう。

このため土地の売買契約では、民法の原則が適用されないよう特約で瑕疵担保責任の期間を決めて、契約を結ぶのが一般的です。土地の売買契約では、瑕疵担保責任期間を「3ヶ月」とするケースが多い傾向にあります。もちろん買主との合意があれば、「一切瑕疵担保責任を負わない」という契約も可能です。

では、こういった「隠れた瑕疵」を防止する策はあるのでしょうか。これは難しい問題で、契約時に調査できることはすべてやる以外に、なすすべはありません。売主が知りながらも告げなかったというのは問題外ですが、どんなに調べたとしても発見できないような瑕疵も一部あるため、心配はほどほどに。

トラブルの原因となるような理由はできる限り把握して、事前に解決できることなら解決しておくことが、最善策と言えます。

土地を売る際に必要な準備書類とそのポイント

土地を売却する際に必要な書類は、似たようなものばかりで混乱しがちです。すぐには用意できない書類もあるため、売却準備をスムーズに進めるには前もって知っておきましょう。

マンションや戸建ての家を売却した経験があるという方も、「土地売却時のみ」に必要になる書類に注意します。土地を売却する際に準備すべき書類と、それぞれの取得方法をまとめました。

必要書類名 書類内容 取得方法
①登記済権利書又は登記識別情報通知書 土地の権利証があったとしても、法務局で土地の登記簿謄本(3ヶ月以内)を取得するのが一般的です。

登記事項証明書とも呼ばれる書類で、土地の所有者や面積、権利関係、抵当権の有無を知ることができます。

土地の登記簿謄本は、誰でも法務局もしくは法務局の出張所で自由に取得することが可能です。その際には土地の「地番」が必要ですが、住所とは違うので注意しましょう。法務局窓口で聞けば教えてくれるので、心配はありません。

オンラインや郵送でも取得ができるものの、法務局に足を運んだほうが確実です。オンラインの謄本だと売買契約時に使えないこともあるため、仲介会社に確認しておいたほうが賢明です。

発行手数料は下記の通りです。

・書面請求:600円

・オンライン請求/送付:500円

・オンライン請求/窓口交付:480円

②土地売買契約書 売却予定の土地を購入した際に結んだ契約書です。

該当不動産の契約情報や、特約など登記簿でわからない条件がないかなどを確認するために必要となります。

土地の購入からだいぶ時間が経って紛失してしまった場合などは、購入した際に仲介した不動産屋があれば問い合わせするか、どうしても見つからないときは媒介した不動産会社に早めに相談します。

通常は売買契約時に2部用意していて、不動産会社でも宅建業法上一定の期間保管しているはずです。

③重要事項説明書 売却予定の土地を購入した際に作成され、交付された書類です。

該当不動産の電気・水道・ガスなどの引き込み状況、特記事項や注意事項がないかなどを確認します。

土地売買契約書と同様に、紛失してしまったときなどは、購入した際に仲介した不動産屋があれば問い合わせするか、媒介した不動産会社に早めに相談する必要があります。

しかし売買契約書とは違い、仲介不動産会社が保管しておく必要がある書類ではありません。

④土地測量図 売却対象地の面積や、隣地との境界を明確にするための書類です。 必ずしも書類が作成されているわけではないため、状況によって不動産仲介会社に相談する必要があります。
⑤境界確認書・筆界確認書など 売却対象地の面積や隣地との境界、越境問題を明確にするための書類です。 土地測量図と同様、必ずしも書類が作成されているわけではありません。場合によっては不動産仲介会社に相談する必要があります。

売買契約時の条件次第では不要です。

⑥固定資産税・都市計画税納税通知書(領収書) 売却した土地の移転登記に必要となることがあります。また年の途中で売買した際には、固定資産税を買主と清算するのが一般的です。 通常は自宅に送付されるものです。紛失したとしても土地を管轄する市区町村で再発行してもらえます。
⑦印鑑証明書・実印 実印でないと契約できないということはありませんが、通常本人確認の意味合いもかねて、印鑑証明書と実印を用意することになります。 住所がある市区町村で印鑑証明書は発行できます。最近ではマイナンバーカードがあれば、コンビニでも取得が可能です。
⑧住民票 印鑑証明書があれば、必ずしも必要な書類ではありません。契約時までに不動産仲介会社に確認しましょう。 住所がある市区町村で住民票は発行できます。マイナンバーカードがあればコンビニでも取得可能です。
⑨抵当権抹消書類 土地に抵当権がついていたときに、売買契約時までに抹消されていることを証明するための書類です。 借入金の担保として土地に抵当権がついているような場合は、事前に司法書士などに依頼して、抵当を抹消する必要があります。

 

なお債権者への債務返済等条件をクリアしなければ、抵当権を勝手に抹消することはできません。

⑩本人確認書類・委任状 土地の売却を他人に依頼する場合は、免許証などが必要です。 どういった本人確認書類や委任状が必要かは、買主側との確認が必要になります。書式等が決まっているわけではありません。

 

注意
マンション・戸建て売却との必要書類の違い

土地の売却時とマンションや戸建てを売る際とで、必要となる書類に大きな差はありません。あるとすれば、マンション売却では不要な土地測量図、境界確認書・筆界確認書などがこれにあたるでしょう。一方で更地を売却する場合、マンションや戸建て売却で使う建築確認済証、建築設計図書、マンション維持費などの書類は不要です。

土地には外見上ではわからない「境界」「越境」「土壌汚染」「地中障害物」がある可能性があります。このためマンション・戸建てよりも、事前の準備に費用や時間がかかるかもしれません。

不動産一括査定サイトを上手に活用しよう

資産を手放すにあたっては、最低でも5社以上には査定依頼を出しましょう。インターネットの一括査定サイトであれば、自由に希望などを記入できる箇所があります。そこに「連絡はメール、もしくはラインでお願いします」と記入しておけば、直電や忙しい時間帯に電話をかけてこられることはまずありません。万が一かかってくるようなことがあれば、その不動産会社は信頼性に欠けると言えそうです。

多くの不動産一括査定サイトは無料で利用できます。売却したい土地の場所や坪数等を入力するだけで、大手・地元の不動産会社含め複数社の査定金額をまとめて確認が可能。「対面だと断りづらい」「時間をかけて査定額を比較したい」というときにも便利でしょう。

不動産一括査定サイトで査定してみたら、予想より良い結果が返ってくる可能性も十分あります。売るかどうかはまだ迷っているという方も、まずは資産価値を知るところから始めてみてはいかがでしょうか。