不動産を売る気はないのですが、不動産一括査定を利用してもよいですか?

将来のためにどれくらいの資産価値があるのか調べるべく、不動産一括査定サイトを利用したいです。今のところ不動産を売る気はないのですが、それでも問題ないでしょうか?

将来、息子の教育費を捻出するため、もしものときに自宅を売って資金を用意したいと思っています。

ご相談者様は、今のところご自宅を売る気はないものの、将来的なご子息の教育資金のため、売却するとどれくらいの資金になるかを知りたいとのこと。今すぐに売る気はなくても、不動産一括査定サイトを利用することは可能かというご相談です。

このような今すぐに売却の意思がないケースでも、不動産一括査定サイトの利用はできます。実際に所有しているマンションや一戸建て、土地などの不動産について、とりあえず資産価値だけを知りたいといった方が不動産一括査定サイトで査定を受けるケースは多いものです。

もともと不動産一括査定サイトは、不動産を売りたい方のために査定額を提示したり、不動産会社とのマッチングを行ったりする目的で使われます。しかしそれらのサイトは、直接物件を見て査定をしてもらう訪問査定の手間や、複数の会社を巡り歩いて依頼する手間を省いて気軽に利用できる特徴もあるのです。この気軽さは、図らずもご相談者様のような方のニーズにも対応できるでしょう。

とはいえ、物件を売る気なく不動産一括査定サイトを利用する際、注意したい点はいくつかあります。まず、不動産一括査定サイトと提携している不動産会社は基本的に、ただ単に査定を行うためにあるのではないということです。

前述のとおり、不動産一括査定サイトは不動産を売りたい方と不動産会社をマッチングさせる目的があります。つまり不動産会社としては、サイトを通じて顧客を獲得したいという狙いがあり、ひいては自社の収益につなげるためにサイトと提携しているということ。不動産会社の営業活動と言えます。

簡易査定あるいは訪問査定を通して不動産を売りたいと考える人に、自社の強みや売却活動に対する意気込みをアピールしているのです。そのため、不動産会社は基本的に不動産を売りたいと考えている人のために査定を行います。

ここでご相談者様は、不動産一括査定サイトを利用するときに「売る気はない」といった旨の文言はあえて伝えないほうがいいでしょう。当然ですが不動産会社は、今の時点でまったく不動産を売る気がないとわかっている人に対して、時間を割くことを渋ります。

ある種のマナーとしても、営業活動を行っている会社に「取引する気はないけれど話は聞く」と言うのは、いささかはばかられるはずです。不動産一括査定サイトで査定を依頼する査定フォームには、物件の情報を入力する欄と備考欄がありますが、特別な文言を入力しなくても査定は受けられます。正直に売る気なしとは伝えずに査定を依頼してみましょう。

そして不動産一括査定サイトで不動産の査定を複数社に依頼すると、その会社からそれぞれ査定結果のメールが届きます。そのメールはいずれも、ご相談者様と契約を結ぶために不動産会社が送るメールです。各社は時間を割いてご相談者様の物件の査定をし、「ぜひ当社で契約して欲しい」という思いを込めてメールを送っています。

そのため、ご相談者様の不動産を売る気なしという気持ちが変わらなかったとしても、メールに対してお断りの返信を行わないのは失礼にあたるかもしれません。お断りのメールはできる限り返すようにしましょう。

このときも「本当は売る気がなかった」と伝えるより、「思ったより査定額が低かった」「売ることを検討していたが諦めた」などの理由をつけてやんわりと断ることをおすすめします。角が立たないことはもちろん、将来的にご相談者様が不動産売却でお世話になるかもしれない不動産会社に、悪印象を与えることもありません。不動産会社に失礼のないような対応を行いましょう。

不動産一括査定サイトを利用すると、こんなことが起こる可能性があります

前述のように、不動産一括査定サイトと提携している不動産会社は、自社の営業活動の一環としてサイトを通し不動産査定を行っています。そして、不動産一括査定サイトの利用者は基本的に匿名で査定を依頼することはできず、住所などの不動産情報をはじめ氏名や電話番号、メールアドレスなどの個人情報も入力しなければなりません。

このためご相談者様が不動産を売る気なしの状態でも、査定終了後に不動産会社からの営業メールや電話、DMの送付などをしきりに受ける可能性があります。ご相談者様が不動産一括査定サイトを利用したことで、潜在的に売却意志がある顧客とみなされるわけです。このしつこい営業活動が複数社に及ぶと、ご相談者様自身が煩わしく感じてしまうでしょう。

もちろん、不動産一括査定サイトと提携する不動産会社すべてがしつこい営業を行うわけではありません。またサイト上でも、しつこい営業活動をクレームとして報告できるシステムを備えている場合があります。

不動産会社側としては、クレームが入ることで不動産一括査定サイトとの提携に影響が出ると不利益を被るため、利用者の迷惑になるような行為は避けるはずです。しつこい営業活動に過敏になることはありませんが、たびたびメールや電話、DMなどが来る可能性があることは覚えておいてください。

また、これは稀にあることですが、セキュリティ体制の甘い不動産一括査定サイトを利用した場合、ご相談者様が入力した個人情報が外部に漏れるケースが見られます。その結果、不動産査定を依頼した覚えのない会社から大量にメールや電話が来ることがあるのです。

これは個人情報を取りまとめてデータベース化する、名簿業者が存在することが要因です。こうした名簿業者は、個人情報保護法において「本人が個人情報の削除を申し出ればそれに応えること」など一定の条件を満たせば、営業が可能とされています。しかし、このような業者から簡単に個人情報が知れ渡ってしまうようでは、安心して不動産一括査定サイトを利用できません。

そこでチェックしておきたいのが、各サイトのプライバシーポリシーおよび、プライバシーマークの取得についてです。プライバシーポリシーには、利用者の個人情報をどのような目的で利用するかが明記されており、それ以外の目的では使用しない旨が記載されています。

プライバシーマークとは、個人情報の適切な取り扱いを行っている会社に付与されるマークのこと。つまりプライバシーマークを取得しているサイトであれば、外部に個人情報を漏らすような取り扱いはしないと保証されています。不動産一括査定サイトについて、どのようなところを利用すべきかお悩みでしたら、このような視点から選ぶのもいいのではないでしょうか。

そのほかご相談者様のご自宅が地方である場合には、不動産一括査定サイトが対応していないこともあります。不動産一括査定サイトでは、それぞれの地域の地価をはじめとして過去の取引実績、立地条件などの情報から査定が行われます。

都市部であれば取引実績などの情報も多く集められ、対応する不動産会社もそれだけ多くなるでしょう。しかし居住者の出入りや物件自体が少ない地域では、査定に必要な情報や不動産会社が集まりにくく、不動産一括査定サイトがフォローしきれないこともあります。

では、どのようなサイトであれば全国の情報を網羅しているかというと、「対象地域を全国としていることを前提とし、提携する不動産会社の数が多いこと」が条件です。不動産一括査定サイトとひとくちに言っても、大手数社のみと提携しているものもあれば、提携者数が1,500社以上にのぼるものもあります。前者と後者のどちらが地方に強いかといえば、やはり後者でしょう。

後者のサイトであれば、全国にチェーン展開する大手の会社だけではなく、地域に密着した地元の会社が提携している可能性が高くなります。このケースは、ご相談者様が地方にお住まいの場合に適用されるものですが、頭の隅に置いていただけると幸いです。

今不動産査定を行ったとしても、実際に資金が必要になったときには不動産価値に変動は出てきます

ご相談者様は、万が一ご子息の教育資金に問題が生じた場合に備えて、不動産一括査定サイトを利用なさりたいとのことでした。しかし覚えていただきたいのは、不動産の価値には流動性があるということです。

たとえば建物の築年数については、少しでも短いほうがより高値をつけられます。建物の構造や外装・内装、設備などにおいて必ず経年劣化が訪れるものであり、新たに物件を購入する方はできるだけ新築に近い物件を選ぶのが一般的であるためです。国土交通省の資料では、中古マンションと木造一戸建てについて、年月ごとの資産価値の推移が確認できます。

このグラフを見ると、マンションと木造一戸建てでは多少価値の推移に違いはあるものの、いずれも年月が経てば立つほど資産価値が下がっています。つまりご相談者様のご自宅がマンションか一戸建てかにかかわらず、不動産一括査定サイトで住宅の査定を今受けたとしても、将来的には査定額に変化が出るということです。

また、これはマンションの例ですが、築15年のマンションの価格は築5年以内のマンションに比べて、およそ7割~8割になるというデータもあります。

これらの点を考え合わせると、今現在の不動産価値で将来的な資金繰りを計算しても、実際に資金が必要になる将来には計算に狂いが生じることになるかもしれません。もちろん、現在におけるだいたいの不動産価値を知っておくことは、参考にするにはおすすめです。ただし現状ではじき出された査定額が、将来にも適用されるわけではないと頭に入れておきましょう。

将来的に、今よりも不動産価値が上昇する場合もあります

一方、不動産価値が変動するにしても、場合によっては将来的に価値が上がるケースも存在します。その主な要因としては、周辺環境が変化することです。たとえばご相談者様のご自宅の近隣に、大型商業施設ができるとします。

商業施設には人が多く集まり、そこを利用したい人が利便性を求めることから、近隣の物件への需要が高まるでしょう。そうなれば、需要に合わせて不動産の価格が上昇することになるのです。

さらに、ご相談者様のご自宅がある地域全体が開発対象になれば、商業施設だけでなく駅や教育施設などの充実、道路整備といったように、住みやすい街として発展が進むかもしれません。するとその街自体にブランド的価値がつき、不動産価値も吊り上げられる可能性があります。

そのほか2020年の東京オリンピックや2025年の大阪万博のように、世界的に注目を集めるイベントが開催されると、周辺都市は利便性の向上のためにインフラ整備などが活発化。やはり周辺地域における不動産の人気は上昇します。こうした社会的背景も、不動産価値を上げる要因になるでしょう。

そこで考えたいのは、ご相談者様は今後どのようなタイミングでご自宅をお売りになるかということ。上記でご説明したように、不動産価値は年数や条件によって変動が起き、適切なタイミングを掴めばより高値で売れる可能性があるのです。

基本的に周辺環境や社会情勢の変化などがなければ、不動産は早く売れば売るほど高値での取引が期待できます。そのため、もし「高く売ること」を優先されるなら、思い切って今売ってしまって、ご子息の教育資金に貯蓄しておくのも一案かもしれません。

もちろん今のご自宅を離れると不具合がある、特に高く売りたいわけではなく必要なときに資金が欲しいといったことであれば、売るタイミングで再度査定を受けましょう。そのときには、不動産を売ることを本当の目的として不動産一括査定サイトを利用すればよく、心おきなく査定を受けられるはずです。しかるべきタイミングでご自宅の査定を受け、改めて資金繰りについてお考えになることをおすすめします。

ちなみに不動産一括査定サイトで出た査定額は、売却額とイコールではありません。最終的な売却額は、ご相談者様がお持ちになっているご自宅の実際の状態などによって決まります。そこでもう1点付け加えるなら、将来的に家を売ることを考慮して、できるだけご自宅をきれいな状態に保っておくこともポイントです。

もし補修が必要なところを見つけたら、その都度対応しましょう。そのほうが築年数が経ったとしても、少しでも高値で、素早くご自宅を売れるかもしれません。