近隣トラブルのためマンション売却を検討しています

隣の部屋に宗教団体と思われる方が出入りしており、音楽やお祈りのような音が聞こえてきます。マンション組合に相談しましたが、なかなか追い出すこともできずに時間だけが過ぎている状態です。不安なので自宅マンションを売却し、折込み広告で見た中古マンションへ引っ越したいと考えています。不動産会社にこのことを告げると高く売れなくなりそうなので、黙っていても良いのでしょうか?

東京都江東区のマンションに住んでいる60代ご夫婦です。隣の部屋が新興宗教のたまり場になっていて、いつか事件でも起こすのではないかと不安です。

お住いのマンションの隣室に宗教団体らしい方が出入りしているというのは、確かにその団体と関係ない方にとってはあまり好ましくない状況でしょう。こういった宗教関係のトラブルはデリケートな問題で、なかなかマンションの管理組合や管理会社なども対応しにくいものです。しかし実際にお住いのご相談者様にとっては、速やかに解決したい不安材料に違いありません。

ご相談者様は、もうすでに現在お住いのマンションには見切りをつけ、次なる新居も目星をつけているとのこと。それならば、いち早く現在お住いになっているマンションの売却を目指して積極的に活動を開始されるほうが良さそうです。

その際に悩ましいのが、売却のきっかけになった近隣トラブルの告知です。最初に述べた通り、こうした物件を売却するにあたって、近隣トラブルの告知は必須となります。確かに、その物件の価値が下がりそうなことは言いにくく、黙っていれば高値で売れるかも知れません。

しかし売主が騒音などの問題を知っていたにも関わらず、買主に黙って売買契約を成立させた場合、後々でさらに重大なトラブルとなる可能性があります。そのためマイナスな情報であっても、売買契約の前には告知したほうが賢明です。

こうした近隣トラブルのような、物質的な欠陥や不具合ではないもののそこに暮らす上で問題となるものを環境的瑕疵、また心理的瑕疵といいます。瑕疵にはそれ以外に、物理的瑕疵、法律的瑕疵などがあり、売主は自分の知っている瑕疵について告知義務があります。

種類 内容
環境的瑕疵 周辺環境に問題がある不動産 ・周辺の騒音問題
・周辺の悪臭問題
・周辺の建造物によって日照や眺望が阻害されている
物理的瑕疵 物理的な欠陥や問題を抱えた建物や土地 ・雨漏り
・シロアリ
・ひび割れ
・耐震強度が基準未満
法律的瑕疵 法令によって自由な利用が阻害される、あるいは法令違反の物件・土地 ・開発行為を認められない市街化調整区域内
・構造上、安全基準が満たされていない
・建蔽率の違反
心理的瑕疵 過去に起きた出来事で嫌悪感を持たれる不動産 ・過去に自殺があった
・事件や事故があった

告知にあたっては、物件状況報告書という書面を使います。物件状況報告書は、不動産売買の契約において契約書や重要事項説明書に書かれないものの、買主に告知すべき内容を記す書類です。

平成24年度国土交通省による「重要事項説明・書面交付制度の概要」内「宅地建物取引における主な苦情・紛争相談の件数」でも、売買・仲介のトラブルとして「瑕疵問題」は上位に入っており、さらに告知のトラブルは多くの割合を占めています。

このように、瑕疵トラブルや告知の有無によるトラブルは不動産取引で大きな問題です。トラブル回避のために、書面での告知について国土交通省でも注意喚起を行っています。告知義務を怠ると、売主であるご相談者様は損害賠償を求められる恐れもあるのです。当初の契約で瑕疵担保責任の免責事項を規定する特約をつけていても、知っていて告知しなければ責任を問われます。

近隣トラブルは不動産会社や買主への告知義務がある心理的瑕疵・環境的瑕疵にあたります

近隣トラブルでのマンション売却は多い事例とはいえませんが、一定数あり、そこで告知に迷う人が多くなります。近隣トラブルは心理的瑕疵と環境的瑕疵にあたりますが、どこまでのトラブルを告知すべきかは難しい問題です。

近隣トラブルのある物件は基本的に、売主から買主への告知義務がありますが、トラブルの内容によっては告知するほどではないかもしれません。その基準は「買主がその物件に居住するにあたってトラブルが悪影響を及ぼすかどうか?」です。客観的にみて問題とならない場合には、告知しなくても済むこともあります。

たとえば、マンションに居住している売主と隣人が、何らかの理由で感情的にこじれてしまった場合。次の住人である買主が悪影響を被るリスクは少ないと考えられ、告知の必要もありません。ところが騒音やニオイ、隣人の問題行動などは買主の生活の質を脅かす恐れがあり、告知が必要になります。

今回のご相談者様のケースだと、トラブルの原因は宗教関係が問題にありました。隣室が新興宗教団体に所属しているらしい人のたまり場となっているということでした。それとわかるような声や騒音を耳にされたこともあるかもしれません。また、ご相談者様は新興宗教団体に対して精神的な不安もあるようです。

この場合には、隣室に漏れる音楽やお祈りなどが騒音になるかどうか?さらに宗教関係者の出入りがそもそも瑕疵にあたるかどうかを考える必要があります。一般的には騒音の有無に関して、告知義務はありません。

ただし、余程の騒音レベルで、すでにマンション内で大きな問題になっている場合には告知する必要があるでしょう。また、宗教関係者の出入り自体も瑕疵にはあたりません。その一方で、出入りしている人たちが反社会勢力などであれば、瑕疵と判断されるケースもあります。

今回のご相談者様のケースにおいては、念のため告知しておくほうがベターでしょう。宗教関係者の出入りと音楽や物音程度であれば、告知義務や怠ったことによる損害賠償は求められないと考えられます。とはいえ宗教の問題はデリケートなものであり、もし仮に新しい買主さんがその宗派を好まない場合には問題ないとも言い切れません。万が一のリスクを避けるためにも告知は行っておくべきでしょう。

もし告知すべき問題だったとしても、そのトラブルを買主が気にしなければ、売買は成立します。それよりも怖いのは、売買が成立したあとに起こるトラブルです。隠して売れば、売却後に不満の連絡が飛び込まないか不安な気持ちで過ごすことになります。そんなリスクを負うよりも告知さえしておけば、気持ちよく新生活に移行できるでしょう。

瑕疵担保責任を怠って売却すると、後々に大きなトラブルになる可能性があります

瑕疵を告知すれば売買で不利になり、買い手がつきにくくなります。できることであれば隠したいと思うのは当然のことかもしれません。また、心理的瑕疵は隠し通して売却できそうにも感じてしまうため、つい言いそびれるケースもあります。しかしいずれの瑕疵についても、隠しておけばあとで重大なトラブルとなり、損害賠償として多額の請求をされるリスクにしかなりません。

不動産などの売買では、上述したとおり売主には瑕疵担保責任があります。売却する土地や建物などに隠れた欠陥や不具合があった際に、売主が負う責任です。なかにはこの責任を放棄したために、大きな金額の損害賠償が認められたケースや売買契約が解除になったケースもあります。このように不動産取引において、売主は物件の状態に対し非常に重い責任を負っているのです。

瑕疵担保責任は、特約によって免責にすることもできます。これをいわゆる「瑕疵担保免責特約」といい、売買契約書のなかで取り決めを行うものです。この取り決めがあると、引渡し後の隠れた瑕疵について一切担保責任を負わないで済むこともあります。

ところがこの特約についても、物件の瑕疵を知っていながら告知しなかった場合には無効です。ご相談者様のケースだと、知らなかったでは済まされず隠し通すことも難しいため、告知しない選択肢には大きなリスクがあるでしょう。

出入りをする宗教関係者を同じように目撃した人もマンション内にいるはずです。ご相談者様本人が管理組合に相談もされています。そのため、この件を隠して売買を成立させるという選択肢は考えないでおくのが賢明です。

不動産会社を通して売却する際には、不動産会社が近隣トラブルの告知の可否を判断します


マンションなどの不動産の売買では、個人で取引するケースもありますが、一般的には不動産会社の仲介を利用したほうが安心です。法的な手続きや書面の準備なども、専門知識をもって代行してもらえます。

売りにくい物件の場合でも、買主を探すサポートを積極的にしてくれるでしょう。そのため近隣トラブルなどを抱えた物件を売却したいときには、不動産会社を通したほうがよりスムーズに話が進みやすくなります。

不動産会社に依頼してマンションを売却する場合、さらにもう1点メリットが存在します。近隣トラブルなどの心理的瑕疵を抱えた物件は、告知の可否を検討しなければいけませんが、不動産会社に依頼した場合にはその不動産会社が告知の必要性を判断してくれるのです。

今回のような宗教関係というデリケートな問題を抱えた売買には特におすすめです。実績や過去の実例をもとに、告知が必要か、どこまでを告知すべきかなど、売主にも買主にもあとあと問題のないように、納得のいく形で進めてもらえるでしょう。

また、売買を仲介する不動産会社へ告知をしておくことで、説明責任を共有できます。買主に対して不動産会社が告知をしなければ、仲介をした不動産会社の説明義務違反となり、買主は不動産会社に賠償などを請求できるのです。ケースによってはそれでも売主の責任を追及されることもありますが、負担は大幅に減ると考えられます。

不動産会社が告知すべきと考えるのは、客観的に迷惑行為を認識したときです。不動産会社によって自宅マンションの訪問査定などが行なわれ、そこでお祈りの声が隣室から聞こえた、といった状況から判断されます。不動産会社がそれを心理的瑕疵と判断するかどうかは、音量や頻度、それによって起こりえる暮らしにくさなどを考慮して決定されるでしょう。

不動産会社に仲介を依頼する際には、売主であるご相談者様は思い当たるすべての事柄を不動産会社へ伝えておくことが大切です。売主さんは不動産会社へ告知することによって、安全な立ち位置で売買の進行を見守れるようになります。ただし売主さんから不動産会社へ伝え漏れたことがあった場合、それが次の住人の居住環境に悪影響を与えたら売主さんも責任を逃れられません。

近隣に売却活動を知られたくない場合には、若干不利になります

近隣トラブルを抱えたマンションを売却する際には、そのトラブルの相手である隣人や同じマンションの住人に、売却活動をしていることを隠したい場合もあるでしょう。不動産会社に依頼して売却相手を探してもらう際、近隣に知られないように活動してもらうことも可能です。

不動産会社ではお住まいのマンションがあるエリア以外で募集活動を行なったり、会社独自のネットワークを使って売却したりといった手段を持っています。そのため内覧は避けられないものの、近所の人がご相談者様の物件を広告などで発見してしまうことは最低限防げるはずです。

ただし、こうした売却活動は買主さんの範囲を狭めて、一般的な売り方よりスピードや価格面で劣る可能性があります。売り出している情報を受け取る人が少なくなるということは、売れるチャンスが減るということ。そのリスクと引き換えに、隠密に売却するかどうかはご本人の置かれた状況などによります。

ご相談者様と隣人の関係を考えて、知られると気まずい、わだかまりが生じるというのであれば検討してみてください。

より有利にマンションの売却をしたいなら、不動産一括査定を依頼しましょう

近隣トラブルがあろうとなかろうと、ご自宅を売却する際にはそのお値段が気になります。大切な資産を手放す際には、複数の見積りをとり、比較することが大切です。マンション売却では、不動産の一括査定サイトが便利に使えます。複数の不動産会社が揃っており、1つのサイトで1回申し込みをするだけで、まとめて何社もの見積りが可能です。

一般的に心理的・環境的瑕疵を含め、瑕疵物件、事故物件と呼ばれるものは、市場価値が低いため、扱う不動産会社を選びます。瑕疵物件の売買実績を多く持った不動産会社は限られますが、慣れない業者に依頼するよりも高値をつけられる可能性が高いでしょう。

そこで、できるだけ広範囲にこちらの情報を発信し、多くの情報を得ることが必要になるのです。不動産一括査定サイトなら、複数の不動産会社を任意に選び、そこから見積りをとることができます。さまざまな業者が集まっているため、瑕疵物件に強みを持つ不動産会社に出会えるチャンスも広がりますし、見積りを比較することで自宅の相場も見えてくるでしょう。

不動産一括査定サイトでは簡易的な情報入力のみで査定金額を出すため、できる範囲で詳しく、良いことも悪いことも記しておき、より精度の高い見積りが返ってくるようにすることがポイントです。また場合によっては、訪問査定まで行なったうえで比較、不動産会社を選ぶという方法も視野に入れてみてください。

通常の不動産一括査定は、過去のデータや相場などから査定金額を出す「机上査定」です。訪問査定であれば、直接ご自宅マンションの様子を見たうえでより正確な金額を出してもらえます。自宅に不動産会社のスタッフが訪問するため、手間や時間がかかり、心理的なハードルは高いものの、瑕疵物件をより確実に有利に売却するには有効な手段と言えるでしょう。