新築で購入した不動産を売ることになりました。
そこで”新築 売る”と検索したら”損”というワードがでてきたのですごく気になりました。実際に損をしてしまう売り方とはどんな売り方なのでしょうか?
私としては新築なので、できるだけ高く売りたいです。損をしないように売却するにはどうすればいいですか?
この記事に登場する専門家
道下 真(ミチシタ マコト)
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、相続支援コンサルタント。1991年生まれ。信州大学卒業。信州大学卒業。2015年に(株)クロダハウスに入社し、営業として賃貸、売買の仲介業務に携わる。2016年から金沢営業所の立ち上げに携わり、同年店長に就任。得意分野は不動産売買。
人生で最も高い買い物と言われているのが不動産です。期待を胸に、やっと手に入れた不動産をすぐ売らなければいけないのは、決して気持ちの良いものではないと思います。だからこそ、少しでも高く損をしないように売りたいですよね。
本記事では、質問の答えとして、やむを得ず新築を売ることになった方に向けて、損をしない不動産の売り方を順を追って解説していきます。
- 新築を高く売るために必要な知識、流れが学べる。
- 実際の失敗事例が学べる。
- 高く売れた成功事例が学べる。
土地の最適な活用方法を一括提案!
売却活動をスタートさせるまでの準備
まず「新築を高く売る=不動産売却」を進めていくことになります。
道下
その売却活動を始める前にどんなことに注意すべきか、ここの部分をしっかり確認し、それを実行していくことで最終的に売却できる金額は本当に大きく変わってきます。
始めに売却を開始するまでにどういった準備(やるべき事)が必要なのか、全体の流れを知っておきましょう。
流れについてわかりやすくSTEPにしてみました。
- STEP.1事前準備
1-1.相場を把握する
1-2.最低販売価格を把握する
- STEP.2不動産一括査定サイトの活用
2-1.販売査定価格、買取査定価格を提示してもらう
2-2.不動産会社、担当営業マンの販売実績を提示してもらう
2-3.不動産会社に販売計画をプレゼンしてもらう
- STEP.3不動産会社の選定、媒介契約締結
3-1.収集資料をもとに不動産会社を選定
3-2.不動産会社と媒介契約を結ぶ
- STEP.4物件案内前の準備
4-1.物件の3S(整理、整頓、清掃)
4-2.告知書、付帯設備表を記入
- STEP.5物件案内、申込
いかがでしょうか。
実際に売却を進めるにあたり、上記のような準備(やるべき事)が必要になってきます。
それではそれぞれのSTEPについてさらにわかりやすく解説していきたいと思います。
STEP1.事前準備
1-1.相場の把握
まず初めに、自分の不動産がどれくらいで売れるのか、自分自身が把握するところから始めましょう。
理由としては、不動産会社に騙されないためです。
不動産オーナー
悪徳業者
極端な言い方ですが、不動産会社としては不動産物件が売れてしまいさえすれば(大きな手数料が入るので)いいのです。
道下
自分の不動産がどれくらいで売れるのかを知るには、次の3つの情報を入手する必要があります。
①近隣の取引事例
国土交通省のサイトで近隣の取引事例が見れます。
決して難しいことではないので、こちらで現状、どれ位の金額で取引されているかを調べましょう。
以下は簡単なステップになります。
サイトへ入り「不動産取引価格」をクリックします。
別のページが開きますので、売却を検討されているエリアを選択します。
すると以下のような詳細が表示されるので、「詳細表示」をクリックします。
以下のように、「実際に取引された不動産の坪単価」のデータを見ることができます。
不動産専用のポータルサイトも活用する
また、以下のポータルサイトも参考にしましょう。
ポータルサイトとは、不動産会社が自社で取り扱っている物件情報を、より多くの人に見てもらうために広告掲載しているサイトです。
これらのサイトを見れば、現在売り出されているライバル物件を把握することができるので、参考のために調べておくと相場の把握がさらにしやすくなります。
②土地の価格(公示価格)
公示価格は、自分の土地がいくらになるか参考になる目安です。
- 不動産鑑定士が土地を評価し、国土交通省から公表される土地価格(公示地価)
- 都道府県が調査し国土交通省が公表する土地価格(基準地価)
これら2種類の土地価格を一括して公示価格と呼びます。
1969年施行の地価公示法に基づき、土地の取引の指標となる価格として定められています。
取引の指標として、自分の不動産の公示価格を知りましょう。
出典元:こちら
③建物の価格(再調達価格×延べ床面積×残耐用年数/耐用年数)
建物の査定価格を算出するとき、一般的に原価法と言われる方法が利用されます。
原価法を用いた建物の計算法です。
「土地面積」や「建物面積」を正確に知る方法について詳しくまとめていますので、よければ参考にしてみてください。
「土地面積・建築面積・延床面積・建物面積」の測り方や確認方法とは?では、1つずつ解説していきます。
再調達価格とは
まず再調達価格は、建物の構造によって、新築時の単価が決められています。(銀行、金融機関、不動産会社によって異なる場合があります。)
以下は、国税庁が発表している建築年別の再調達価格です。
出典元:こちら
仮に平成27年に新築された木造住宅の場合、再調達価格は165,400円/㎡、つまり坪単価に直すと約540,000円になります。
また、延べ床面積は建物の各階の床面積の合計です。
例えば、1階が50㎡、2階が40㎡の建物の延べ床面積は90㎡です。
そして減価修正とは建物が老朽化した分の計算です。
計算方法は以下の通りです。
法定耐用年数とは
法定耐用年数とは、減価償却の計算をする際に定められている耐用年数であり、実際に建物が使用できる年数ではありません。
例えば木造であれば耐用年数は22年なので、築年数が22年を超えれば価値は0とみなされます。
以下、国土交通省で定められている法定耐用年数表です。
構造 | 耐用年数 |
木造 | 22年 |
軽量鉄骨造 | 19年 |
重量鉄骨造 | 34年 |
れんが造 | 38年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造 | 47年 |
例えば、令和元年10月10日に新築で購入した不動産を売却する場合を考えてみましょう。
再調達価格は平成27度の165,400円とします。延べ床面積は100㎡、築年数は0なので減価修正は1となります。
なので
= 165,400円 × 100㎡ × 1
= 16,540,000円
以上、ここでは①近隣事例の調べ方、②土地の価格の調べ方、③建物の価格の調べ方を解説しました。
- 近隣事例(土地総合情報システム、3大ポータルサイトを活用しましょう。)
- 土地の価格(公示価格を調べましょう。)
- 建物の価格(再調達価格×延べ床面積×減価修正)
不動産会社に査定してもらう前に、この3つを抑えておくと、不動産会社の意見を鵜呑みにして損をしてしまう可能性が低くなります。
後述する「不動産一括査定サイト」に登録する前に、事前に調査しておくことをお勧めします。
1-2.最低販売価格を把握する
最低でもいくら以上で売らなければいけないかを把握しましょう。
具体的に調べなければいけない項目を以下にまとめました。
- 住宅ローンの残債
- 売却に係る諸費用
- 新居移転に伴う諸費用
住宅ローンで不動産を購入された場合、銀行から不動産に対して「抵当権」という権利が設定されています。
例えば、4,000万円の住宅ローンを借りて、土地と建物を購入した場合、銀行は土地と建物を担保に4,000万円の抵当権を設定します。
道下
抵当権を抹消するためには、住宅ローンを全額返済する必要があります。
- 銀行から送られてくる「返済計画表」を参考にする。
- 銀行の融資担当者に直接確認する。
また、不動産を売却する際には、諸費用がかかります。
- 仲介手数料
- 印紙代
- 繰り上げ返済手数料
さらに、新居への移転費用も考慮しなければいけません。
- 引っ越し費用
- 新居購入費、賃貸なら初期費用等
- 近隣事例、土地の価格、建物の価格を自分で調べましょう。
- ローン残債額、売却にかかる諸費用、新居移転にかかる諸費用を把握し、最低販売価格を決めておきましょう。
STEP2.不動産一括査定サイトの活用
2-1.販売査定価格、買取査定価格を提示してもらう。
※(査定書にて必ず査定価格の根拠を明確に説明してもらう)
次のステップです。不動産一括査定サイトを活用しましょう。
不動産一括査定サイトに関する詳しい説明に関しては以下の記事をご覧ください。
不動産一括査定サイトとは文字通り、多くの不動産会社に物件の査定を一度に依頼することができます。
査定方法としては
- 「訪問査定」
- 「机上査定(簡易査定)」
の2パターンがあります。
<訪問査定>
訪問査定は、不動産会社の方が実際にご自宅に来て提案を受けます。
上記のイラストのように細かい部分まで確認してから査定額を出すので、より現実的な査定が得られます。
<机上査定(簡易査定)>
机上査定(簡易査定)は、基本的にデータ(オンライン上で調べられる程度)を元にした査定額となるため、ややアバウトな査定となります。
ただし、訪問されることはないので査定結果はメールや書面で受けることができます。
道下
その際、以下の2つの価格を聞くようにしましょう。
①販売価格
②買取価格
①販売価格
販売価格は、一般の方に向けて公開する価格です。
不動産業者は相場や近隣事例を鑑みて販売価格を設定します。
ここで重要なポイントがあります。
- 1社だけの査定価格で判断しない。
- 査定価格が相場より著しく高い場合は要注意。
不動産会社によって査定価格は大きく異なります。1社だけでなく、何社もの査定価格を比較検討しましょう。
また、査定価格が相場よりも著しく高い場合、心情的にはその査定金額を出してくれた不動産業者に依頼したくなると思います。
ここで失敗事例です。
査定を依頼した業者のなかでも、飛びぬけて高い査定金額を付けてくれた業者に依頼したが、結局半年経っても買い手がつかず、最終的に大幅の値引きをして売却せざるを得ない結果となった。
不動産業者は、専任媒介契約を取得するために、とにかく他社より高い査定価格を提示してきます。専任媒介契約とは、売りたい方から正式に書面で売却の依頼をいただくことで、他社に売却依頼をさせないようにする、いわば「囲い込み契約」のことです。媒介契約に関しては3-2で詳しく解説します。
相場より高いということは、場合によっては売りにくくなる、売るのに時間がかかるというリスクがあります。
道下
例えば、
- 過去にその物件の近くで似たような条件の物件を高値で売却できた実績がある
- その不動産会社独自のネットワークで優良な顧客情報を持っている
などです。
②買取価格
続いて、買取価格とは、不動産会社自体が買主となり、物件を買い取る際の価格です。
不動産会社に買い取ってもらう場合、売り手としては早期売却できるというメリットがあります。しかし、一般的には販売価格より低い価格設定のことが多いです。
しかしながら立地や条件次第では高値で提示してくれる場合があるので、必ず買取金額も提示してもらうようにしましょう。
2-2.不動産会社、担当営業マンの販売実績を提示してもらう。
不動産会社によっては、
- 売却が得意な会社
- 購入が得意な会社
と特徴が異なります。
道下
- 不動産会社の不動産売却件数
- 担当営業マンの不動産売却実績
この2つの情報をできるだけ具体的な数字で示してもらいましょう。
曖昧な返答であればその不動産会社は売却が得意ではない可能性があります。
2-3.不動産会社に販売計画をプレゼンしてもらう。
次のステップとしては、不動産会社から販売計画をプレゼンしてもらいましょう。
不動産会社によって物件の販売計画は異なります。
具体的には以下の項目をチェックすることが重要です。
①物件をどのような「広告媒体」で買い手に紹介してくれるか
②「進捗報告」はどのようにしてくれるか
①物件をどのような「広告媒体」で買い手に紹介してくれるか
不動産会社によって、買い手に対する物件の紹介方法は異なります。
多くの不動産会社は前述した「ポータルサイト」に物件情報を掲載します。
当たり前ですが、より多くのポータルサイトに物件情報を掲載したほうが、より多くの買い手に見てもらえます。
そのほかにも以下のような広告媒体があります。
- 新聞
- 地域の情報誌
- オリジナルのチラシ
- 不動産会社のホームページ
もちろんこれらを活用するには広告費もかかります。
不動産会社がどこまで広告費を払って物件を紹介してくれるか確認しましょう。
②「進捗報告」はどのようにしてくれるか
売却を正式に依頼した後、不動産会社は様々な広告媒体を使って物件を買い手に紹介します。
道下
進捗報告とは、物件にどれくらいお問い合わせがあるかを報告することです。
地域の情報誌に掲載した結果、1組内覧を希望されている方がいます。
ここで失敗事例です。
不動産会社に売却を依頼したが、その後一切報告がなく、後に確認したらほとんど物件を紹介していないことが分かった。
他の不動産会社で紹介してもらったところ、1カ月以内に売却できた。
このようなことにならないためにも、売却を依頼する前に、進捗報告について取り決めをしっかりしておきましょう。
具体的には以下の項目です。
- 報告頻度(1週間に1回、2週間に1回など)
- 報告内容(お問い合わせの数、不動産会社が具体的に行った広告活動など)
- 報告方法(メール、電話、FAX、対面など)
以上は売却依頼前に必ず取り決めしておきましょう。
そうすることで、依頼はしたが紹介してもらえてなかったということの抑止力になります。
- 複数社に、具体的根拠を持った販売査定額、買取査定額を提示してもらいましょう。
- 不動産会社の売却実績、担当営業マンの売却実績を提示してもらましょう。
- 物件の広告媒体の数を聞き、進捗報告について必ず取り決めをしておきましょう。
STEP3.不動産会社の選定、媒介契約締結
3-1.収集情報をもとに不動産会社を選定
ここまで収集した情報をもとに、売却を依頼する不動産会社を選定します。
査定価格だけで判断するのではなく、STEP2で解説した内容をもとに不動産会社を選定しましょう。
3-2.不動産会社と媒介契約を結ぶ
売却を正式に依頼するには不動産会社と「媒介契約書」という契約を交わす必要があります。
媒介契約書に関しては下記の記事にて詳しく解説しているので参考にして下さい。
媒介契約書には、「専属専任」「専任」「一般」と3種類あります。
結論としては、専属専任、もしくは専任で媒介契約を結びましょう。
まず進捗報告義務の観点からそれぞれの違いを解説します。
「専属専任」を結ぶと、不動産会社は1週間に1回は進捗報告をする義務があります。
「専任」だと2週間に1回、「一般」だと報告義務はありません。
従って、専属専任もしくは専任で媒介契約を結べば、確実に進捗報告が受けられます。
また、不動産流通の観点からそれぞれを比較してみます。
不動産を流通させるということは、より多くの方に物件情報を知ってもらうということです。
つまり、早期売却の可能性が高まります。
不動産を流通させる方法としては「レインズ」というサイトを活用します。
レインズに登録することで、売却を依頼した物件情報が全国規模で不動産会社を通して拡散されます。
出典元:こちら
媒介契約後、「専属専任」はであれば5日以内、「専任」だと7日以内にレインズに登録する義務があります。しかし、「一般」では登録義務はません。
レインズ登録を希望する場合は必ず専属専任、もしくは専任で媒介契約を結びましょう。
レインズ登録は物件の早期売却のための第一歩です。不動産会社によってはこのレインズ登録を怠る場合があります。
ここで失敗事例です。
専任媒介契約で売却を依頼していた不動産会社がレインズ登録をしておらず、不動産の流通が遅れて、売却に時間がかかった。
不動産会社がレインズに登録したかを確認するために、「登録証明書」をもらいましょう。
出典元:こちら
- 価格だけで判断せずに、STEP2の内容をもとに不動産会社を選びましょう。
- 進捗報告、レインズへ物件情報を登録してもらうために専属専任」もしくは「専任」で媒介契約を結びましょう。
STEP4:物件案内前の準備
4-1.物件の3S(整理、整頓、清掃)
不動産を高く売るために重要なことは第一印象を良くすることです。
新築であれば、モデルハウス並みにするのが好ましいです。
「モデルハウス」のようにを合言葉に整理、整頓、清掃を徹底的に行いましょう。
4-2.告知書、付帯設備表を記入
買い手の心理として、新築が売りに出ていると聞くと、何か良くないことがあって売られたのではないか?という気持ちになります。
物件に対する不安要素を消すことが不動産を高く売るためには必要です。
従って、物件に関する詳しい情報を把握できる「告知書」「付帯設備表」を記入し、買い手に安心感を与えましょう。
これらの書類は不動産会社が作成してくれるので、売却の依頼が決まった不動産会社にお願いして作成してもらいましょう。
- モデルハウス並みに整理、整頓、清掃しましょう。
- 告知書、付帯設備表を記入しましょう。
STEP5:物件案内、申込
ご案内も終わり、無事買い手から申込が入りました。申込書を見ると、希望額より大幅な値下げを希望されています。
物件を高く売るための最後のステップは「価格交渉」です。
価格交渉は基本的に不動産会社の担当営業マンに任せることになりますが、最終的な判断は売主に仰がれます。
売却するかどうかの判断材料として以下の情報が重要になります。
- どれくらいお問合せがあるか
- 売り出してからの期間
- 値下げを希望する根拠は何か
もし仮に、ほとんどお問合せがない状況で申込が入った場合、他に買い手がつかない可能性もあります。
また、売り出して3日後に大幅な値下げ交渉が入った場合、その後にさらに高く買ってくれる買い手があらわれる可能性があります。
そして何より、買い手はどういう心理で値下げ交渉をしているかが重要です。
少しでも下がれば良い、下がればラッキー程度の意思であれば値下げに応じる必要はないです。
道下
具体的に値下げをしなければいけない根拠を担当営業にヒアリングしてもらいましょう。
上記の判断材料をもとに、担当営業マンとよく相談したうえで決断しましょう。
まとめ
以上が、「新築を高く、損をしないように売るための方法」です。
改めて流れを確認しておきます。
- STEP1:事前準備として自分で近隣事例、土地価格、建物価格を調べる。
- STEP2:不動産一括査定サイトを活用し情報収集をする。
- STEP3:不動産会社を1社選定し、媒介契約を結ぶ。
- STEP4:モデルハウス並みに整理、整頓、清掃を行う。告知書、付帯設備表を記入する。
- STEP5:お問い合わせの数、売り出し期間、値下げ交渉の根拠などを参考に売却するかどうかを判断する。
不動産を高く売るためには不動産会社の好し悪しに大きく依存するケースが少なくないです。
それと同時に、売主自身が高く売るための知識を持ち、そのための行動ができるかどうかも重要となってきます。
本記事で学んだ知識を活かし、高く売るための行動をとっていただければ幸いです。
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