友人からお金を借りるため不動産査定で自宅の価値を知りたい。

脱サラして小さな飲食店を開業するため、友人にお金を借りたいと相談したところ、お金を貸すなら担保が欲しいと言ってきました。まずは不動産査定にて自宅の価値を調べたいのですが、具体的にはどのように調べたらよいですか?

夫婦ともに50歳です。現在、自宅は住宅ローン中で3,000万円のうち2,500万円は返済済みです。500万円は銀行の抵当権が入っている状態です。

脱サラ後に飲食店を開業されるというのは、とても前向きで夢のあること。それと同時に、初期費用として多くの金銭的負担がかかることでもあります。退職金などのご活用も考えているかとは思いますが、手元に現金を全く残さないわけにはいきません。当面の生活や将来的な生活の安定、いざというときの備えとして現金は手元に残し、借入で事業を興すのは賢明な考えといえるでしょう。

その資金繰りにおいて、ご友人を頼りにしているようですが、たとえ親しい間柄であったにせよ金銭の貸し借りは慎重に行うべきです。その点では、ご友人の「融資するなら担保が必要」というご意見は至極まっとうなもの。今後の健全で対等な友人関係のためにも、担保の設定を行うのは適切な対応といえます。

金銭を貸すことを事業として行っている銀行では、当たり前に行っているのが担保の設定です。カードローンのように無担保ローンもありますが、まとまった大きな金額を貸し付ける場合には、多くのケースで担保をとります。担保があることで、融資するほうは安心して大きな金額を貸し付けられるのです。

今回のケースでは、ご相談者様の自宅を担保にしようとお考えですね。ただしネックとなり得るのが、現在残っている住宅ローンの残債です。銀行など金融機関から住宅ローンを借りている場合、融資をした金融機関が抵当権を設定し、すでに担保にしています。そのため、住宅に設定された抵当権の種類や住宅ローンの残っている金額によっては、担保にするのが難しいかもしれません。

ご相談者様の住宅ローンは、3,000万円のうち2,500万円は返済済みということでした。抵当権は500万円となっており、返済が進んでいるため、担保価値は高いといえます。ただし不動産の価値によっては、換金した際に十分な金額にならないこともあるため、現時点での不動産価値を調べる必要があるでしょう。

現時点では、ご相談者様の住宅の第一抵当権は住宅ローンを借りている銀行、ご友人のために抵当権を設定する際には第二抵当権を設定することになります。万が一、ご相談者様が返済できなくなった場合にも、住宅ローンを借りている銀行の優先順位が高くなり、ご友人は担保を自分勝手に売却して返済金に充てることができません。

そのあたりの事情もしっかりと理解し、ご友人にも説明したうえで、借入のご相談を改めて進めることをおすすめします。

担保とは借主がお金を返せなくなった時の保険のようなものです

担保とは、借入金を返済できなかった時のためにとっておく、貸主の保険のようなものです。借主が万が一お金を返せなくなった場合、貸主は担保を処分して借金の返済金として充当できます。お金を貸した人が安心して借金返済を待つためにも、また借金をした人の返済に対するモチベーションのためにも、担保は有効だと考えられます。

担保にとるといっても、不動産は持ち運べるものではありません。今回のようなケースでは、ご相談者様のご自宅に「抵当権」を設定させることがご友人の希望ということになるでしょう。

抵当権は、それを設定した不動産を担保にする権利です。抵当権を設定しておくことで第三者に客観的に担保であることを証明できます。一般的な住宅ローンや不動産担保ローンでは、必ずこうした抵当権設定登記を行っています。

個人間の融資であっても銀行などと同じように、担保をとることが可能です。担保は土地や建物などの不動産だけでなく、貴金属や時計、美術品などの物品も対象。わかりやすい例を挙げるなら、貴金属や時計、美術品などの物品を担保にして金を貸す質屋という業種がそれにあたります。

もちろん個人間の金銭の貸し借りの際にも、こうした持ち運べる物品を担保とすることもあります。この場合には、お金を借りる人の持ち物を、お金を貸す人が預かり、保管することになるでしょう。それに加えて契約書で担保をとって金を貸した、借りた旨を明らかにしておきます。

ところが不動産のように動かせないものの場合には、すべてを書面によって管理、証明しなければなりません。抵当権を設定しても所有権はご相談者様にあり、返済を怠らなければ自宅に住み続けることができます。

ご相談者様の場合、先に住宅ローンを借りている銀行が第一抵当権を持っているため、今回ご友人に設定できるのは第二抵当権です。第一抵当権、第二抵当権は、抵当権設定の順番を示すものであり、先に抵当権を設定した者が先に弁済を受けられることになっています。

つまり万が一返済できなくなった場合、ご友人は銀行に先んじてご相談者様の住宅を売却などの方法でお金に変えることはできません。また換金されたあとも、最初に弁済金を受け取れるのは銀行であり、第二抵当権者のご友人はその残った金額から自分の弁済金の充当額を得ることになります。

もし仮にご相談者様がご友人から2,000万円の借入をして、返済が難しくなった場合、自宅の価値が下がって2,000万円になっていたら、銀行がまず500万円を受け取り、ご友人は1,500万円しか受け取れなくなってしまうのです。

抵当権を設定する、担保をとるといっても、景気や地価の変動によってはご友人に不利な状況もあるときちんとお伝えしておきましょう。

まずは不動産査定にて不動産の価値を調べましょう。

不動産を担保にする場合には、現在の不動産価値をしっかりと調べることが大切です。常に変動の恐れがある不動産ですが、今の価値を知ることで現時点での担保で借入できる金額を決めるしかありません。借入期間や金額によっては、定期的に不動産価値の診断を行うことも必要となります。

ご相談者様の住宅は、まだ住宅ローンが残っているということですから、不動産価値を調べた際は、そこから残債である500万円を引きましょう。3,000万円の評価であれば、2,500万円が担保価値になります。

抵当権の確認のために、住宅ローンを設定している金融機関へ抵当権残額証明書を取り寄せなければいけません。ご友人に抵当権があることとその金額を提示するために必要なものです。これは直接銀行などに出向く場合もありますが、さほど手間はかかりません。

不動産の価値を出す方法としては、不動産会社に見積もりをしてもらうのが有効な手段です。不動産の価値は社会情勢や景気によって左右されるものであり、特に中古住宅の価値はひとつとして同じものがありません。そのため、購入したときの価値があると思って話を進めると、予想を裏切られることもよくあります。

場合によっては地価の高騰によって不動産価値が上がっていることもあるものの、反対に地価の下落に遭うケースもあります。中古住宅であるため、新築より価値が下がっていることも考えなければいけません。

ご自身の不動産の価値をより適正に知りたいのであれば、複数の不動産会社に対して見積もりを依頼し、平均値を見定める必要があります。不動産会社によって価格のつけ方は違うため、1、2社の不動産会社の見積りを鵜呑みにするのは危険です。複数の不動産会社の見積価格をもとに、自宅の居間の相場を把握しておきましょう。

複数の不動産会社の見積りをとるには、不動産一括査定サイトが便利です。たくさんの不動産会社にいちいち見積りを依頼する手間が省け、一括で複数の見積もりを得られます。また、質のよい不動産会社ばかりを厳選している不動産一括査定サイトであれば、より相場の目安を調べやすくなるでしょう。

ご友人に不動産査定と抵当権残額証明書を持って相談しましょう。

不動産査定の結果がわかったら、抵当権残額証明書とともに、ご友人にお伝えして相談を始めましょう。ご友人にとっても事業資金の融資は大変大きな決断です。個人間の融資であろうと、正式に書面で契約を交わして融資を受けるようにしましょう。

ご友人の希望で抵当権を設定する場合には、第二抵当権を設定することになります。抵当権の設定にも書面を交わすことが必要です。交渉が成立したら、ご自宅に第二抵当権を設定し、ご友人と契約を交わしましょう。

まず、個人での融資の受け方についてです。不動産に抵当権をつけてお金を借りるには、金銭消費貸借契約書と同時に抵当権設定契約書を作成しなければなりません。一般的に、金融機関などで融資の申し込みをする場合には以下のような書類を準備します。

融資に必要な書類
・収入証明
・不動産登記簿謄本
・公図
・建物図面
・権利書
・印鑑証明

個人間の融資であっても、金融機関に準じた形式を踏むことでご友人に安心感を与えて、今後の関係を良好に保てます。

そして第二抵当権の設定についてですが、ご相談者様のように第一抵当権がすでに設定されている不動産を担保にする際のみ行います。とはいえ、不動産を担保にお金を借りる場合、何番目であろうと抵当権設定が必要となり、融資を受ける皆さんがやっていることです。

抵当権の設定は、法務局で行います。登記には以下のような書類が必要です。

登記に必要な書類
・登記原因証明情報
・登記識別情報
・印鑑証明書

また、必要経費として以下のものがかかります。

必要経費
・抵当権設定契約書に貼る収入印紙代
・司法書士への手数料

司法書士への手数料は、司法書士に依頼したときのみ発生する費用です。金融機関では専門の司法書士への依頼がルールになっていることもありますが、友人間の場合にはそこまで厳格ではないでしょう。自分で登記を行うことも可能です。手間と多少の知識が求められますが、コストは押さえられるので急いでない場合には試してみてはいかがでしょうか。

この抵当権の設定を行わないと、ご友人の希望するように担保とすることができません。ご友人との友情や信頼を損なわないためにも、確実に登記を行い、抵当権を設定することが大切です。

万が一交渉がうまく行かなかった場合のために、ほかの方法も考えておきましょう

抵当権がすでに設定されている不動産に第二抵当権を設定することは可能ですが、それを担保にするご友人にとっては若干不利な条件に感じられるはずです。第二抵当権では、まったく抵当権が設定されていない不動産に比べてリスクが高く、場合によっては担保をもってしても貸したお金を回収できないことすらあります。そのため、不動産査定の金額が低い場合などには、事情をお話になった際、ご友人が難色を示されることもあり得ます。

ご相談者様としては新しい事業をお考えになっており、出店準備のためのまとまった金額が必要で、自分に不利なことを隠してでも、ご友人からお金を借りたいと思うかもしれません。しかしそれは不義理に当たるため、できるだけ誠意をもって説明したいもの。後がないと思うと気持ちに余裕がなくなるため、その説明でご友人が融資に難色を示した場合には、別の方法で資金を得ることも考えておきましょう。

実際のところ、ご友人などの個人的な融資以外で第二抵当権による借り入れは難しい面もあります。銀行では第二抵当権による融資は断ることも多いようです。しかし、第二抵当権で借入ができる金融機関を探すことで、住宅ローンが残っている状態でもまとまった資金を得ることはできます。

第二抵当権でも利用しやすいのは、銀行以外の中堅どころの金融機関です。ノンバンクであれば支払い中の住宅ローンがある不動産も、担保として受け入れやすい傾向にあります。ご相談者様の場合には、そもそも返済も進んでおり、残債の割合が少ないため、ご友人が融資に前向きになってくれる可能性は高いでしょう。

しかし第二抵当権という点で躊躇される可能性や、ご自宅の査定金額によっては色よい返事をいただけない可能性もあります。そのため、第二・第三の選択肢をあらかじめ想定・調べておくことで、余裕をもってご友人と相談できるのがベターです。

また、場合によっては退職金の一部で住宅ローンを完済し、そのあとでご友人と不動産を担保にした借入の契約を結ぶという手もあります。住宅ローン完済後であれば、金融機関の抵当権を外すことができ、ご友人に第一抵当権を設定することが可能です。