AI（人工知能）不動産査定ランキングを教えてください。

AI（人工知能）不動産査定とはどんな会社で、どんなサービスが展開されていますか？また、どこが人気なのでしょうか？

インターネットが普及して以降、不動産一括査定サイトが次々に登場し、インターネットを通じての簡易的な不動産査定が一般的に利用されるようになりました。近年ではご相談者様のおっしゃるような、AI（人工知能）を利用し自動的に不動産査定額をシミュレーションするシステムも登場しています。

これは、不動産業界に広がりを見せている不動産テック（※1）の一環です。これまでは不動産業界、もしくはそれぞれの不動産会社が所有している情報が大々的に公開されることはあまりなく、市場の動きや価格相場などが顧客にはわかりづらい状況でした。しかし、こうした情報をわかりやすく透明化し、ときに行われる不動産会社による情報操作も排除できるという利点を持っているのが不動産テックです。

不動産テックの一環として広まってきたAIによる不動産査定は、これまで不動産会社のいい値を信用するしかなかった状況に刷新をもたらしました。不動産査定におけるAIは、全国各地の不動産情報を網羅したビッグデータを駆使して、利用者の不動産に関するデータを分析し瞬時に査定額を叩き出します。

こうしたサービスを提供している会社は、不動産ポータルサイトの運営会社やIT企業などが主です。比較的歴史の新しい会社はもちろんのこと、古くから不動産取引で実績を残している会社も、随時AIによる自動査定を導入しています。自社が運営する不動産査定サイトにて、IT企業が開発したAIシステムをベースに不動産自動査定を可能にしているのです。

AIを利用した不動産査定の大きな利点は、不動産会社の事情や方針にかかわらず平均的かつ公正なデータに基づいた査定額を知ることができるという点。不動産会社による査定を受ける場合、不動産会社が契約に持ち込むための営業的側面や、それぞれの会社が独自にデータ分析することなどにより、査定額にはばらつきが出がちです。

もちろん不動産一括査定サイトで行える簡易査定は、過去の取引実績から査定額を算出するため、おおむね市場相場に沿ってはいます。しかし前述のように、会社それぞれの個性や思惑などが絡み、同じ物件でも必ずしも同じ査定額になりません。その差異を埋めるのがAIであり、ビッグデータから分析する総合的な査定額を得られることで、利用者はスピーディに市場価格を把握できるようになりました。

さらにAIを駆使すれば過去の取引実績のみならず、あらゆるデータをもとにした未来予測も可能です。そのため今すぐに不動産を売却するわけでなくとも、こまめに市場価格をチェックして「将来的にどれくらいの価格になるか」の予測が立てやすくなったこともメリットでしょう。

サービスによっては、地域や沿線などのカテゴリ別に市場価格のランキングを形成したり、価格変動をグラフ化したりするものもあります。こうした各データの比較に関しては、不動産会社が開示することはほぼなく、不透明に感じられるポイントの1つでもありました。利用者にすれば、さまざまな角度からデータを比較検討・分析できることもAIの利点ではないでしょうか？

そのほか利用者側のメリットとしては、数十秒で査定結果がわかることも大きいでしょう。不動産一括査定サイトでも、もちろん査定額の提示はスピーディですが、登録している不動産会社が査定額を算出して、利用者に連絡が来るまでには最低でも1時間前後かかります。

しかしAIを駆使すれば、ほんの数十秒で査定結果を算出してくれるため、待ち時間を大幅に短縮可能です。さらに複数社から査定額の見積りをとった場合には、どの不動産会社と取引をするかを迷ったり、取引を断ったりする手間も生じます。ところがAIに関してはそのような手間もなく、心理的に利用者の負担が少ないことも特長です。

心理的な負担でいえば、不動産会社からの度重なる営業活動を受けることもないため、気楽に不動産査定を行えるでしょう。

AI（人工知能）による自動不動産査定サービスはこのようにして使います

AI（人工知能）で自動的に査定額を算出するサービスは、主にブラウザから開くサイトかアプリで提供されているほか、場合によってはスマートフォンにも対応しています。いずれも使い方自体に大きな差はないため、基本的な使い方をご説明しましょう。

まず物件情報の入力画面で地域や駅名、マンションの場合はマンション名などを入力します。検索をすると、該当の物件の市場価格をAIが瞬時に算出する、というものです。このように使い方は非常に簡単で、初めて利用する人でも直感的に操作できるでしょう。AIは膨大なデータをもとに、過去の取引情報や周辺にあるほぼ同条件の物件の情報まで提供してくれるため、価格の比較検討も容易です。

なお自動不動産査定サービスを利用する際には、ユーザー登録不要の場合と登録が必要な場合があります。どちらのタイプにメリットが多いかは、一概に申し上げることはできません。しかし目安として、とりあえず気軽に市場価格を知りたいのであればユーザー登録なしのサービス、少し細かな情報が知りたいならユーザー登録を行うサービスが便利です。

そのほかにも、サービスごとに特徴や使い勝手に個性があります。それらを踏まえながら、私がおすすめする自動不動産査定サービスの人気ランキングをご紹介しましょう。

ランキング第1位は、使いやすさに定評がある「VALUE AI」です。不動産デベロッパーの株式会社コスモスイニシアが運営するサービスで、簡単なユーザー登録を行って利用します。単に情報が見やすいだけではなく、将来的な価格や諸費用、運用における収益予想まで行ってくれる多機能なサービスが魅力です。もしご相談者様が不動産をお持ちで、今後売却のご予定があるなら、運用シミュレーションを行うツールとしても有効に使えるでしょう。

そしてランキング第2位は、気軽に査定額を知ることができる「HowMa」。運営するのは、不動産テックに特化したサービスを展開する株式会社コラビットです。この会社では、今後の不動産テックの発展に寄与すべく、自動不動産査定サービスも充実させています。こちらもユーザー登録は簡単。目当てとする物件の市場価格のほかに、周辺相場を地図で確認できるサービスや、ほかの類似物件の査定額が確認できるサービスもあります。

ランキング第3位は、不動産売買を中心に行う株式会社ハウスドゥが運営する「10秒でDo！」です。その名のとおり、物件に関する情報を入力するだけで瞬時に市場価格がわかるスピーディさが魅力。「とりあえず査定額が知りたい」というときにおすすめです。詳細な査定額が知りたいときにはメールでの問い合わせも可能で、利用者のニーズを幅広くとらえているところが利点でしょう。

ランキング第4位の「マンションAIレポート」は、電気通信事業をはじめ手広く事業を行うソニー株式会社と、グループ会社であるソニー不動産株式会社が共同開発したサービスです。IT技術に長けた大手企業が手掛けており、インターフェースの使用感や視認性に優れていることがポイント。物件の取引価格の推移や類似物件情報の表示など、便利な機能が搭載されています。

ランキング第5位「IESHIL」を運営するのは、インターネット事業を手広く行う株式会社リブセンスです。AI（人工知能）を駆使し、市場価格や過去の取引価格の推移、近い未来の価格予想まで行ってくれます。また、物件周辺の災害ハザードマップを確認できるようになっており、物件の購入を考えている人や売却における地域の災害リスクを把握したい人にもよいでしょう。

そのほか、一般の方の不動産売却よりもどちらかというと投資家向けですが、優れた自動不動産査定サービスも紹介しておきます。「キャッシュフローシミュレーター」というサービスは、大手金融機関であるオリックス銀行が運営元です。該当物件の市場価格や周辺の市場相場を把握できるほか、投資用不動産として運用したときの想定収支がAIによって算出できます。また、購入したい物件についてローンの事前審査が受けられるのは、金融機関が運営するサービスならではでしょう。

不動産ポータルサイト「LIFULL HOME’S」を運営する、株式会社LIFULLの「見える！不動産価値」というサービスもあります。こちらは市場価格や過去の価格推移だけではなく、該当の物件の購入を考えている人数なども調査可能です。これにより不動産売買のタイミングを掴みやすく、売却・賃貸の収支比較やランニングコストの計算までAIにお任せできます。

これらのサービスは、投資家向けであるだけに比較的、査定も高精度です。ご相談者様が仮に不動産をお持ちだとして、将来的な運用をお考えであれば、このようなサービスを利用して運用計画を立てるのもよいでしょう。

AI（人工知能）による自動不動産査定は、万能ではないことを付け加えておきます。

ここまでご説明したように、AI（人工知能）を利用した自動不動産査定システムは、市場価格のほかに過去の取引や未来の予測、周辺の類似物件情報などを網羅できる実力を持っています。しかし、実際にAIで行える査定はあくまで簡易的なものであることは否めません。

AIが駆使するビッグデータだけでは、物件ごとの細かな状況や環境まで把握しきれないことがその理由です。たとえば同じマンションの角部屋でも、1階・2階だけは目前の一軒家により日当たりが悪い、その部屋だけリノベーション済みといった条件で価格に上下が生じるケースがあります。さらに、周辺に新築マンションや商業施設が増えたなどの環境の変化も物件価格を左右するでしょう。

このような細かな変化や状況は、AIが読み取るにはまだまだ難しく、実際に物件や周辺地域の状況を目視しなければ把握できません。AIはあくまで、過去のデータを中心に市場価格を算出するものです。その結果、状況の変化で起きた価格変動をそのままデータとして活用してしまい、場合によっては市場相場と若干異なる結果を出す可能性もあります。

つまりAIを利用した自動不動産査定は、あくまで参考として利用すべきと考えておくのが得策です。そのため、すぐに売却するわけではないけれど参考までに市場価格を知りたい人、将来的な運用の予想を立てたい人にはおすすめです。逆に、すぐに物件を売却したい人や詳しい査定額を知って資金繰りを考えたい人などは、やはり不動産一括査定サイトで不動産会社の査定を受けるほうがよいでしょう。

また、自動不動産査定サービスと不動産一括査定サイトを併用し、それぞれの利点を取り入れて物件の市場価格を比較する使い方もできます。たとえば不動産一括査定サイトで複数社から査定見積りをとったとき、それらの金額が市場価格と合致しているか確認すべく自動不動産査定サービスを利用する場合などです。

こうして2つのサービスから算出された査定額を比較することで、市場価格よりも明らかに高値・安値をつけた不動産会社を取引候補から外すこともできます。

不動産査定サービスは目的に応じて賢く使い分けましょう。

不動産業界にも、AI（人工知能）の有効活用をはじめとした不動産テックの動きが広まっています。AIによって導き出される物件の市場価格には透明性があり、不動産会社の思惑などが介入しないために公平な結果が期待できるでしょう。

一方、細やかな状況からの査定など、AIにはフォローしきれない面があることも事実です。このためAIによる査定だけを頼りにするのではなく、不動産会社の意見を聞くことができる不動産一括査定サイトとの併用をおすすめします。

また、こちらでは自動不動産査定サービスのランキングもご紹介しました。ご相談者様が物件の売却についてどのようにお考えかによって、適したサービスも変わってくるはずです。いずれも利用は無料なので、どのサービスがご自分に合っているかは実際に使用して確かめてみるとよいでしょう。