イエウールにある机上査定と訪問査定どのように違いますか?

イエウール 不動産一括査定サイト

持ち家を売ろうかなと思い、イエウールの不動産一括査定依頼を利用しようとしていたら、「机上査定」と「訪問査定」のどちらかを選択するようになっていました。この2つは何が違うのでしょうか?
まだはっきり売却すると決めているわけではありません。こんな私の場合は、どちらでお願いすれば良いのでしょうか?

この記事に登場する専門家

菅 正秀

宅地建物取引士、マンション管理士、住宅ローンアドバイザー、福祉住環境コーディネーター。
大阪府大阪市生まれ。大学卒業後、弁護士事務所に勤務、宅地建物取引士資格取得を契機に大手不動産会社に転じる。法律知識を活用し中古住宅、中古マンションの仲介営業を担当。ステレオタイプの不動産会社のイメージを払拭して、顧客と不動産会社が健全なパートナーシップを結べる一助なるコンテンツ作成を心がけている。

今回のご質問者様のご相談内容は、

  • 「査定方法の机上査定と訪問査定の違いがわからない」
  • 「自分はどちらを選ぶのが良いのか」

というものです。

インターネット上にある一般的な回答ではなく、業界経験者である筆者が実情を踏まえたアドバイスをしますので、ぜひ最後までお読みください。

そもそも「査定」とはどういうものなのか? ここを間違うと失敗します!

あなたは、不動産(持ち家)を売却するのが初めてなのではありませんか?

多くの方は、「買ったことはあるけど、売ったことはありません。」という状態です。
そして、

  • 自分の家は売れるのだろうか?
  • いくらで売れるのだろか?
  • どれくらいの期間がかかるのだろうか?

・・・と頭の中にたくさんの疑問が浮かんでいることと思います。

不動産(持ち家)を購入した時には、不動産会社(売主)があらかじめ決めた価格をもとに、買うかどうか決めたことでしょう。しかし、今度(持ち家売却)も不動産会社が価格を決めるものと思ってはいけません。

不動産会社が行う「査定」とは、売り出し価格の参考として 3 ヶ月程度で買い手が付くことを目安に算出したものです。言わば不動産会社の提案価格です。

その査定価格で必ず売れるという保証はありません。したがって、高い査定価格を出した会社が良い会社というものでもありません。

また、その査定価格でなければ売りに出せないわけでもありません。

今度(持ち家売却)は、あなたが売主です。

売りに出すかどうか、売却価格をいくらにするか、その決定権・主導権はあなたご自身にあります!

もちろん、信頼できる不動産会社は、市場動向、類似の取引事例、地域情報などを踏まえた根拠があり説得力のある「査定」をしてくれますので、大いに参考にすべきです。

机上査定と訪問査定とはどう違うのか?

それでは、ご質問の「机上査定」と「訪問査定」との違いについてお答えしていきます。

机上査定(簡易査定)とは

あなたがイエウールの申し込み画面に打ち込んだデータを元に、物件を実際に見ることなく査定価格を算出する方法です。文字通り机の上だけで行います。

ただし机上査定(簡易査定)はあくまで概算となるため、提示される査定額も〇〇〇万円~〇〇〇万円といった大まかな表示となります。

訪問査定とは

これに対し訪問査定とは、不動産会社が実際に物件を見てから査定価格を算出する方法になります。

お住まい中の物件なら、あなたのご自宅に訪問しますし、すでに空き家になっていれば、あなたの立会いのもとに物件を見学することになります。

机上査定はおおざっぱな価格でスピード重視、訪問査定は正確な価格が出るのに時間がかかり、価格が大きく変わる可能性があると、両者の違いを説明しているのが一般的です。

かかる時間も、机上査定なら数時間〜1日程度、訪問査定なら3〜4日程度としています。

また、机上査定・訪問査定のメリット・デメリットも下の表のように説明されているのが一般的です。

机上査定 訪問査定
メリット ・短時間で価格がわかる
・隣近所にわからない
・基本情報を入力するだけ
・査定額が正確
・査定額の根拠を聞くことができる
・信頼できる会社か判別しやすい
デメリット ・査定額が不正確
・査定額の根拠を聞くことができない
・信頼できる会社か判別しにくい
・日数がかかる
・隣近所にばれる可能性がある
・訪問の日に家に居ないといけない
・複数業者にお願いすると対応が大変

 

●近所の人に知られたくない

●すぐに売却する予定はない

●今の価値だけ知りたい

机上査定(簡易査定)
●真剣に売却を考えているので正確な売却相場を知りたい

●すぐに売却活動を始めたい

●公正公平な査定額をしりたい

訪問査定

あなたの物件がもしマンションであれば、ほぼ机上査定と訪問査定で金額が変わることはありません

分譲時のパンフレットや図面集などは、過去に取引した売主さんから譲り受けていますし、もし持っていなくてもインターネット上から入手することも可能です。
取引事例や売り出し物件の情報は、レインズ(不動産業者用データベース)を調べればすぐにわかります。

不動産登記の情報は、取引の安全のため法律上誰でも閲覧可能となっており、インターネットを使えば居ながらにして調べること(有料)が可能です。
あなたが、イエウールにマンション名とお部屋番号を入力すれば、査定に必要な情報は入手できてしまうからです。

あなたの物件が一戸建ての場合も状況はほぼ同じです。

物件の用途地域などの法令上の制限は、自治体のホームページで調べられることが一般的ですし、登記情報はマンションと同様に調査可能(マンショより少し手間がかかります)です。
建物の外観もインターネットから見ることができたりしますし、前面道路の幅や状態もツールを使えば把握可能です。

マンションでも一戸建てでも、お住まいになっていれば住宅設備などは劣化していくのは当然ですので、あまり査定に影響ありません。つい最近リフォームしたとか、シロアリ被害や雨漏りなどの特別な事情がなければ、2つの査定価格に大きな開きは出ません。

このことは、実際に机上査定を依頼した場合に、不動産会社から出てくる「査定書」をご覧になれば、ご理解いただけると思います。

不動産会社が査定をする目的を理解しておく

ちなみに、机上査定を依頼した場合に、メールや電話で金額だけ伝えて終わりという不動産会社はまずありません。

それは、不動産会社の目的は「査定」をすることではなく、あなたから不動産(持ち家)売却の依頼(媒介契約)をしてもらうことだからです。

イエウールから査定依頼がきたということは、複数の会社との競争になっていることは明確なので、いかに自社が有力で信頼できる会社かアピールしなければなりません。そこで、各社はきっちりとした「査定書」を郵送なりメールの添付データにして送ってきます。

その後、この「査定書」をきっかけに「査定書内容を説明しに行きます」とか「実際に拝見すればもっと正確に査定できます」と言って面談に持ち込もうとします。
このことは、後述の2つの査定方法の使い方に関連しますので覚えておいてください。

不動産会社はどのように査定を行っているのか?

それでは、話を戻して「なぜ、机上査定と訪問査定の査定価格が大きく変わらないのか」について解説します。

査定は、似通った物件の取引事例と査定する物件を比較して価格を算出します。
マンションを例にして説明して行きます。

具体的には、査定マンションの評点と事例マンションの評点を比較して算出します。


そして、この評点を決める評価項目は、



このように多岐に渡ります。
そして実際に訪問して物件を見なければ確認できない項目は、

  • 「3住戸の位置 日照・採光等」
  • 「4専有部分 室内の維持管理状況 と 外からの騒音・振動 と 眺望・景観」

ぐらいです。

したがって、これらの項目が想定(通常「普通」で評価)より大きく劣っていなければ価格への影響は小さいことがご理解いただけたと思います。

MEMO

※画像の「査定条件表」は、国土交通省の外郭団体である「公益財団法人 不動産流通推進センター」が作成し、国土交通省が利用を推奨している「既存住宅価格査定マニュアル」に基づいています。
多くの不動産会社が利用していますし、利用していなくとも項目が少し違うだけでやり方そのものは同じです。

マンション、一戸建て それぞれのサンプルを添付しておきますので参考にしてください。

マンションの査定書サンプル
一戸建ての査定書サンプル

 

実践 2つの査定方法の使い方

これまでの話を踏まえて、最後に「机上査定」「訪問査定」のどちらを選べば良いのかについて、お答えします。

最初は「机上査定」で不動産会社の選別を行い、次に「訪問査定」で不動産会社と面談し依頼先を決定する2段階活用をお勧めします!

多くのサイトでは、売るかどうか決まっていない人は、大まかな相場価格を把握するために「机上査定」
売却が決まっている人は、不動産会社を選択するために「訪問査定」を使いましょう。としています。

しかし、売却が決まっている人であっても、不動産を初めて売る方が、(「訪問査定」で)不動産会社の担当者と面談するというのは、ゲームで例えてみますが、経験値からすると初期レベル(あなた)でいきなりボスキャラと戦うほどの違いがあると思います。これではハードルが高すぎると思いませんか?

しかも、イエウールの不動産一括査定であれば最大6社の不動産会社と面談することになります。

あなたが、主導権を持って価格や依頼先の不動産会社を決定するのは難しく、不動産会社に押し切られてしまうのではないか、と不安になるのではないでしょうか?

そこで筆者は、以下のステップを踏まれることをお勧めします。

①まずは「机上査定」を選択します。
②各社の査定書が出揃うまでの間に、イエウールの「コラム」などで不動産売却について情報を仕入れます(これである程度の疑問点は解消されるはず)
③各社の査定書をよく読み、あなたの物件をどう評価し、根拠はどうか吟味します(②で仕入れた情報が活きてきます)
④「訪問査定」を依頼する会社を3社ほど選択します。
⑤実際に面談して、その内容から依頼先の不動産会社を決定します(この時、解消されていない疑問点や聞いておきたい事を、各社にぶつけて対応力をみます)

いかがですか?
少し面倒くさそうとお思いになりましたか?

しかし、不動産(持ち家)売却は、一生で何度も経験するものではありません。ですので、できる限りの準備や情報収集を行い、「失敗した」と後悔しないよう慎重にことを運んでください。

筆者の過去のお客様の中に、

「査定額の一番高い会社と一番安い会社をカットして、3社と面談して決めたよ。」

「一番高いところは胡散臭そうだし、一番安いところに会うのは気分が悪いから。」

とおっしゃる方がいました。
なるほど、そういう決め方もあるのか、と感心したものです。

注意
不動産会社選びはエージェント(代理人)選びです。

購入時と違い、売却時の不動産会社は相対するものではなく、売却成功を目指して活動してくれるあなたのエージェント(代理人)です。
一生懸命に動いてくれそうで、あなたのフィーリングに合う会社(担当者)かという基準で選びましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

イエウールの「机上査定」と「訪問査定」の違いと、その利用法についてお答えしました。両者の査定価格には大きな違いはありませんし、主導権・決定権はいつでもあなたご自身が持っています。安心して「机上査定」「訪問査定」の2段階活用をしてください。

あなたの不動産(持ち家)売却活動のご参考になれば幸いです。

イエウールの詳細や口コミ・評判については、以下の記事でまとめています。

イエウール 不動産一括査定サイトのリアルな口コミ評判まとめ

The following two tabs change content below.

菅 正秀

■宅地建物取引士、マンション管理士、住宅ローンアドバイザー、福祉住環境コーディネーター。 ▼大阪府大阪市生まれ。大学卒業後、弁護士事務所に勤務、宅地建物取引士資格取得を契機に大手不動産会社に転じる。法律知識を活用し中古住宅、中古マンションの仲介営業を担当。 その後、顧客と一緒にモノづくりをするために、地域中小建設会社に移り、注文住宅・賃貸マンションの受注営業を担当。大手建設会社との競合が激しい中、操業以後に流入してきた近隣住民のクレームにお悩みの経営者さんに、不動産会社時代の人脈を使い工場の移転先を斡旋した上で、その跡地に93戸の賃貸マンション建設の受注をするなど、15年間で約32億円の受注する実績をあげる。 現在は、建築にも明るい不動産コンサルタントとして、不動産会社のエスクロウ業務(契約管理)・新人社員指導等を行なっている。ステレオタイプの不動産会社のイメージを払拭して、顧客と不動産会社が健全なパートナーシップを結べる一助なるコンテンツ作成を心がけている。