社内の友人と同時期に転勤になり、お互いのマンションを交換するため不動産査定を考えています。

社内の友人とちょうど入れ違いで転勤になり、当分戻れないためそれぞれの勤務地に近いマンションを交換しようという話になりました。この場合、どのように話を進めたらよいでしょうか?また、話がまとまらないときは双方売却も考えています。

都内中央区にマンションを所有している40代男性(会社員)と名古屋にマンションを所有するに同期の友人40代男性(会社員)。共に住宅ローンは完済済みです。

お互いに転勤先の住居に迷わずに済む、渡りに船と言えなくもありません。転勤先での住居探しは行く先が遠方であればあるほど厄介で、あらかじめ決まっているに越したことはないものです。気心の知れた友人の住居であれば、中古住宅でも気持ちよく入居できそうな気がします。不動産の交換であれば、それぞれの持ち物を物々交換するイメージで、コスト面も安心感が強いと想定されているのでしょう。

確かに、ご相談者様とご友人の希望する不動産の交換にはメリットがあります。交換するだけであれば、そこに持ち出す金銭が発生せず、発生したとしてもわずかな金額で済むかもしれません。また、支払うべき税金が免除になる制度もあります。

しかし一方で、個人間の不動産売買となるための問題点があることも事実です。不動産会社を通さないことでトラブルになる可能性もあり、ここは慎重な対応が必要となるでしょう。

個人間の不動産の交換において、注意すべきことに金銭的な問題が挙げられます。不動産はひとつとして同じものがなく、まったく等価値での交換もあり得ません。そのため、お互いの不動産の価値によっては差額を支払うことにもなりますし、その金額次第では折り合いがつかないこともあります。

専門家ではない個人での不動産価値の判断は難しく、交換が成立したとしても不平等感が生まれてしまうかもしれません。さらにプロの見立てでないと、実際に物件の価格を見積る際も水回りや周辺環境など、不動産の価値を左右する重要な点を見逃すことも多くなります。

お互いの新居をより良い形で手に入れるためにも、また大切なご友人との仲を壊さないためにも、一つひとつの問題点と向き合い、無理のない着地点を見つけることが大切です。

不動産会社を通さないで交換したい場合でも、正確な不動産価値を知るために、まずは不動産査定を依頼すると良いでしょう。プロの査定額を知っておくことで、それぞれの価格に信ぴょう性が生まれ、後々不満を感じにくくなります。もちろん専門家でないとわからない水回りや環境なども見てもらえるのもメリットです。

不動産会社の査定には、机上査定と訪問査定がありますが、より正確な価格を知りたいなら、訪問査定で双方の物件を実際に見てもらうことをおすすめします。東京と名古屋ということで距離はありますが、できれば同じ不動産会社で査定してもらうのがベストです。全国展開している不動産会社を使うと良いかもしれません。

また、東京と名古屋であれば土地の価格も環境も違いますし、間取りや周辺環境、築年数などによっても不動産価値は変わります。そのため実際に話が進むうちに、どちらかが不満を感じ、折り合いがつかなくなることもあるでしょう。話し合いがうまく行かない場合に、それぞれ売却するというのは非常に良い方向性です。このときも査定で出した金額は物件相場の目安として使えるので無駄になりません。

個人間の不動産の交換には税金面でメリットがあります。

個人間の不動産の交換にはいろいろな難しい面や心配事もありますが、税金面ではメリットを得られることがあります。それは譲渡所得税の特例による税金の免除です。

不動産の売却には譲渡所得税がかかり、交換も同様にそれぞれの不動産を売買したと認められて税金がかかります。譲渡所得税は以下の計算式によって算出された譲渡所得にかかることになり、その税率は以下表のとおりです。

課税譲渡所得=譲渡金額-(購入時の価格+譲渡にかかった費用)
所有期間 5年未満 5年以上
所得税 30% 15%
住民税 15% 5%

土地や建物、株式などを売却して得た利益を一般的に譲渡所得と言いますが、その譲渡所得に対する税金を譲渡所得税と言います。正式には所得税と住民税です。さらに、その税率はそれぞれ所有期間5年を境に定められています。これらの税金は、給与所得や事業所得などとは別に計算される分離課税です。

そのため事業でマイナスが出ても、不動産の譲渡所得税を免れることはできません。ただし不動産(固定資産)の交換であれば、一定の条件をクリアしたものに関して特例が認められています。それが譲渡所得税の特例です。交換する物件の状態によっては、譲渡所得税を支払わずに済むこともあります。

譲渡所得税を免除できる条件は以下をご参照ください。これらの条件に当てはまらない場合、上記に挙げた譲渡所得税がかかります。

・同じ種類の資産であること(土地と土地、建物と建物など。ただし借地権も種類は土地に分けられるため、借地権と土地の交換は可能)
・お互いに交換する不動産を1年以上所有していること
・交換する不動産は交換するために所得したものではないこと(不動産の売買を手掛ける会社には特例は適用されない)
・交換した不動産は交換前と同じ用途で使うこと(交換したあとに居住用から工場用などに変更すると税金がかかる。ただし交換相手が変更してもこちらに税金はかからない)
・交換する不動産の価値の差は、価値が高いほうの20%以内であること(1億円と7,000万円の物件の交換では、その差は3,000万円で30%になる。この場合、特例はなし)

今回のご相談では、それぞれに居住用であるマンションの交換ということになるため、用途の変更は関係ありません。また「交換する不動産は交換するために所得したものではないこと」にも当てはまりません。今回ご相談者様が特に意識したいのは、それぞれの物件の所有年数や価値の差あたりでしょう。

ご相談者様のマンションは、なかでも地価の高いエリアである中央区とのこと。名古屋のマンションとの差額が気になります。もちろん世間の相場に関わらず価格を設定して交換することも可能ですが、お互いに不満の残らない結果となるようにしましょう。

個人間の不動産の交換では不動産の価値を正確に知ることが大切です。

不動産会社を通さない個人間の不動産の交換では、それぞれにお持ちの不動産の価値を正確に知り、差額(交換差金)が発生するか、発生するならいくらかを知る必要があります。前項のような交換の特例を利用するには、交換する不動産の価値は大体一致していなければならず、価値があまりにも乖離していると課税の対象になりかねません。そのため、まずは正確な価値を調べましょう。

個人で不動産の正確な価格(時価)を知るには、不動産一括査定サイトが便利です。不動産一括査定サイトは一度の申し込みで複数社の不動産査定を受けることができ、不動産の価値の相場を簡単に知ることができます。

ただし机上査定の場合には、過去のデータに基づいて計算された金額となり、個々の物件の詳しい事情までは判断の材料になりません。そのため信ぴょう性はやや低くなり、いざ詳しく査定してみたら誤差が大きかったということもあります。

より詳しく不動産査定をしてもらいたいならば、訪問査定の利用がおすすめです。訪問査定は、実際の物件を不動産会社の担当者が訪れ、物件を目で見て査定するという方法です。担当者の来訪を受け、査定をしてもらい説明を聞くという流れを踏むため、時間がかかり、複数社に依頼するのは大変でしょう。

しかし不動産のやり取りは非常に大きな価値のものが動きます。ある程度は準備に手間をかけ、慎重に進めなければいけません。

不動産会社を通さないことでコスト減できますが、手続き面で不安もあります。

不動産会社を通して売買をするためには、仲介料などのサービスの対価を支払う必要があります。そのため、すでに相手が決まっているご相談者様のようなケースだと、不動産会社を利用するのは無意味ともいえるでしょう。

不動産の買取だけでなく、不動産の売買・交換・賃貸借などの代理や媒介も不動産会社の仕事です。これらの報酬は以下の表の料率で計算されます。交換時の報酬は、交換する不動産の価額に差がある場合、高いほうが「交換に係る宅地建物の価額」として計算に使われます。

取引される不動産の金額 手数料の料率
200万円以下の部分 5%以内
200万円を超400万円以下の部分 4%以内
400万円超の部分 3%以内

こうした不動産会社への報酬は、できれば支払いたくないと思うのが当然でしょう。しかし場合によっては、友人間であっても不動産会社を通して行ったほうがスムーズに進むため、検討してみても良いかもしれません。

今回はお互いに転勤ということで、会社からの辞令の内容によっては手続きなどに時間をかけられないこともあります。時間のないなかで、価格の設定や書面での手続きを行う必要があるならば、プロに任せられる部分は任せたほうが快適です。時間や労力をお金で買ったと思えば安いものだとも言えます。

交換の場合には不動産会社が査定してくれないこともあります

不動産一括査定サイトに依頼すると、東京、名古屋双方の地域に店舗がある不動産会社が名乗り出てくるでしょう。複数の不動産会社に見積もりを依頼したうえで、適正な価格を知り、お互いに話し合いで折り合いをつけることになります。

ところが不動産会社のなかには、個人間の売買であることを伝えると不動産査定を断るところも珍しくありません。不動産会社では売買や交換の仲介も行っていますが、今回のようなケースは不動産会社としては仕事につながらないためです。すでに相手も決まっており、価格も折り合いがついているならば不動産会社として出る幕がないからです。

そのため、とりあえず査定額を知りたいという場合、不動産査定に必要な情報のみを簡潔に伝えて、一括査定を行うようにしましょう。不動産査定の後は依頼を断っても当然構いません。不動産一括査定サイトでは複数社の不動産会社が争うため、断られることもあると不動産会社側も理解しています。

査定額によっては、実際にご友人との交換ではなく不動産会社を通して売却する可能性もあるかもしれません。そのため、最初からご自分で道を狭めないことが大切です。

話し合いで折り合いがつかなかった時のために売却も考えるのは賢い判断です

ご相談者様とご友人間の自宅マンションの交換では、おそらく双方の査定額に開きが出ることが予想されます。もともと不動産の価値や価格には、ひとつとして同じものはありません。同じマンション内の居室であっても、階数やベランダの広さ、角部屋かどうか、日当たりの良さなど、ちょっとした違いで売買価格は変わってしまいます。

そのうえ今回は東京都中央区という都心で、日本全国のなかでも地価の高いエリアと名古屋という地方都市との交換です。そのため、ある程度の差額の発生は仕方のないことでしょう。

一般的に考えられるケースとしては、名古屋のマンションのほうの時価がご相談者様のご自宅よりも安く査定され、ご友人に高額な差額(交換差金)が発生することが挙げられます。差額がある場合、差額の支払いについての話し合いが必要です。

また、特例の認められる交換でも、どちらかが差額を支払う場合には差額に対しての課税があります。差額が大きくなればその分の課税も大きくなりますし、差額が価格の高いほうの物件の20%を超えた場合には特例措置も受けられません。

お互いに差額の支払いや課税の問題を抱えることとなれば、話し合いがうまく行かないケースも十分に考えられます。こうした高額なやり取りを行ううえでは、ご友人との仲がぎくしゃくしてしまい、友情にヒビが入る可能性もあるでしょう。そのため、いざ話し合ってみて折り合いがつかなかったら、速やかにそれぞれが売却の方向へ向かったほうが安心です。

ご相談者様のご自宅マンションも、ご友人のマンションもそれぞれ住みやすい都市部にあります。物件に見合った価格を設定すれば買主は現れるでしょう。その場合にも、不動産一括査定によって得た売却の相場が役立ちます。不動産一括査定サイトから査定を申し込んでおけば、次のステップにも進みやすく、効率良く売却の相談へ移れるでしょう。

交換にこだわりすぎることなく、売却も選択肢のひとつとして常に頭に置いておくことで、売却も友人関係もうまくいくはずです。