アパート一棟をまるごと不動産査定できるところはありますか?

アパート経営をしている者です。15年前に所有の土地にアパートを建てましたが、物件が古くなり空室が増え、家賃も下がりました。大規模な修繕時期になり、修繕か売却かどちらがよいか悩んでいます。

60代男性です。15年前に親から相続した土地にアパートを建てましたが、物件が古くなると空室が増え、家賃も下がってきました。修繕をすると元をとるのに長期間かかるため、この機会に売却してしまったほうがよいのではないかと考えています。事業ローンは組んでいません。

経過年数を考えたときには、売却の方向で進めることをおすすめします。そして売却するならば、一棟単位のアパート・マンションなどの投資用不動産に強い不動産会社を選ぶことが大切です。

アパート経営をしている場合、いずれ訪れるのが収支確定のタイミング。投資用不動産は、購入してから収益物件として働いてくれるだけではありません。よいタイミングで売却することによってさらに利益を増やすこともできます。不動産投資では、この売却という行為は出口戦略として大変重要なものです。売却する金額が期待はずれのものだったとして、場合によっては収支がマイナスに傾くこともあります。

マンションの一室や一戸建て住宅であれば、売却金額はせいぜい数千万円といったものがほとんどです。ところが、マンションやアパートなどの一棟物件の場合、売却金額は億単位となります。そのためマンションの一室や一戸建てと比較して、売却に失敗したときの損失も大きくなるのです。

ご相談者様のお持ちになっている物件もアパート一棟ということですから、売却先や金額の相場の見積りを誤ると大きなマイナス収支になる恐れがあります。また、一棟物件は売却先が限られてしまうもの。マンション一室・一戸建てならば、居住用として探している一般の方も売却のターゲットになりますが、一棟アパートの場合には収益物件を探している不動産投資家や企業向けになります。

このことから売却先が希望するタイミングで現れないこともありますし、一般的な不動産会社では売却先を探すルートを持っていないこともあるでしょう。思ったような売却が期待できない場合には、売却せずに大規模修繕を行なって、引き続き収益物件として活用するのも一案です。

しかし、老朽化が進んだアパート一棟の修繕費は思いのほか高額になります。一時的に収支がマイナスとなり、資金繰りが苦しくなるかもしれません。余剰資金やほかの不動産の収益などとのバランスを考えて、慎重に判断しましょう。

大規模なリノベーション工事を行うことで、人気物件として返り咲くという道もないわけではありませんが、アパートというスタイルを考えると悩ましいところ。近年、リノベーションによって人気を高めている集合住宅も増えました。空室を解消し、賃料もアップできた事例もあります。

しかし今回、ご相談者様のお持ちになっている物件はアパートとのこと。アパートは投資用不動産としてマンションよりも構造の耐久性の面で劣り、年数を経れば経るほどリノベーションではなく建て替えの必要性が出てきます。

不動産投資としてのアパート経営は、「何もせずに収益を出せる」点がメリットです。しかし出口戦略として売却時に失敗することで、これまでの収支をひっくり返すほどのマイナスが出ることもあります。アパート経営では、最終的に手放す際の収支でプラスに持っていくための計画性が重要です。

アパート一棟の売却価格は不動産会社によって差が大きくなります。

売却時の失敗を防ぐには、アパートをできる限り適正価格で購入してくれる不動産会社を見つけなければなりません。不動産物件の売買価格は、立地や間取り、日当たりなどで一軒一軒異なります。中古物件であれば、さらに老朽化の具合やリノベーションの有無などで大きく変わってくるものです。そのため、一般的な相場を見ただけでは自分の物件の価格を一概に判断できません。

さらに不動産会社ごとで、1つの物件に対して提示する価格も違うでしょう。不動産会社は自社での買い取りや買主を探して売却する仲介でその物件を扱いますが、その価格は自社の基準で査定されています。戸建てが得意な不動産会社、マンションが得意な不動産会社、投資物件が得意な不動産会社など、その会社の得意分野もさまざまです。

まずご相談者様がやるべきは、不動産会社のうち、アパート一棟といった投資物件を多く扱っている不動産会社を探すこと。投資物件は、特に自分や家族の居住を目的とした一般のお客様を相手にしている不動産会社では扱いきれないことがあります。

マンションやアパートなどの投資用不動産を売却するなら、不動産投資家や企業など、限られた買主を探す必要があります。売却先がなければ売れませんし、価格も強気にはつけられません。そのためアパート一棟を売却するには、投資用不動産に強い不動産会社を選ぶことが大切になるのです。

アパート一棟になると売却金額も高額となり、不動産会社の査定額差も大きくなります。もともとの金額が億単位なので、ほんの少しの違いといっても数百万、数千万の誤差になることもあるでしょう。もし仮に、投資物件に弱い不動産会社に任せたとしたら、弱気の金額しか出してもらえず、実績のある不動産会社に出せば高く売れたものを安く手放すことにもなりかねません。

アパート・マンション等は売却による利益確定のタイミングが重要です。

アパートやマンションなど、一棟を売却する際にはタイミングに注意しましょう。不動産の価値は日々変動しており、社会情勢や自然災害、トレンドなどとともに価格も上がったり下がったりします。わざわざ下がったときに手放すのではなく、上がっている状態で売却したいと誰もが考えるはずです。

ご自身のアパートの価格変動を知りたいなら、国土交通省のデータを見ると良いでしょう。「不動産価格指数の公表」にて、アパートやマンションなどの投資用不動産は、店舗やオフィス、工場などとともに「商業用不動産」に分類されています。

不動産価格指数(商業用不動産)の推移

国土交通省による不動産価格指数では、2010年を100%として価格の変動を調査、報告しています。「不動産価格指数(平成30年6月・第2四半期分)の公表」において、2018年第 2 四半期分の全国の商業用不動産総合は 122.7(前四半期:123.6)となりました。2010年からの上昇傾向がうかがえます。

より詳しい分類では、店舗は135.0(前四半期:138.1)、オフィスは132.5(前四半期:136.4)なのに対して、マンション・アパート(一棟)は134.0(前四半期:136.0)と劣らぬ上昇ぶりを見せました。前四半期からすると下がってはいますが、2010年以降マンションやアパート1棟の価格が上昇していることがわかるデータです。

一方でアパート経営自体は、時代や景気の動向を見ると今後ますます難しくなっていく可能性があります。少子高齢化によって需要が減るリスクを持っているにも関わらず、賃貸物件の建築は増加傾向です。これには、節税対策や低金利による融資のハードルが下がったことなどが関係しています。

つまりこれから先、仮に大規模修繕しても空室リスク・家賃が下がらない保証はないということです。魅力的にするためリノベーションする手もありますが、費用も高額で元手を回収するまでに何年もかかります。だからといって、アパート経営を辞めるにしても、解体費用や退去をお願いする費用がかかり、そのせいで赤字を抱えることにもなりかねません。

ご相談者様のアパートは15年が経過しており、これからの修繕では一時的に大赤字になる可能性が高いでしょう。それならば、修繕する前に売ってしまい、収益確定するという選択肢も有力と言えます。商業用不動産の価格がまだ上昇している今、大規模修繕によって高額の資金を失うより売却で、現物件においては安全に収益確定を目指したほうが賢明です。

アパート一棟の売却ではいくつかの査定方法が採られています。

投資用不動産、アパートやマンションの売却・購入時の借り入れなどの際には、その物件の価値を評価することが必要となります。その際に不動産会社が行う評価方法が収益還元法、原価法、取引事例比較法の3つです。

評価方法 内容
原価法 物件の再調達価格から価格を決める
取引比較事例法 近隣の条件の近い物件を参考に決める
収益還元法 得られるであろう収益から価格を決める

原価法は、不動産の再調達原価を元に評価額を決める方法です。その建物を建築、もしくは土地を造成した場合、現時点でいくらになるかを算出します。そこから経年に応じて価格を控除して、現在の価格を査定するというもの。直接法と間接法があり、直接法は物件自体を精査して算出、間接法は近隣の不動産を参考にして原価を算出します。

取引比較事例法は、物件の近隣で条件の似た物件の取引を探して、価格の基準にする方法です。たくさんの事例を集めて、時間や地域、その物件の個別の事情を考慮したうえで評価し、価格を決めます。

収益還元法には直接還元法とDCF法があり、どちらも基本的には将来得られる収益によって価値を決める方法です。

評価方法 計算式 精度
直接還元法 年間家賃収入÷還元利回り×100 低め
DCF法 X年後の合計収益÷(1+年間割引率のx乗) 高め

直接還元法は、一年間の収益を還元利回りで割って価格を算出する方法です。一方DCF法は、その物件を保有している間に得られる合計収益を現在価格に割り戻すというもの。お金の価値は、今手元にあるのと将来手に入るのでは違う、今あれば運用によってさらに価値が高まる、という考えが元になっています。

このように収益還元法で不動産査定をするのは、その収益物件としての価値を適正に計算してもらうのに有効です。不動産会社でも収益物件の価格の計算には、この収益還元法が多く用いられています。とはいえ、収益還元法だけで価格を決定するわけではなく、取引事例比較法なども取り入れて総合的に査定を行うのが一般的です。

収益還元法は売主に有利な方法で、将来価値のため確実性はありません。そのため悪質な不動産会社ならば、想定以上の値をつけてくることもあります。高値で査定をされたことでその不動産会社に依頼を決めても、結局買主がつかず安売りを余儀なくされることもあるため注意が必要です。

複数の不動産会社に査定を依頼するなら、一括査定サイトが便利です。

アパート一棟の売却には、いろいろと難しい面もあります。しかし基本的には、15年という時間を経たご相談者様の物件は、売却も積極的に考えて良いでしょう。ご相談者様が売却を決めたのであれば、次に行うべきはたくさんの不動産会社からより適切な価格をつけ、買主が魅力を感じる売り方をしてくれる不動産会社を選ぶことです。

不動産会社によっては、「とりあえず物件の仲介を請け負う契約だけを交わしてしまおう」と目論むところもあります。また投資用不動産、一棟まるごとのアパート・マンションの売買実績は、どこの不動産会社でもあるものではありません。そのため、まずは実績が豊富で、信頼して投資用不動産を任せられる不動産会社を見つける必要があるのです。

数ある不動産会社のなかから、自分の物件に合うところをピンポイントに探すのはなかなか難しいこと。もし選び方が分からない場合には、一括査定サイトを活用すると良いでしょう。一括査定サイトなら、ひとつのサイト内でいろいろな不動産会社の情報を集められます。

さらに一度の申し込みで、気になるいくつかの不動産会社に対しまとめて査定依頼が可能です。複数の不動産会社に査定ができるため、価格の信憑性が高くなり、その査定を通してアパート一棟に強い不動産会社が見つけやすくなります。

査定のやり取りをするなかで信頼できる不動産会社を見つけても良いですし、複数の見積りを並べてみることで、お持ちの物件の現在の相場を簡単に知るのもよいでしょう。

上述したとおり、アパートの売買はどこの不動産会社も得意としているわけではありません。そのため不動産一括査定サイトを選ぶ際には、大手から中堅どころ、さらに地元密着の会社まで、できるだけ幅広い不動産会社が軒を連ねているサイトを探すことが大切です。

最初は気軽に申し込める机上査定から始め、信用できそうな会社には訪問査定でより厳密な価格を求めてみてはいかがでしょうか?売却となれば大きな金額が動くため、それまでは慎重に行動し、知識不足によって損をすることだけは避けましょう。