名門公立小学校を目指すため学区内に引っ越しを考えています。入学条件を満たすにはいつまでに引っ越せばよいでしょうか?自宅マンションを高く売り、追加の持ち出しはなるべく抑えたいです。
F子さん:女性 31歳 専業主婦
都内IT企業に勤めるご主人とお嬢さん二人の4人家族です。
今回のご相談者は、東京都郊外の八王子にお住いのF子さんです。F子さんは、3歳と5歳になる女の子二人のお母さんです。上のお嬢さんをどうしても都内公立の有名小学校に通わせたく、その学区内への転居を考えています。なるべく早い段階での学区内に住民登録をしたいとのこと。ゆくゆくは、下のお子さんを同じ小学校に通わせることも視野に入れています。この件はご主人も同意していて、現在所有している八王子のマンションを売却して、都内に新しいマンションを購入しようと検討中です。
公立小学校に入るにあたっての引っ越しタイミングや、自宅マンションを高く売る方法、引っ越し後にどのような物件に住むのが現実的かご紹介します。ただしマンションは、売却ではなく賃貸にした方が良い可能性もあるため、その点についても詳しくご説明いたします。
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学区内への引っ越しのタイミングとは?
引っ越しタイミングに決まりはない
公立小学校の入学条件を満たすにあたって、「いつまでに引っ越さなければならない」という決まりはありません。そのため、入学直前の引っ越しとなっても問題ないでしょう。
なお、小学校へ入学する児童は、「就学前検診」を受ける必要があります。自治体によって多少前後しますが、概ね10月の半ばまでには住民登録がある自治体から通知が来て、11月頃に実施されます。
就学時健康診断通知の送付時に居住している学区の学校で健康診断を受けますが、その後別の小学校へ入学する旨を連絡すれば問題ありません。ただし、住民登録の変更時期を伝えなければならないので、引っ越し時期は事前に確定させておく必要があります。また、自治体によっては転居後の学区の学校で就学前検診を受けなければならない場合もあるので、就学前検診前には引っ越しを完了させておくのが一番安心かもしれません。
できるだけ早いタイミングで引っ越した方が良い理由
上記のとおり、「入学条件を満たす」という点だけで考えれば、引っ越し時期はいつでも問題ありません。しかし、できるだけ早く引っ越した方がメリットが多いです。
まず、お子さんが入学後すぐに学業に集中できるという点が大きいです。引っ越し時期を入学直前にしてしまうと、どうしてもバタバタします。引っ越し直後の環境では慣れないことも多く、戸惑ってしまうでしょう。早めに引っ越しを済ませて新しい地域に慣れておけば、入学後はすぐに勉強に集中できるはずです。
また、公立小学校は、原則として保護者が付き添って登下校ということはありません。集団登校となりますから、その登校ルートを事前に確認しておくという意味でも、早めに引っ越しておいた方が安心です。
今回のご相談者F子さんは、もともと東京近郊にお住まいで、ご主人の仕事先も都内ということですから、早めに転居されて入学準備を進めてもデメリットは少ないです。就学前検診も、新しい学区の自治体から通知が来るようにしておいた方が安心でしょう。
学区外の希望の学校へ入学できる「学校選択制」
ここまで、引っ越すことを前提として話を進めてきましたが、現在居住している学区とは別の学区の公立小学校に入学できる、「学校選択制」という制度があります。この制度を使えば、現在の住まいから転居せずに有名公立小学校へ通わせることも可能です。
但し、Fさんの場合は八王子市なのでいずれにしても目的達成のためには引っ越しを覚悟しなければなりませんね。
学校選択制の種類
学校選択制とは、居住地が属する学区の小学校よりも隣接学区の小学校の方が近い場合や、より子供に合った教育を受けさせたいという場合に利用できる制度です。学校選択制には、以下の5種類があり、市区町村ごと採用している制度が異なります。なお、すべて東京都内で実施している市区町村があります。
・自由選択性
市区町村内であれば、どの学校でも自由に選べる制度です。ただし後述しますが、希望の学校に必ず入学できるわけではありません。江東区・渋谷区・足立区などが採用しています。
・ブロック選択制
市区町村をブロックに分けて、ブロック内で自由に学校を選べる制度です。品川区・日野市などが採用しています。
・隣接区域選択制
隣接する区域内の学校を選択できる制度です。港区・新宿区・墨田区などが採用しています。
・特認校制
特認校として定められた学校に入学できる制度です。中央区・青梅市などが採用しています。
・特定地域選択制
特定地域として定められている地域に住んでいれば、周辺地区の学校へ入学できる制度です。国分寺市が採用しています。
学校選択制を採用している市区と実施形態
学校選択制は、東京都内で広く取り入れられている制度ですが、対象となる市区が決まっています。平成29年度時点では以下の通りとなります。
<区部>
区名 | 校種別 | 実施形態 |
千代田区 | 中学校 | 自由選択制 |
中央区 | 小学校 | 特認校制(4校) |
中学校 | 自由選択制 | |
港区 | 小学校 | 隣接区域選択制 |
中学校 | 自由選択制 | |
新宿区 | 小学校 | 隣接区域選択制 |
中学校 | 自由選択制 | |
文京区 | 中学校 | 自由選択制 |
台東区 | 中学校 | 自由選択制 |
墨田区 | 小学校 | 隣接区域選択制 |
中学校 | 自由選択制 | |
江東区 | 小学校 | 自由選択制(原則徒歩30分圏内(約2キロメートル)) |
中学校 | 自由選択制 | |
品川区 | 小学校 | ブロック選択制(区内4ブロック) |
中学校 | 自由選択制 | |
義務教育学校 | 自由選択制 | |
目黒区 | 小学校 | 隣接区域選択制 |
中学校 | ||
渋谷区 | 小学校 | 自由選択制 |
中学校 | ||
豊島区 | 小学校 | 隣接区域選択制 |
中学校 | ||
荒川区 | 小学校 | 隣接区域選択制 |
中学校 | 自由選択制 | |
板橋区 | 小学校 | 隣接区域選択制 |
中学校 | 自由選択制 | |
練馬区 | 中学校 | 自由選択制 |
足立区 | 小学校 | 自由選択制 |
中学校 | ||
江戸川区 | 小学校 | 自由選択制(原則徒歩、概ね1.2キロメートル圏内) |
中学校 | 自由選択制 |
<市部>
市町村名 | 校種別 | 実施形態 |
八王子市 | 小学校 | 隣接区域選択制 |
中学校 | 自由選択制 | |
立川市 | 小学校 | 隣接区域選択制(選択校が、通学区域の学校よりも距離が近い場合) |
中学校 | ||
青梅市 | 小学校 | 特認校制(各1校) |
中学校 | ||
調布市 | 中学校 | 自由選択制 |
町田市 | 小学校 | 隣接区域選択制(1.5キロメートル圏内は、自由選択制) |
中学校 | 自由選択制 | |
日野市 | 小学校 | ブロック選択制(市内8ブロック) |
中学校 | ブロック選択制(市内4ブロック) | |
国分寺市 | 小学校 | 特定地域選択制 |
中学校 | ||
清瀬市 | 中学校 | 自由選択制 |
武蔵村山市 | 中学校 | 自由選択制 |
西東京市 | 小学校 | 自由選択制 |
名門公立小学校と学校選択制
学校選択制がある公立小学校でも、学区内の児童が優先的に入学でき、希望者が多い場合は抽選となります。やはり名門公立小学校に人気が集中するので、学校選択制を使って名門公立小学校への入学を考えている場合、抽選はまぬがれないでしょう。
また、対象市区の小学校でも、独自に学校選択制による受け入れを停止している場合があります。各自治体のホームページで確認できるので、事前にチェックしておくことをおすすめします。
東京の3大公立小学校へ学校選択制で入学させることは難しいかもしれませんが、他の地域では活用できる場合もあります。引っ越し先は下記で解説する「追加の持ち出しを抑えて転居する」という部分にも関係するので、学校選択制の活用も視野に入れながら引っ越し先を検討してみてください。
なるべく少ない出費で新居を手に入れるには?
では次に、追加の持ち出しを抑えながら新居を手に入れる方法について考えて行きましょう。
引っ越し後はどのような物件に住むべきか
Fさんは「自宅マンションを高く売り、追加の持ち出しはなるべく抑えたい」とお考えです。Fさんが現在お住まいのマンションは以下のとおりです。
場所:八王子市 私鉄沿線駅から徒歩7分
築年数:6年
購入時価格:3980万
間取り:3LDK+S 90m2
お子さんが生まれる前に購入しており、購入当初はDINKSとして共働きをしていたそうです。そのため、住宅ローン返済はかなり進んでいる状況とのこと。
F子さんが現在お住いのマンションは、八王子市にあります。23区ではありませんが、八王子市はベッドタウンとしてかなり人気のエリアです。2020年に開催される東京オリンピックの影響もあり、東京都のマンション価格は全体的にかなり上昇しています。八王子市も例外ではなく、6年たった現段階でも物件価格が落ち込んでいません。そのため売却すれば、住宅ローン残高を完済しても少し現金が手元に残る計算となります。
全国的に有名な公立小学校の学区がある「千代田区」「港区」を転居先と仮定して考えてみましょう。これらはかなりのハイスペック地区となるため、現在と同じような築年数、間取りのマンションを手に入れようと思ったら、1億円は優に超えてきます。しかし、築年数、間取りを妥協すれば、まったく手に入らないということもありません。たとえば、2LDKや3DKで4,000万円台の物件も販売されています。
また、千代田区、港区は、公共交通機関が非常に発達しているので、多少駅から離れていても不便は感じないでしょう。生活にはマイカーが必要ないため、これまでの維持費(駐車場代、マイカーローン、税金、ガソリン代など)や、車の売却で得たお金を住居費に充てることができます。
これらを考慮すると、できれば60m2までに広さを抑えて、築年数も20年以上のものから探せば、持ち出しはかなり少なく済むはずです。
不動産一括サイトで住まいを査定してみよう
上記は概算となるため、実際の売却額を知るためにも、一度不動産一括査定サイトでお住まいのマンションを査定してもらうのがおすすめです。不動産一括査定サイトを利用すると、複数社からの査定額の回答が送られてきます。F子さんの場合、転居に伴う費用をできるだけ抑えたいということですから、一番高い査定額をつけてくれた不動産会社とやり取りを始めた方が、無駄な時間を費やす必要がないと思われます。
今回のケースでは引っ越しまでの期間もある程度決まっているため、スピーディーにマンションの売却と購入をする必要があります。不動産屋に直接出向いて査定、売却、購入をお願いするよりも、不動産一括査定サイトを利用したほうが効率的です。
金額が見合う不動産会社が見つかれば、売却するマンションだけでなく、次に引っ越すエリアについても相談することができます。不動産会社の方で売却可能金額を把握していますから、次に購入するマンションも予算内で探してくれるでしょう。
売却だけでなく賃貸も検討してみよう
現在所有している八王子のマンションを賃貸に出して、新しい転居先の賃貸マンションに住むという選択肢もあります。不動産を手放すことなく、家賃収入を得る方法です。
八王子マンションも比較的駅から近い物件ですから、賃貸に出しても十分賃借人を見つけることができます。条件から考えて、家賃相場は月15万以上は堅いはずです。これに加えてマイカー維持費を家賃に充てれば、少し狭くはなりますが港区、千代田区でも賃貸物件を探すことができるでしょう。ちなみに、港区の賃貸であれば、60m2の2LDKで20万円程度で住める物件も多数存在します。
また、途中で賃借人をつけたまま投資物件としても売却することも可能です。その場合、売却するまでは家賃収入が、売却したら売却代金が入ってきます。その現金で新しくマンションを購入することもできるでしょう。
そのほか、賃貸にしておけば、子供たちが大学進学などで家を離れた後に、夫婦で八王子に戻ることもできます。年齢を重ねて居住環境の好みが変わることも十分考えられるので、選択肢をいくつか持っておけるのは大きなメリットです。売却だけでなく賃貸も考慮して、最適な方法を検討してください。
まずは不動産の相場を把握することが大切
売却するにせよ賃貸に出すにせよ、自己所有不動産を活用するなら、まずは価値と相場を知ることが重要です。現在東京都では、10年前に購入した不動産も、購入時とほとんど変わらない価格で売却が可能となっています。ただし、正確な価値を把握するには、そのマンションの施工会社、設備、環境など、細かい条件まで確認する必要があります。
不動産屋に出向く前に相場を確認しよう
上記のとおり、不動産一括査定サイトであらかじめ物件の相場をつかんできましょう。東京都のマンションはかなり資産価値が高くなっているため、最寄りの不動産会社に相談してもすぐに買い手がつくと考えられます。しかし、個人の方は不動産取引の経験値の低さがネックになります。
不動産投資を生業にしている人でない限り、不動産取引をする機会は一生に何度もあるものではありません。そのため、不動産業者に言われたことが正しいと思いがちです。しかし、まったく知識がない状態で不動産業者とやり取りをすると、向こうのペースに飲まれて、不本意な取引に終わってしまったということにもなりかねません。たとえば今回のケースと同様、本来は賃貸として利用するという選択肢もあるはずなのに、強く売却を勧められたため深く考えずに売却に踏み切ってしまうという可能性もあります。そうならないためにも、事前に不動産の適正価格を把握しておきましょう。
不動産一括査定サイトは、5分程度で所有不動産の条件登録が完了しますし、自宅にいながら査定してもらえるのもメリットです。
不動産一括査定サイトでは売却、購入、賃貸、管理などあらゆる相談ができる
不動産一括査定サイトは、売却の価格だけでなく、賃貸に出した場合の家賃収入についても査定してくれるものがあります。さまざまな可能性を考慮しながら活用できるのが大きなメリットです。
また不動産一括査定とは言え、実際にやり取りをするのは各不動産業者の担当者です。今回のF子さんの場合、売却、購入、賃貸、そして自宅を賃貸に出す場合は管理もしてもらう可能性もあります。このようなケースで、自分の不動産の活用方法を相談できるのは心強いはずです。
一度不動産一括査定サイトを利用してみましょう。
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田中 真作
このページの補足コメント
築年数5~10年程度の築浅物件は、売却しやすく高値がつきやすいものです。
しかし築年数が10年前後の住宅ということはローンがかなり残っているということ。
今の住まいがローン残債よりも高い値段で売れるなら問題ないのですが、ほとんどの場合、売れてもローン残債が残ってしまうことが多いのです。
引っ越し先の新居でもローンを組むとしたら、二重ローンや住み替えローンを組まなければなりません。その場合審査が通りにくくなるので注意が必要です。