相続後、不動産一括査定サイトや近所の不動産会社などで売却を何度も試しましたが、田舎の山奥の土地で築50年と古すぎて買い手がまったく見つかりませんでした。持っていても税金など費用がかかるため、処分する方法はありませんか?
ご相談者様のご実家は、もともとお母様がご自身の名義でお住まいになっていたものの、お亡くなりになってご相談者様が相続されたとのこと。しかし鳥取県の田舎の山奥で、誰も住まず使い道もないため、売却を試みるものの上手くいかないとのご相談です。
不動産業界では、法律で定められた法定耐用年数(※1)を基準のひとつとして価値を算出しています。そしてこの法定耐用年数は、木造の居住用建物の耐用年数では22年、鉄骨・鉄骨鉄筋コンクリート造りの建物では47年です。
そのためご相談者様の鳥取県のご実家が、木造・鉄筋コンクリート造りの如何にかかわらず、築50年ではほぼ無価値と査定されてしまうのは無理もありません。さらに50年前の建物は現行の耐震基準に対応していないことも多く、さらに売れにくい物件となってしまうでしょう。
また、一度相続された不動産について所有権を放棄することも実質できず、ご相談者様が持て余しておられるのもうなずけます。使用しない不動産を所有し続けていると、ご相談者様がおっしゃるように固定資産税などの税金もかかり、できるだけ素早く手放したいもの。不動産としては無価値になってしまった建物および土地について、買い手はなかなかつきにくいものですが、まったく売れないというわけでもありません。
※1 法定耐用年数:年数を経るごとに減少する減価償却資産の価値を具体的に示し、減価償却費から税額を計算するために税法によって定められた耐用年数。居住用不動産においては、建物の基礎を構成する建材によって耐用年数が異なる。
無価値になった不動産を処分するには、いくつか方法があります
まずは不動産会社に仲介ではなく「買取」をお願いしてみてはいかがでしょうか。買取という形であれば不動産会社が買主となり、個人の買主を探す必要がなくスムーズに物件を手放すことが可能です。また、仲介と違って不動産会社に支払う仲介手数料も発生しません。所有権移転登記などの手続きも不動産会社が行ってくれるため、ご相談者様の負担はかなり軽くなるでしょう。
ただしこの場合、不動産会社は物件の管理や売却活動を自ら行うリスクを負うことから、かなり安く買いたたかれるケースがほとんどです。ましてやご相談者様のご実家は立地的にも需要が少ないと考えられ、不動産会社が買取を渋るかもしれません。
ひとまず不動産一括査定サイトで買取を選択できるものを探し、簡易査定を受けてみてください。そして不動産会社の査定額や対応をもとに、ご相談者様が納得できる条件を提示した会社があれば買取をお願いしてみることをおすすめします。
もし、不動産一括査定サイトでも買取を行ってくれる不動産会社が見つからない場合は、ちょっと視点を変えて売却の方法を考えてみましょう。たとえば、「古屋付き土地」として売却することです。
古屋付き土地は、「無価値になってしまった建物がついている土地」という意味で、建物よりも土地として分類されます。つまり古屋付き土地として販売することで、土地を必要としている買主がつく可能性があるのです。
その土地に建っている古屋をどのように使うかは買主の自由であり、解体して新築の家を建てる・リノベーションを行うなどの選択肢があるでしょう。このため建物が古かったとしても、あえて古屋付き土地を購入する方は少なくありません。
また近年では、あえて住宅の古さをレトロなイメージととらえて、風情を残しながらリノベーションして住む動きが流行しています。都会の暮らしから離れてスローライフを満喫するべく、あえて田舎に移り住む人も増えているのです。これらの点を考慮すれば、古屋や田舎暮らしをアピールポイントとして売却活動を行うという発想の切り替えもできます。
そのほか、住宅が数十年建てられていた土地は、すでに地盤ができあがっていることもアピールポイントのひとつになるでしょう。もともと住宅でなく畑などとして利用されていた土地は地盤が緩く、住宅を建てるには地盤改良を行う必要があります。しかし、住宅がすでに建つ土地はしっかりとした地盤を持っていると考えられ、解体後に新築するにしてもリノベーションするにしても、安心感を与えられるはずです。
今までマイナスと思っていた点をアピールポイントとして売却活動を行うには、不動産会社と広告内容について相談してみましょう。特に、人口減少が進んでいる鳥取県の地域に密着した不動産会社であれば、自治体が移住者を呼び込むことに力を入れているため、その動きにも積極的だと考えられます。ご相談者様が古屋付き土地として販売すると提案すれば、快く受け入れられるのではないでしょうか?不動産一括査定サイトを利用するときは、その旨を備考欄に記入すれば不動産会社が考慮にしてくれます。
古屋付き土地で売却する場合、ご相談者様に費用負担が発生するケースもあります
ちなみに古屋付き土地として販売する場合には、売主が建物を解体して更地にすることを選択肢として提示するパターンもあります。家があるままの状態か、更地で引き渡すかは買主の選択に任せるということです。
もし更地として引き渡すことになれば、ご相談者様に解体費用の負担がかかるため、その費用分は土地の価格から差し引くことになります。家があるままで引き渡す際にも、買主がリノベーション費用を負担することから、売却価格は周辺の市場相場よりも割り引かれるのが通例です。いずれにしろ安めの価格で物件を販売することになりますが、中古住宅としてまったく売れない状態で放置するよりは有益でしょう。
もうひとつ更地にして引き渡す際の注意点として、前の建物の基礎や浄化槽など使用しない埋設物があった場合、売主たるご相談者様の負担で撤去しなければなりません。ご相談者様がこの埋設物について知らず、買主にも伝えないまま売却したとしても、売主には瑕疵担保責任(※2)が課せられます。つまりご相談者様自ら撤去する必要があるのです。
このため更地にした際には、地中レーダーやボーリングなどの手法で埋設物が残っているかどうかの調査をおすすめします。これらの調査にも数十万円程度の費用がかかるため、住宅の解体費用などと照らし合わせて土地の売却価格を決めるようにしてください。
上記の説明を踏まえると、ご相談者様のご実家を処分するにあたって売却する方法はいくつかありますが、いずれの場合も不動産会社の協力は不可欠です。信頼できる不動産会社を選ぶことが、大きなポイントになるでしょう。
前述のように、鳥取県の田舎の山奥の物件を売却するには、鳥取県の実情に詳しい地元密着の不動産会社に依頼するのがベター。自治体の方針として移住者の受け入れに積極的であること、また山奥の立地であることも考慮して、適切な価格設定や売却活動を行ってくれるはずです。
そのように親身になって売却活動を行ってくれる不動産会社を探すには、不動産一括査定サイトが便利です。不動産一括査定サイトごとに、買取査定の有無や対応地域の広さなど機能がそれぞれ異なります。なかでも買取査定を行っているもの、鳥取県の山間部までフォローしているものを選んでみてください。
買取査定を行っていれば、手早く物件を処分することにつながります。また、ご相談者様のご実家がある地域をフォローしている不動産会社であれば、地域の事情に精通している可能性が高いでしょう。
もうひとつ不動産一括査定サイトを利用するコツとして、複数の不動産会社から査定を受けて比較すれば、適切な市場相場がわかります。よりよい条件で物件を売却できる不動産会社を見つけやすくなるでしょう。不動産一括査定サイトを賢く利用して不動産会社を選び、どのような売却方法を採るかよく相談してみてください。
売却する以外にも、寄付という形で物件を処分する方法があります
上記まではご相談者様のご実家を処分する方法として、売却を想定し説明してきました。しかし物件の条件を考えると、必ず売れるという保証は残念ながらありません。そこで覚えておきたいのが、物件を処分する方法は売却だけではないということです。
たとえば、自治体や個人などに物件を寄付するという手段もあります。もちろん、寄付ですからそこに金銭のやりとりは発生しません。ご相談者様は売却額を手にすることなく、第三者に物件を譲ることになります。もしご相談者様が金額にこだわらず、とにかくご実家を処分されたいということであれば、寄付することも選択肢に入れてみてはいかがでしょうか?
鳥取県の山奥の物件を手に入れることでメリットを見出す相手先が見つかれば、今まで使われていなかった物件を活かすことにもなり、社会貢献することができます。ただし寄付先によっては注意したい点もあるので、それぞれに紹介しておきます。
まずは、その地域にお住まいになっている近隣の方に寄付する方法です。特にお隣さんであれば、もしかすると建物を離れや物置として利用したり、建物を解体して家庭菜園としたりといった用途を見出してくれるかもしれません。一度相談を持ち掛けてみるのも悪くないでしょう。
この場合に注意したいのは、贈与税の存在です。贈与税とは財産を贈与される側に発生する税金で、その財産の価額ごとに税率が定められています。ご相談者様の不動産は財産とみなされ、寄付を受けた近隣の方に贈与税が課せられるのです。また、個人の方に寄付するときには所有権移転登記を行う必要があり、その費用は贈与(寄付)される側の負担となります。
ただし贈与税については、財産の価額のうち110万円の基礎控除が適用されるため、物件の不動産価値が110万円以内であれば贈与税はかかりません。なかなか売れない物件であれば、そう高額な価値がつくわけではないため贈与税はかからない、もしくはかかっても少額である可能性が高いでしょう。もし近隣の方への寄付を検討されるなら、不動産一括査定サイトでおおよその物件の価額を調べておくことをおすすめします。
贈与税と所有権移転登記については、近隣の方と相談してよく話し合ってみてください。それでも物件が欲しいと言ってくださる方がいれば、贈与契約書を作成したうえで寄付しましょう。贈与契約書を作成するのは、個人間のトラブルが起きたときに対応できるようにするためです。
近隣の個人の方に寄付する際の贈与税が気になるということであれば、ご実家が所属する町内会など小さな団体に寄付するのも一案です。一般的な営利団体に不動産を寄付する場合、寄付する側は譲渡所得が得られないにもかかわらず、寄付する側が譲渡所得税を負担すると所得税法で定められています。
これではご相談者様が不利になってしまいますが、町内会が市や町の認可地縁団体として公益性のある法人となっている場合、譲渡所得税を免除されるのです。町内会であれば地域の寄り合い所などといった用途で、近隣の方の役に立つ利用方法を見出してくれるかもしれません。
そのほか、市町村クラスの自治体に寄付をする方法もあります。その場合にはまず役場に相談し、受け入れてもらえるかどうかを確認してみましょう。自治体も、使用目的を見出せない物件に手を出すことは少なく、場合によっては断られる可能性もあります。しかし思わぬ活用方法が見つかる可能性もありますので、相談して損はありません。
紹介した方法のなかから、納得のうえで物件を処分できる方法を選んでみてください
売却ベース | 1.不動産会社に買取を依頼する 2.古屋付き土地として売却する |
寄付ベース | 1. 近隣の方に寄付する 2.町内会など小さな団体に寄付する |
今回説明した方法は、大まかに「売却(買取)」と「寄付」に分けられます。このどちらを選ぶかは、ご相談者様がご実家の処分について何を優先なさるかで決まるでしょう。ご質問を見る限り、少しでも早く処分したいとお見受けしました。そうであれば不動産会社に買取を依頼する方法、しかるべきところに寄付をする方法のいずれかがおすすめです。
しかし、ご実家の条件では不動産会社に買取を断られる場合もあり、寄付は贈与税や譲渡所得税の関係で話し合いが頓挫することも予想されます。このようなリスクを避け、さらに売却額もいくらかは手にしたいということであれば、古屋付き土地として売り出すなど建物ではなく土地に付加価値をつける形で売却に出しましょう。
この場合、すぐに処分できない可能性もありますが、都市部からの移住者などを見つけられれば売却できる確率は高くなるはずです。ご相談者様のご実家が負担にならないよう、上手に処分できることをお祈りしております。