私は千葉県の一軒家に住んでいます。ニュータウンとして有名な街ではありませんが、都心への通勤もできますし、周りの環境も良いし、買い物などの生活環境も不便さは感じません。若い頃に子育てにもってこいだ と気に入って購入しました。
最近、嫁いだ娘から「うちの近所に引っ越して来ない? 子供もの面倒も見て欲しいし。」と連絡がありまして、2人の子供も独立して戻ってくることもないので、家を売って引っ越そうかなと思い、少し検索して見ましたら、「郊外(田舎)の一戸建ては売れない」とか「郊外(田舎)の土地は売れてない」などが出てくるので不安になりました。
私のような、少し田舎の一軒家は本当に売れないのでしょか?
また、売る場合は、どうしたら良いのでしょうか?
今回のご質問者様のご相談内容は、
- 郊外(田舎)の一戸建ては売れないのか?
- 郊外(田舎)の一戸建てを売るにはどうしたら良いのか?
の2点になります。
かつて「郊外の庭付き一戸建て」はサラリーマンの憧れでしたね。
きっとあなたは、「子供達に自然と触れ合う環境を与えたい」という思いで購入され、ご自身は長時間の通勤にも住宅ローンの返済にも耐えてこられたのでしょう。
筆者も少しインターネットを覗いてみました。
すると、『郊外・庭付きの実家が「迷惑資産」になるワケ』東洋経済オンラインや、『郊外住宅は20キロ圏内でないと売れない 「老後は郊外に一戸建て。のんびり畑仕事」は幻想 』J-CASTニュース 等 なかなか刺激的な記事があがっています。「1億円超で買ったが今や2000万円台に」という横浜の事例が取り上げらていました。
これから業界経験20年以上の筆者が順次解説していきます。
確かに、かつてのドーナツ化現象(都心部の人口が減少し、郊外の人口が増加する現象)から都心回帰(都心部の居住人口が回復する現象)へと世の中の流れは変わってきています。都心のマンションに比べれば、郊外(田舎)の一戸建ては売れにくい状況です。
しかし、あなたの物件(持ち家)は、工業製品のように大量に売れなくても良いのです。
あなたの物件を購入したい人は一人いれば十分です。
この記事に登場する専門家
菅 正秀
宅地建物取引士、マンション管理士、住宅ローンアドバイザー、福祉住環境コーディネーター。
大阪府大阪市生まれ。大学卒業後、弁護士事務所に勤務、宅地建物取引士資格取得を契機に大手不動産会社に転じる。法律知識を活用し中古住宅、中古マンションの仲介営業を担当。ステレオタイプの不動産会社のイメージを払拭して、顧客と不動産会社が健全なパートナーシップを結べる一助なるコンテンツ作成を心がけている。
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郊外(田舎)の一戸建てを売却するのが難しい理由とは
住宅市場の環境が変わった
人口減少と高齢化が、都心と郊外の住宅市場の環境を変えました。
あなたも、以前は東京に通うサラリーマンの家庭が多く街は活気に満ちていたが、ここ最近は周りに空き家が増えたり、住んでいるのは高齢者ばかりだと思いませんか?
逆に、東京の中央区は人口が驚くほどに回復しているようです。月島や晴海などの工場・倉庫街がマンション群に変わったのがその理由。
このように、バブル崩壊後の1990年代後半以降、都心での住宅供給が圧倒的増え、買い手の主力である今の若い人たちは郊外の住宅に魅力を感じなくなったのです。
中古の一戸建ては、買主にとって多くの不安がつきまとう
その上、もともと一戸建てはマンションより売れにくいものです。
売りに出してから売れるまでの期間をみると違いがはっきりわかります。
マンション | 平均6ヶ月 |
一戸建て | 平均11ヶ月 |
上記は、不動産ポータルサイトを運営しているアットホーム株式会社が、5年以内に首都圏(1都3県)の自宅を「売却した人」と295名と中古住宅を「購入した人」386名に、実施したアンケート調査の結果になります。
(出典:アットホーム株式会社 「中古物件の“売り手”と“買い手”のキモチ調査」より)
中古の一戸建ては、中古マンションと比べると購入を決定するまでにクリアしなければならない項目が多数あるからです。
中古一戸建て購入で、買主の検討項目
- 違法建築がないか
- 建て替えが可能か
- 建物の構造
- 耐震性
- 建物の不具合・瑕疵
- 土地の境界が明確か、越境していないか
一戸建ては、所有者が単独で容易に増築・改築ができるのため、当初は建築法規に合致していても、売却するときは違法建築になっている場合があります。
建物の前面道路が、公道なのか私道なのか、道路の幅はどれくらいか、物件は道路に何メートル接しているのかによって、将来の建て替えや水道・ガスの設備工事に影響してきます。
一戸建ては、木造、軽量鉄骨造、重量鉄骨造、鉄筋コンクリート造と種類がありますし、工法も軸組工法、ツーバイフォー工法、丸太組工法(ログハウス)等 豊富です。
どのような違いがあり、どれを選べば良いのか迷います。
マンションの場合は、購入対象の部屋自体の良し悪しを検討すれば概ねOKです。
これに対し一戸建ては、建物の内部だけでなく外装、屋根の状態、床下の状況までチェックしなければ安心できません。
マンションは所有者全員で作っている「管理組合」が共用部分の状態を管理し、不具合があれば修繕積立金で修理します。
一戸建ての場合は、所有者自らが管理し、修理の費用を負担しなければならないからです。
具体的には、雨漏りやシロアリの被害等のことです。所有者が住んでいてもわからないこともあります。いざ購入した後からわかることもあるのです。むずかしい言葉(法律用語)でいうと「瑕疵」(かし)といいます。
建物の瑕疵が問題になる項目
- 雨漏り
- 構造主要部の木部の腐蝕
- 給排水管の故障
- シロアリ被害
- 軟弱な地盤・不同沈下
- 土壌汚染
- 地中埋設物
そして、隣の人とは地続きですので、その境界線がはっきりしているのか、隣の人とはトラブルがないのかも重要な関心事です。
このような疑問・不安があるため、郊外の一戸建ては売りにくいのです。
郊外(田舎)でも売却できる家とは
売りにくい郊外(田舎)の一戸建ての中でも売れる住宅とは、どのような物でしょうか?
買主を安心させる資料があること
あなたの手元に、下記の書類はありますか?
地積測量図 | 土地の面積や形を示す図面 |
---|---|
境界確認書 | 隣接の土地と自分の土地の境界を合意をした書類 |
建築確認済証・検査済証 | 建築基準法に合致した建物である証明書類 |
建設設計図書・工事記録書 | 注文建築の物件の場合 設計・工事の実施内容を記録した書類 |
リフォーム・メンテナンス履歴 | リフォームしたり、修理をした工事の記録 |
これらの書類があると、買主さんの不安が大きく解消されます。
- 「地積測量図・境界確認書」は土地の境界がはっきりしている証明。
- 「建築確認証・検査済証」は違法建築物でない証明。
- 「建設設計図書・工事記録」は欠陥住宅でない証明。
- 「リフォーム・メンテナンス履歴」は、あなたご自身でまとめる必要がありますが、これまで大切に使ってきた証明になります。特に外壁改修工事には10年の保証があることが一般的で、買主さんの安心材料になります。
ぜひ探してみてください。
国土交通省の新設制度も活用しょう
また、国土交通省も、
既存住宅の流通促進に向けて、「不安」「汚い」「わからない」といった従来のいわゆる「中古住宅」のマイナスイメージを払拭し、「住みたい」「買いたい」既存住宅を選択できる環境の整備を図る
ことを目的に
を相次いで創設・発表しています。
ホームインスペクション(住宅診断)とは
『住宅に精通したホームインスペクター(住宅診断士)が、第三者的な立場から、また専門家の見地から、住宅の劣化状況、欠陥の有無、改修すべき箇所やその時期、おおよその費用などを見きわめ、アドバイスを行なう専門業務』(NPO法人 日本ホームインスペクーズ協会より)のことです。
国土交通省は、このホームインスペクションの普及と各業者の技術レベルの標準化のために「ガイドライン」を設けました。
ホームインスペクションの費用は概ね4〜5万円程度で、売主、買主どちらでも依頼できます。
宅建物取引業法が改正され、媒介契約時又は売買契約締結時にホームインスペクションの説明をし、実施するかどうか売主、買主に確認しなければならなくなりました。
また、ホームインスペクションと前述の瑕疵に対する保証がセットになった「既存住宅売買瑕疵保険」という売主には嬉しい商品もあります。不動産会社によっては媒介契約の特典として、無料でつけてくれる会社もあります。
「安心R住宅」とは、
耐震性があり、インスペクション(建物状況調査等)が行われた住宅であって、リフォーム等について情報提供が行われる既存住宅をいいます。
一般社団法人 優良ストック住宅推進協議会 より
この「安心R住宅」の認定を受けると、物件資料に安心R住宅のマークがつき、他の物件と差別化できますが、まだまだ普及されておらず認知度は低いです。
不動産一括査定サイトで一戸建てに精通した不動産会社を探そう
不動産一括査定サイトとは
不動産一括査定サイトは、売ろうかなと思っている一戸建ての情報をスマホやパソコンで入力するだけで、無料で、複数の不動産会社に査定(売却予想価格)を出してもらうことができるサービスです。
不動産一括査定サイトには、大手だけでなく、中堅、地域密着の会社まで数多く査定可能な会社として掲載されています。そして、あなたの情報を入力していくと、あなたの条件に合う不動産会社をピックアップしてくれます。
あなたはその中から、5~10社(選べる会社の数はサイトによって異なります)を選んで送信ボタンを押すだけで、一瞬で選んだ会社全部に査定依頼ができてしまうのです。非常に便利なサービスですよね。
このサービスを使って、郊外(田舎)の一戸建ての仲介に精通し、あなたの物件の売却を優先して活動してくれる不動産会社を探すのです。
郊外(田舎)の一戸建てに強い不動産会社を見つけるための利用法
郊外(田舎)の一戸建ての仲介に精通した信頼できる不動産会社かどうか見極めるには、次の3つの基準で選んでください。
②あなたの物件の所在地のエリアで一戸建ての仲介実績があるか
③あなたの不安や疑問に対する不動産会社の担当者の対応がよいか
3つの基準を試す不動産一括査定サイトの利用法は、2ステップで審査することです。
ステップ1:不動産一括査定サイトで査定依頼するときに、査定方法を「机上査定」にします。
これは、候補の不動産会社といきなり面談せずに「査定書」を提出してもらうためです。
各社の「査定書」をよく読んで、あなたが納得できる根拠になっているかどうかで判断してください。また、「査定書」を読んで浮かんできた疑問点はメモしておきましょう。次のステップで使います。
ステップ2:「査定書」の内容から良さそうな不動産会社3社を選び、面談します。
3社を選ぶのは、一度に4社以上に合うと混乱して誰が良かったか分からなくなるからです。
各社の担当者の説明を聞くだけでなく、あなたからも積極的に質問しましょう。
- 近隣で一戸建ての仲介実績があるかどうか?
- あなたの物件をどのようにして売ろうと考えているか?
- 「査定書」を読んで浮かんだ疑問
この3つは必ず聞いてください。
ポイントは、大手・中堅・地域密着の会社の話も聞くことです。
②一番高い査定金額の会社が一番ではない。
そして、あなたご自身のフィーリングを大事にすることです。
一戸建ての売却には、前述のように1年近くかかる場合もあります。その間には、不動産会社の担当者と何度も接触しなければなりません。あなたのフィーリングに合う人でなければ、うまく二人三脚のパートナーシップが組めません。
あなたにお勧めの不動産一括査定サイト3選
現在、不動産一括査定サイトと呼ばれるものは、筆者が知っているだけでも30サイトを超えます。当サイトでは、その中で有名なものについて詳細な紹介記事を掲載していますので、是非参考にしてください。
選んだ基準は、サイト運営会社の信用度、掲載企業の数と種類です。
①すまいvalue(すまいバリュー)
このサイトは、住友不動産販売、三井のリハウス、東急リバブルの業界トップ3を含む大手6社が共同運営する不動産一括査定サイトになります。
これらの超大手の不動産会社は、全国に店舗を持っていますので、あなたの一戸建てがある地域を営業エリアとしている可能性があることから外せません。
ご利用にあたっては、このサイトと次にご紹介する2サイトのどちらかと併用してください。
理由は、大手・中堅・地域密着の会社の話をまんべんなく聞いて欲しいからです。
②HOME4U(ホームフォーユー)
このサイトは、NTTデータグループが運営しており、2001年開設の日本初の不動産一括査定サイトになります。
運営実績が長く、掲載不動産会社の審査が厳しいことで有名です。掲載企業も1300社あり数としても申し分ありません。大手・中堅・地域密着の全ての種類の不動産会社が参加しています。
ご利用にあたっては、前述の「すまいvalue」と併用されることをお勧めします。
③HOME’S売却査定(ホームズ売却査定)
「HOME’S」といえば賃貸で有名な不動産物件ポータルサイトです。
現在では、住宅購入・注文住宅、リフォーム・リノベーションから不動産投資まで幅広く扱う総合不動産情報ポータルサイトになっています。その中で不動産一括査定サービスも提供しているのです。
運営しているのは、東証一部上場企業の株式会社LIFULLになります。提携企業数も1700社を超え、日本最大級を誇っています。
不動産ポータルサイトを運営している関係で、幅広い不動産会社との繋がりがありますので、大手・中堅・地域密着の全ての種類の不動産会社が参加しています。
ご利用にあたっては、前述の「すまいvalue」と併用されることをお勧めします。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
郊外(田舎)の一戸建てが、売れにくい状況になっていることの原因についてお伝えしました。郊外から都心へという社会の流れと住宅市場の変化によるもでした。
それでも、国(国土交通省)は中古住宅の流通促進を目的とする施策を打ち出しています。
このような状況を把握し、郊外(田舎)の一戸建ての仲介に精通した不動産会社をパートナーにすることが、あなたの不動産売却の成功には必要不可欠です。
不動産一括査定サイトを上手に活用して、あなたの大切な資産である住宅の売却を成功させてください。
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家を売却する上での流れや注意点などをわかりやすく徹底解説していますので、家の売却(不動産売却)についてまだよくわからないという方はぜひ目を通してみてください。
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