不動産査定は車の下取り同様、実際に買い取ってくれる価格なのでしょうか?それとも違うのでしょうか?インターネットで色々な情報がありよくわかりません。
今回のご質問は、不動産の査定額に関するご質問です。今回のご質問者様のように、査定額をそのまま現金として受け取れるのかどうか疑問をもたれたのでしょう。不動産査定額には、主に「買取」と「仲介」の2種類があり、どちらの方法で不動産会社が査定額を提示しているのかを確認する必要があります。
不動産売却方法には、「買取」と「仲介」があり、買取の場合は査定額=買取価格となりますが、仲介の場合は査定額=売却予想額になり、あくまでこれから不動産を売りに出す価格です。この価格なら買い手がつく可能性があるという期待を込めた最高値の売却予想価格ということになります。
買取とは
買取とは、不動産会社に不動産を直接買い取ってもらう方法です。買取を行っている不動産会社が不動産査定額を提示した場合には、「査定額=買取価格」ということになるため、提示された価格で確実に買い取ってもらえます。
また、買取には「即時買取」と「買取保証」の2種類があります。即時買取とは、査定後すぐに不動産会社に買い取ってもらえます。成約までが早いので、すぐに現金化したい時などに有効です。一方買取保証は、一定期間「仲介」で売りに出し、期間中に売れなかった場合は不動産会社に買い取ってもらえるという方法です。ご自身の都合などで、売却までの期間に期限がある場合に有効です。
仲介とは
不動産会社が買主と売主の間を取り持つ方法です。売れない可能性もありますが、買取よりも高く売れることが魅力です。ただし、売り出し方やタイミングなどによって、買取とそれほど変わらないこともあります。売却までの期限がない場合に有効です。
仲介手数料3%を踏まえて、買取が得か?それとも仲介か得か?それぞれの査定額を見比べてみましょう。きっと見方が変わってきますよ。
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仲介が得か、買取が得か?
仲介と買取、それぞれのメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット | |
買取 | ・現金化までが早い ・仲介手数料が必要ない |
・仲介よりも売却価格が安くなりやすい |
仲介 | ・買取よりも高額で売却できる可能性が高い | ・仲介手数料の支払いが必要 ・売却までに時間がかかる |
不動産売買は仲介が一般的でしたが、最近は買取も増えてきました。仲介で不動産を売却する場合、価格は高めになりますが、現金を手に入れるのにかなりの期間を要します。一方で買取は、買い手を探す必要がないためすぐに現金が手に入ります。早いところだと、査定から一週間以内に決済が完了するケースもあります。これは買取で不動産を売却することの大きなメリットと言えます。
では、買取と仲介、どちらで不動産売却をするのが得なのでしょうか?一般的には仲介ですが、所有している不動産や売却のタイミングにより変わってきてしまいます。
住宅ローンの残高がかなり残っており、「早く債務を返済したい」「現金が手元に必要だ」といった場合には、買取も選択肢として有効です。また、築年数がある程度経っている物件は売れにくいため、買取で素早く現金にした方が良いかもしれません。
一方、住宅ローンを完済して次の新居も用意されている状況なら、仲介でじっくり時間をかけて売却することもできます。条件の良い物件は早期に売れる可能性が高いため、築浅で駅から近い場合は仲介を選んだ方がもちろん良いでしょう。
仲介取引で売却価格が安くなってしまう例
上記のとおり、仲介での不動産取引は査定額通りに売却できるとは限りません。仲介での不動産取引は、売主、不動産会社の担当者、買主と最低3者が関わることになります。それぞれの利害がぶつかるので、売却希望価格から大きく下がってしまう場合があるのです。
買主からの値引き交渉
買主はできるだけ安く買いたいと考えます。したがって、値引き交渉を掛けてくることも多いです。もちろん値引き交渉は断っても問題ありません。しかし、「絶対に買ってくれる」という人がその後現れる保証もないため、売り出してからの期間も考えて値引き交渉に応じる場合も多いです。
売り出しの長期化
相場よりも高い金額で売り出していたり、単純に不動産会社の販売能力が低かったりすると、売り出しが長期化する可能性があります。売りに出しをしている間も固定資産税やメンテナンス費がかかるため、ランニングコストを考えて売主も値引き交渉に応じやすくなってしまうのです。また、時間が経てば経つほど資産価値は下がっていくため、自発的に値下げをしなければならない可能性もあります。最終的に、売却予想額から大幅に下がるようなケースも少なくありません。
まずは不動産の価値を把握しよう
今回のご質問者様のケースでは、買取であれば査定額=買取価格になり、仲介であればあくまで売却予想価格になります。すぐに現金化をしなければならないという事情がなければ、仲介で不動産を売却する方法が最も高く売れるでしょう。
また、離婚・相続・生前贈与など特殊なケースでの不動産売却では、買取・仲介などの問題と関係なく、税制が異なりますので実際に手元に残る金額が大きく変わってきます。
不動産売却でできるだけ多くの現金が手元に残るよう、売却方法や節税は十分に検討しましょう。そのためにも、まずはご自身が持つ不動産の価値を正しく把握することが大切です。ご自身の不動産がどれくらいの価値があるのかをはっきりさせておくことで、落ち着いて判断できるようになります。
引き続き、特殊なケースでの不動産売却についても念のためご説明させて頂きますね。
手元に残る金額が異なるケース
買取・仲介とは別の理由で、実際に手元に残る金額が大きく変わるケースがあります。それは、離婚・相続・贈与にかかる不動産売却です。
離婚の時に自宅を財産分与する場合
離婚したときの財産分与には3つのパターンがあります。
① 清算的財産分与
結婚後に2人で形成してきた財産を清算することです。現金だけでなく、有価証券や不動産、貴金属なども財産分与の対象となります。世間一般で「財産分与」というと、ほとんどがこの清算的財産分与を指します。
② 扶養的財産分与
年齢や病気によって働くことが難しく、離婚後に生活が困窮する元配偶者に対して行う扶養です。扶養的財産分与は、一般的に夫から妻へ与えられることが多いですが、病気などの理由によって妻から夫へ与えられるケースもあります。
③ 慰謝料的財産分与
精神的、肉体的に傷つけたことに対する慰謝料として支払うものです。慰謝料とは別に慰謝料的財産分与が認められるケースもあります。
今回は分配可能な資産がマンションのみ仮定し、上記①清算的財産分与についてご説明します。マンションを清算的財産分与の対象とする場合、換金して分配する方法や、どちらか一方が取得して差額を相手に支払うという方法があります。
清算的財産分与を検討する場合、まず不動産の資産価値を確認する必要があります。価値の算出は、不動産会社に依頼した場合その会社の利害が反映されてしまう可能性があるので、離婚によりマンションを売却しない場合は、より客観的な評価を求めるために不動産鑑定士へ依頼する方法があります。
もし話し合いで決着がつきそうであれば、お互いに不動産鑑定士は利用せずに複数の不動産会社の査定額の平均値にするなど無駄な費用がかからないようにしてくださいね。
相続の時に不動産を売却する場合
相続時のマンション売却でも、手元に残るお金が大きく変わってくる可能性があります。主には、相続税の支払いと分配です。
遺産分配
相続した不動産を売却する場合、売却したお金は法定相続人で分配する必要があります。法定相続人は優先順位と配分が以下のように決められています。
2.故人の子供(遺産の2分の1を相続)
3.故人の直系尊属(遺産の3分の1を相続)
4.故人の兄弟姉妹(遺産の4分の1を相続)
たとえば相続人が配偶者1人、子供2人、マンションの売却額が5,000万円の場合、配偶者が2分の1の2,500万円を相続し、子供2人が1,250万円ずつ相続することになります。
また、相続人が配偶者1人、子供はおらず直系尊属が2人、不動産の売却額が5,000万円だった場合、配偶者が3分の2である約3,333万円を相続し、直系尊属が6分の1である約833万円ずつを相続します。
このように、故人と自分との関係性によっても、実際に受け取れる金額が変わってきます。
相続税
相続したマンションの価値が基礎控除額を超える場合、相続税の支払い義務が生じます。基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人数」で計算します。たとえば、配偶者と子供3人がいる場合、法定相続人は4人なので、3,000万円+600万円×4人=5,400万円が基礎控除額です。相続する財産の額が基礎控除額を下回っていれば、相続税の支払いは発生しませんし、申告の必要もありません。
基礎控除額を上回った遺産には相続税が課税されます。相続税額は、課税遺産額を法定相続人で分割し、それぞれが受け取る金額に応じて税率、控除額が設定されています。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | ー |
1,000万円超~3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超~5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超~1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超~2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超~3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超~6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
たとえば、1人2,000万円を相続する場合、以下のように250万円が相続税となります。
2,000万円×0.15-50万円=250万円
特に相続する不動産が高額な場合、不動産を売却しても手元に残るお金は減るので注意しましょう。なお、遺産の分配協議においては、不動産は実勢価格(不動産業者に査定してもらった金額)を基準にするのが一般的です。
不動産の生前贈与を受ける場合
生前贈与とは、任意の人に生前から自分の財産を贈与することです。自身の死後は相続人が遺産の協議分割をしますが、生前贈与であれば自分が資産を渡したい相手に、確実に贈与できるというメリットがあります。また、生前贈与を上手く利用すると節税も可能なので、相続税対策としてもっとも利用されています。
ただし、生前贈与で譲り受けた不動産を売却した場合も、手元に残る金額は少なくなる可能性があります。
贈与税がかかる
生前贈与には贈与税が課税されます。贈与税の税率は、一般贈与と特例贈与で異なります。特例贈与とは、祖父母や父母などの直系尊属から、その年の1月1日時点で20歳以上の子や孫への贈与です。一般贈与は特例贈与に該当しない贈与となります。
▼一般贈与
基礎控除後の課税価格 | 200万円以下 | 300万円以下 | 400万円以下 | 600万円以下 | 1,000万円以下 | 1,500万円以下 | 3,000万円以下 | 3,000万円超 |
税率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | ‐ | 10万円 | 25万円 | 65万円 | 125万円 | 175万円 | 250万円 | 400万円 |
▼特例贈与
基礎控除後の課税価格 | 200万円以下 | 400万円以下 | 600万円以下 | 1,000万円以下 | 1,500万円以下 | 3,000万円以下 | 4,500万円以下 | 4,500万円超 |
税率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | ‐ | 10万円 | 30万円 | 90万円 | 190万円 | 265万円 | 415万円 | 640万円 |
上記の表をもとに、贈与税を算出します。なお基礎控除にも、暦年課税と相続時精算課税制度の2種類があります。
暦年課税
毎年贈与を受けた額から、110万円を控除できることになっています。贈与額が110万円を超えた場合には、超えた分が課税対象です。たとえば一般贈与で3,000万円の不動産を贈与された場合、以下のような計算になります。
(3,000万円-110万円)×0.5-250万円=1,195万円
暦年課税での控除となる場合、3,000万円の贈与を受けると贈与税として1,195万円を支払わなくてはなりません。
相続時精算課税制度
60歳以上の直系尊属から、その年の1月1日時点で20歳以上である直系卑属への生前贈与において選択できる制度です。この制度を利用すると、2,500万円の特別控除が認められ、超過分には一律20%が課税されます。上記と同じく、3,000万円の不動産を贈与された場合、以下のような計算になります。
(3,000万円-2,500万円)×0.2=100万円
3,000万円の不動産を贈与された場合、相続時精算課税制度を利用すると、贈与税は100万円となります。
上記のとおり、生前贈与の場合も税金がかかってきます。不動産を売却した場合も、手元に残る金額は通常より少なくなりますから注意が必要です。できる限り税金を抑えられる方法を検討しましょう。
まとめ
今回のご相談内容である不動産査定額は買取と仲介どちらを前提に提示されたのかにより異なります。
買取の場合は査定額=買取価格
仲介の場合は査定額=売却予想額
インターネットなどの情報は、買取と仲介のどちらを前提に提示された査定額なのか分かりづらく表現されていることが多いため迷われてしまっているのだと思います。不動産査定額は一般的には仲介を前提にしていると考えた方が間違いありません。買取が仲介よりも高く提示されることは稀だからです。
買取が仲介よりも高く提示される場合で考えられることは、不動産会社に別の思惑があり、どうしてもその不動産を買い取りたい理由があるケースだと思います。例えば、買い手の目星が既についているケースや、隣の土地も同じ不動産会社が所有しており、広い敷地として高値で売ることが出来るケースなどです。
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田中 真作
補足コメント
不動産査定は不動産会社や担当者によって査定結果が変わります。不動産の売買価格はあくまでも、売主と買主の希望価格の合致したところで決まります。
そのため、売却する不動産の存在するエリアにおいて、過去多数の売買実績があるような不動産会社や担当者であれば、査定価格より高くても売れるかもしれません。
また、不動産会社や担当者だけに限らず、毎年1~3月など、異動の時期で買主ができるだけ早く物件を見つけたいと思っていれば査定価格より高い価格で売れる可能性が高まります。