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家を売るおおまかな流れ
不動産のなかでも戸建ての売却は、比較的情報を調べやすい傾向にあります。しかし情報が多すぎるあまり、何から手をつければ良いのか迷ってしまうなんてことも少なくありません。こちらでは戸建て売却するにあたって、覚えておきたい全体の流れや不動産会社の探し方、売却方法などの要点に絞ってご紹介します。
家売却の流れ
- STEP.1売却準備・相談マンションにしろ土地にしろ、不動産を手放すにあたってはまず「準備」のステップを踏むことになります。家族と「なぜ売るのか」「希望価格はいくらか」などを相談し、また転居先や新居の決定なども行わなければなりません。それと同時に、家を「売却できる状況」にしておくことも大切です。
たとえば戸建て売却に多いトラブルとして、「越境」問題があります。売却予定の家の一部(屋根、樋、エクステリアなど)が隣地に越境していないか、必ず確認しておきましょう。場合によっては「越境確認書」や覚え書きの用意も必要になります。
- STEP.2査定依頼次に必要になるのが、対象となる家の価格査定です。これは「①売却準備・相談」の段階からはじめても構いません。家の価格査定にはいくつかの方法がありますが、自分でやってしまうのが手っ取り早いでしょう。
しかし戸建てはマンションなどと違って、築年数や間取りだけでは価値を判断しにくいことも多くあります。このため相場が見えにくく、査定金額にばらつきが出やすいところが難点です。売却を本格的に考えているのであれば、不動産会社への見積もり依頼も検討してみてください。
一括査定サイトを利用すると、手軽に複数社の査定額を比較できますが、不動産会社選びには注意しましょう。高い査定額を提示してくれたからといって、それが良い業者とは言い切れません。メール・電話での対応やレスポンスの早さ、知識や実績なども比べてみましょう。
なお家の査定方法は、「机上査定」と「訪問査定」の2種類。必要に応じて使い分けることがポイントです。詳しくはのちほど解説します。 - STEP.3媒介契約「自分の家を売ってほしい」と不動産会社に依頼することを、「媒介」と言います。一般的に不動産取引のプロである仲介会社に売却を依頼しますが、この際に締結されるのが「媒介契約」です。この媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3方式があります。
それぞれの違いを端的に表すなら、「売主(自分)の自由度」が異なると言えるでしょう。どの媒介契約方法が適しているのかは、下記で詳しくご紹介します。 - STEP.4販売活動の開始売却の仲介をしてもらうことに決めた不動産仲介会社と契約を結んだら、販売活動の開始です。販売活動期間はおよそ半年前後を見込んでおきます。ただ広告や宣伝をして終わりではなく、内覧希望・交渉にも対応しなければなりません。土地の売却とは違い、戸建てやマンションの売却に関しては、こうした対応に追われることが比較的多くなります。
- STEP.5売買契約交渉の結果、売主の納得できる相手が見つかれば、購入希望者と売買契約を締結します。このときいくつか必要になる書類がありますが、取得するまでに時間がかかるケースもあるので注意。「売買契約を結ぶ」となってから用意しはじめるのでは遅すぎるため、早めに取り寄せておきましょう。
なお売買契約時には通常、手付金を受領します。手付金の相場は売買代金の10%ですが、これは買主との交渉次第です。 - STEP.6引き渡し売却金額の残金を決済してもらい、引き渡しとなります。複製を含めたすべての鍵の引き渡し、固定資産税・都市計画税の清算、仲介手数料の支払いもこのときに行われるのが一般的です。残金の決済方法には、小切手、振込、現金支払いなどがありますが、小切手決済が最も現実的でしょう。
- STEP.7確定申告家を売却した年の翌年には、確定申告が必要です。特別控除や減税を受けるためにも、忘れず申告をします。
家を売る不動産会社探し
業者でもない限り、「家の売却に慣れている」という方はなかなかいません。その知識や経験のなさから、不動産会社選びに失敗してしまうこともあります。たとえば「不動産会社に言われてリフォームをしたにも関わらず、なかなか売れない」「売却予定期間より半年が遅れ、大幅な値下げをさせられた」「担当者と相性が悪い」などが考えられるでしょう。
こうした失敗を避けるために、家売却でカギを握るのは「売主がコロコロと意思を変えないこと」です。もちろん不動産仲介会社のスキルや営業担当との相性も、大切な要素です。しかし担当から言われるがままにリフォーム・修繕、値下げに応えていたのでは、売主の満足できる売却結果にはなりません。
最低限「希望売却価格」「希望売却時期」のふたつは明確にして、最悪どこまで許容範囲とできるかを事前にしっかりと決めておきましょう。もし売却活動を進めるなかで不動産会社と合わないようなら、会社を変えたり、あるいは売却を一旦中止したりといった選択肢も検討します。
家は相当大きな資産であるため、失敗してしまったときの後悔も大きいもの。売主であるあなたがブレないよう、売却を進めることが重要です。
不動産会社によって仲介と買取がある
家の売却には、「仲介」「買取」というふたつの方法が考えられます。前者の場合、大手ないしは地元に根付いた中小の不動産会社に仲介を依頼。一般の買主(エンドユーザー)を探して売却することになるでしょう。対して後者は、不動産の買取を専門とする業者に家を買い取ってもらう方法です。
簡単に言えば、仲介と買取では家を売る相手が違っています。
仲介の場合
不動産会社に仲介を依頼して、あなたの家を買いたいと名乗り出る顧客を探します。買主となるのは個人だけでなく、法人のケースもあるでしょう。いずれにせよ、エンドユーザーは不動産業者ではありません。
買取の場合
家の買取を専門としている不動産会社、もしくはリフォーム会社などが直接、対象不動産を買い取ります。この場合のエンドユーザーは不動産会社か、その関連業者。リフォームやリノベーションをして転売・販売し、利益を得ることが主な目的です。買取方法には「即時買取」と「買取保証」の2方式あります。
即時買取と買取保証
業者による買取のなかでも、一般的に利用されているのは「即時買取」です。もちろん利用の仕方によっては、「買取保証」のほうが売主のメリットが大きくなる場合もあります。
・即時買取
不動産買取会社が家を査定して、売主が金額に納得すれば即買取をしてくれる方法です。
・買取保証
買取業者もしくは系列の仲介会社が、一定期間は販売活動をして家を売却する努力をします。それでも売れないときに、買取業者が買い取ってくれるという方法です。
買取保証はある意味、通常の販売活動と途中まで変わりはありません。とはいえ売主が買取を希望する場合、相当資金繰りを急いでいるようなケースが多いため、即時買取が一般的になっています。
仲介と買取の仕組みについては理解できたところで、今度はそれぞれのメリット・デメリットを比べてみましょう。
買取のメリット
①金額に納得できるなら、早期での売却も可能
仲介による売却は、広告の準備・販促活動を経てエンドユーザーを見つける必要があり、場合によっては売却まで半年以上かかることもあります。一方の買取なら、不動産会社の提示した金額に納得でき次第に、即売却が可能。最短で1週間前後、長くても1か月前後で現金化できます。
②瑕疵担保責任が免除
売主には「瑕疵担保責任」という、不動産の隠れた瑕疵(構造的欠陥や越境)に責任を持つ義務があります。1年以内など契約の期間中に隠れた瑕疵が見つかった場合、売主が責任を負う必要があるのです。
ただし瑕疵担保責任が適用されるのは、買主が「個人」であるとき。エンドユーザーが不動産会社なら、売主は責任を免れることができます。
③即現金化できる
仲介で買主を探すとなれば、いつ、いくらで売れるかわからない状況が数ヶ月続きます。そのなかで新居を探したり、新生活の準備を進めたりしなければなりません。しかし、それだけ自己資金に余裕があるという人は少ないものです。すぐに現金化できる買取は資金計画が立てやすく、先行きへの不安も軽減できるでしょう。
④仲介手数料が不要
仲介によって売買契約が成立したら、依頼した業者に成功報酬(手数料)を支払う必要があります。実際に売却できた価格によって手数料も違ってきますが、通常は「成約金額×3%+6万円 (別途消費税8%)」で計算が可能です。
たとえば3,000万円で家を売却したケースで考えてみましょう。
3,000万円×3%+6万円=96万円
仲介手数料は約104万円(税込)にもなります。対する買取は仲介をはさまないため、仲介手数料も発生しません。
⑤近隣の住民に知られる可能性が低い
仲介で家を売却する場合、サイト広告への掲載や折り込みチラシの配布などで、どうしても一般の人の目に触れる機会があります。内覧希望者が頻繁に訪れることを、近隣の知り合いが不思議に思うかもしれません。
買取での売却では、買主となる業者と直接取引をします。つまり売却に伴う販促活動が発生せず、周囲に家を売却していることを知られるリスクは低くなるでしょう。
買取のデメリット
①相場よりも相当低い金額となりやすい
業者による買取額は、仲介で売却したときと比較してかなり安いという現実があります。早期に売却できる引き換えとも言えるでしょう。物件の状態にも左右されますが、相場の6割前後も覚悟しておく必要があります。
②家の状態によっては買取ができない
買主となる業者は、購入した家のリノベーションなどを行い、付加価値をつけたうえで再び商品として販売することを目的としています。家の状態が相当悪くても、室内の使用状況が良くなくても大半の不動産は買い取ってもらえますが、越境問題などを抱えている「再建築が不可能な不動産」は別問題です。
買い取っても販売できないと業者が判断すれば、買取依頼は難しくなるでしょう。
③売却は業者任せとなり情報が少ない
同じ条件・同じ状態・同じ立地の不動産など存在せず、相場価格はあくまでも目安に過ぎません。仲介による売却なら、情報を集めやすく査定額の「安い」「高い」もなんとなく判断がつきます。しかし買取の場合、初心者の方が価格の根拠や相場を知ることはほぼ不可能です。
そのことを知っているからこそ、買取業者としても売主の足元を見て買取金額を決めるケースがあります。
仲介のメリット
①売却価格が相場(実勢価格)に近い
②タイミングによっては、より高く売れる可能性もある
③売却に関する情報を集めやすく、自分でも価格の根拠などを理解できる
仲介のデメリット
①市況や買主に影響され、売却までに時間がかかる
②売却時期、金額の見通しが立ちにくい
③仲介手数料が発生する
④なかなか内密には売却活動ができない
⑤築年数が古いとリフォーム費用がかかる可能性もある
⑥瑕疵担保責任に問われるかもしれない
家の売却方法 | メリット | デメリット |
買取の場合 | ・売主が売却価格に納得できれば、早期に現金化が可能
・瑕疵担保責任が免除 ・即現金化できるので資金計画が立てやすい ・仲介手数料が不要 ・近隣に知られる可能性が低い ・内覧がいらない |
・相場より相当低い金額になることも
・家の状態によっては買取を断られる ・買取に関する情報は少なく、業者任せになりやすい |
仲介の場合 | ・相場に近い金額で売れる
・タイミングによっては、より高額で売れる ・情報を集めやすく、価格の根拠も売主自身で理解できる |
・売却にかかる期間は市況や買主に影響される
・売却時期、金額の見通しがなかなか立たない ・仲介手数料が必要 ・近隣に知られず売却に進めることは困難 ・リフォーム費用がかかる可能性もある ・瑕疵担保責任に問われるリスクがある |
不動産会社の選び方のポイント
家の売却を成功させる要素には、不動産会社選びがかなり大きなウェイトを占めています。マンションや土地と違って、家は立地条件や間取り、外見、築年数によってかなり売却価格に差が出るもの。また買主の目線も厳しいと言えます。なかには建て替えを前提に探している買主もいますが、築年数が古いほど売りにくくなる傾向はマンション以上に顕著です。
物件を探している買主は多いものの、売却したい売主も少なくはありません。ライバルのことも頭に入れて、より「早く高く」売るのであれば、市場の動きに敏感である必要があります。もちろん家売却に関するノウハウ、業界のネットワークなども必須です。ただ売主がこれらを身につけるのは、あまり現実的ではないでしょう。
家の売却で不動産会社選びが重要になるのはこのためです。上述したとおり戸建ては、相場の把握が難しいという特徴があります。このとき査定を依頼することで、不動産の価値をざっくりと把握するとともに、不動産会社の対応やレスポンスの早さ、相性などもチェックしてみてください。
【ポイント① 得意分野をチェック】
手広く業務を扱っているような不動産会社でも、それぞれ得意分野と不得意分野があります。たとえば取り扱い物件が賃貸をメインとしているのか、売買をメインにしているのかでは、実績が全く違うでしょう。さらに売買をメインとする不動産会社でも、戸建て・マンション・土地のどれに特化しているのかは異なります。
全国に店舗を持つ大手なら「幅広いネットワーク」が売りですが、地元の中小企業なら「周辺エリアの情報量」には負けません。売却予定の不動産と、不動産会社の得意分野がマッチしているかどうかは、想像以上に結果を左右します。
【ポイント② 営業担当者の実績をチェック】
評判が良い大手の不動産会社だからといって、売買を任せきりにしてしまうのは考えもの。確かに売主が信頼できる不動産会社であることは大切です。しかしそれ以上に、営業担当者の力量によっても売却額や成約率が異なることを理解する必要があります。
不動産会社は極端にいえば、売却後のアフターケアや保証の厚さで選べばそう問題はありません。ただ担当する営業者選びを間違えると、価値のある家でもなかなか売れないということもあり得ます。そのリスクを防ぐためにも、信頼できる担当者を見極める3つのポイントをご紹介します。
1.レスポンスが良い
レスポンスが早い営業担当には、「物事を先延ばしにしない」「相手を待たせない」という習慣がついています。不動産取引においては、時間のロスが命取りにもなりかねません。もちろん返信が早いからといって、誤字脱字が多く可読性の低いメールを送ってくるようなら、注意力の低い人物と予測できるでしょう。
2.高く売却する努力をする。
担当者によっては、できるだけ早く売りたいがために、すぐ値下げを提案することもあります。安く早く売却するのは、誰でもできることです。いかに高く売却するかに力を入れてくれる担当者を選びましょう。
3.社内での決定権がある
会社内で営業実績があれば、それなりのポジションがあって良い話も回って来やすいはず。広告予算がある可能性も高いと言えます。売却実績が豊富かどうかは、力量を判断する材料として重要なポイントです。契約を結んでしまう前に尋ねておきましょう。
【ポイント③ 複数の不動産会社に相談する】
不動産査定では、ベースとなる計算方法に加えて、業者独自の基準を設けていることも少なくありません。このため会社ごとで、査定額に数百万円単位の差が生まれることはよくあります。しかし査定を1社にしか依頼しなかった場合、その価格が果たして平均的なのか、はたまた高いのか低いのかの判断もつかないでしょう。
「査定額が高い不動産会社が良い」とは一概に言えません。とはいえ、相場からかけ離れた価格を提示してくる業者には注意が必要です。価格の根拠を説明できないようなら、それは売主の足元を見ている可能性もあります。複数の不動産会社に査定を依頼することは、リスクヘッジの意味でも重要です。
家の査定方法は「机上査定」「訪問査定」の2種類
良い不動産会社を見つけるには、複数社に査定を依頼する必要があると上述しました。ここで覚えておきたいのが、「机上査定」と「訪問査定」というふたつの不動産査定方法です。自身の状況や希望に合わせて選択しましょう。それぞれの違いをご紹介します。
・机上査定
不動産会社が売主からヒアリング、もしくは査定用紙に家の情報を記入してもらい、近隣の取引事例などと比較して簡易的に査定額を算出する方法です。不動産会社まで時間をかけて足を運ぶ必要がなく、インターネットやメール、電話、ファックスのみで済むというメリットがあります。
デメリットとして考えられるのは、あくまでも机上で行われる簡単な査定に過ぎないという点。実勢価格とはだいぶ誤差がある可能性も、十分にあり得ます。
・訪問査定
不動産会社の査定担当者が、実際に売却予定の家を訪問して査定する方法です。家の外観や日当たり、室内の状況や傷み・汚れ、近隣の環境、駅からの距離感まで把握します。家が建っている土地の形状、接道状況など書面やヒアリングではわからないことも細かくチェックされるでしょう。
メリットとしては、希望の売却額に基づいての相場に近い価格がわかること、気になったことを確実に質問できることがあげられます。家を売却できる可能性が高い価格を、良くも悪くも把握しやすいというのもメリット。いくら売主の希望価格があったとしても、相場からかけ離れた金額だと売却は難しくなります。
その一方で、査定担当者と時間の調整をしなければならない点、自宅に査定担当者が訪問することで近所の人に家の売却を知られやすい点がデメリットです。依頼した不動産会社によっては、査定後にしつこく営業をされてしまう可能性もあります。
以上、机上査定と訪問査定の違いでした。査定額の精度は、言うまでもなく訪問査定のほうが高くなります。さらに家の査定は、建物の劣化が比較的遅いマンションと違って、データとしての築年数だけでは査定がなかなか難しいもの。机上査定だけを参考にするのはかなりリスクがあります。
間違っても1社の机上査定の売却予定金額をもとに、資金計画を立てるようなことは避けなければなりません。いきなり訪問査定を依頼するのは気が引けるという場合、不動産一括査定サイトを利用してみてはいかがでしょうか。無料で複数社に査定を依頼でき、数がそろうぶんある程度の相場もわかりやすくなります。
簡易査定(机上査定)だけであれば電話番号の登録が必要ないサイトも多く、査定担当者からのしつこい営業電話も心配ありません。机上査定も使い方次第では有効に活用できます。
査定時に準備しておくと便利な書類
もう一点、査定時に用意しておいたほうが良い書類についてです。訪問査定時までにあると、より正確な査定結果を期待できます。ただし家の購入が数年、数十年前のこととなると、記憶が曖昧になっていることも多いはず。机上査定や不動産一括査定サイトを利用する際にも、書類は用意できていたほうが便利です。
必要書類 | 内容 |
建物の登記簿謄本(登記事項証明書) | 家の権利関係などが記載された書類です。訪問査定の際は、不動産会社が用意していることもあります。 |
登記済権利証または登記識別情報 | 不動産登記が完了したときに交付されたはずです。必ずしもあったほうが良いわけではありませんが、売却時には必要になるため早めに取得しておきましょう。 |
建物の売買契約書や設計書・図面など | 建物の詳細がわかるような書類です。あると査定がスムーズに進みやすく、より正確な数字となります。 |
越境確認書や越境についての覚書など | 建物の塀や壁、雨樋、エクステリアが隣地に越境している場合、隣地の所有者との確認書や覚え書きなどがあるなら担当者に伝えておきます。 |
リフォーム履歴のわかる明細書 | リフォームをしたことがある場合、そのときの工事明細書などがあると建物の状況が伝えやすいでしょう。 |
これだけの書類があれば、不動産会社の担当者とも話しがしやすくなります。査定を通じて、担当した不動産会社ごとの特徴や担当者の対応も忘れずにチェックしてみてください。
媒介契約の違い
仲介してもらう不動産会社が決まったら、媒介契約を結ぶことになります。契約の種類は「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類です。それぞれの違いをメリット・デメリットで比較してみましょう。
媒介契約の種類 | メリット | デメリット |
専属専任媒介契約:
仲介を依頼できるのは1社のみ。売主が買い手を見つけた場合も、契約を結んだ不動産会社を通さなければならない。 |
①報酬額が高くなりやすく、不動産会社が積極的に広告費をかけて販売活動をしてくれる
②1週間に1回以上の販売状況の報告が義務であり、現状を常に把握できる ③対象不動産はレインズ(指定流通機構)へ登録され、多くの不動産会社にアクセスされる可能性が高くなる ④両手取引(売主・買主どちらも自社で見つけ、双方から仲介料をとる方法)を見込んで、他業者にもアプローチすることもある |
①専属であることに甘んじて、販売活動を積極的にしない業者もいる
②自社での両手取引にこだわり、買手が見つかるまで時間がかかりやすい ③売主自身で買主を見つけたとしても、専属専任契約を結んだ不動産会社を通さないと契約は不可能 ④契約期間によっては最長で3ヶ月時間を無駄にしてしまうリスクがある |
専任媒介契約:
仲介を依頼できるのは1社のみ。売主が買い手を見つけた場合、不動産会社を通さなくても契約が可能。 |
①一般媒介契約よりは不動産仲介会社が積極的に売却活動をしてくれる
②2週間に1回以上の販売状況の報告が義務であり、現状をある程度は把握できる ③自分で買い手を見つけたとき、不動産会社を挟まず契約できる ④レインズ(指定流通機構)への登録が義務のため、対象物件が多くの不動産会社にアクセスされやすい |
①専任に甘んじて、販売活動を積極的にしない不動産会社もある
②専属専任ほどではないが、自社での両手取引を意識することで売却に時間がかかることもある ③契約期間によっては、最長3ヶ月時間が無駄になる可能性もある |
一般媒介契約:
複数の不動産会社へ、同時に仲介を依頼できる |
①専属・専任のような制約がなく、複数の不動産会社に売却を依頼できる
②急な予定変更でもトラブルなく媒介契約を終了できる |
①不動産仲介会社からすると、報酬を得られるかどうかは早い者勝ち。なかには広告や販売活動に消極的な業者も出てくる
②家の売却条件によっては、担当してくれる不動産会社が名乗りでない場合もある |
どの媒介契約方法が適しているのかは、時間や資金の余裕によっても違います。まずは制約の少ない一般媒介契約で様子を見てみるというのも、ひとつの方法です。
遠方の家を売りたいとき
売りに出す不動産が、現在住んでいるエリアに近いとは限りません。相続で引き継いだ地方の一軒家や、すでに遠方へ引越している場合なども考えられるでしょう。平成27年には「空き家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)」が施行となり、その対処に悩む方も年々増加しています。
「対処の仕方がわからず放置している」というケースもよく聞かれますが、あまりおすすめはしません。空き家になっているような遠方の家を所有(維持)することには、どのようなデメリットが考えられるのでしょうか。
遠方の空き家を所有するデメリット
デメリット1:家のメンテナンスと維持費用
人が住まなくなった家は、居住用として使われているときに比べて、あっという間に劣化が進みます。相当定期的にメンテナンスしない限り、劣化しどんどん資産価値も下がるでしょう。しかし遠方の家となると、定期的なメンテナンスには時間も交通費もかかります。
数ヶ月程度なら問題なくとも、長期間の所有となればストレスにもなり、維持費用も軽視できません。
デメリット2:放火・事故・不審者などのリスク
放置されている空き家は見てすぐにわかるもの。このため放火のリスクや、不審者が自由に立ち入ってしまう可能性も高くなります。建物が劣化したことで屋根や壁が剥がれ、通行人にケガをさせてしまうリスクもないとは言い切れません。
デメリット3:固定資産税が上がる可能性・税金優遇制度の適用外
現在は固定資産税が低く課税されていたとしても、法改正によって空き家の税制度が変わる可能性もあります。国の空き家対策が本格的になれば、税制が大幅に変更されるかもしれません。
空き家にはこのようなデメリットがある一方で、メリットとして考えられるのは「空き家があることによる固定資産税の軽減」や「賃貸に出して家賃収入を得られる」くらいでしょう。いずれも家の売却を検討しているという場合には、あまり意味をなしません。デメリットとメリットを天秤にかけて、売却をするのか、活用法を探すのか早めに決断を下しましょう。
遠方の家を売却するときの相場は?
遠方の家を売却する場合も、通常所有している家を売却するときと方法は同じです。不動産一括査定サイトなどで簡易的な査定依頼をすると、おおよその金額はわかるでしょう。固定資産税を毎年納めているはずなので、この固定資産税評価額から算出することもできます。
たとえば固定資産税評価額が1,000万円の物件なら、以下のように計算可能です。
1,000万円÷0.7(固定資産税評価目安)=およそ1,400万
この場合、約1,400万円が建物の価値(相場)と判断できます。
遠方の家をできるだけ早く高く売る方法は?
遠方の家を早く、高く売却する方法したいと考えるなら、2つの方法が考えられます。ひとつが、リフォームもしくはリノベーションを行い、新たに地域のニーズに即した物件として売り出すことです。家の状況にもよりますが、現況があまり良くない物件なら特にリフォーム・リノベーションは前向きに検討してみてください。
費用対効果になりますが、売却価格が見込めそうなら検討の価値はあります。不動産として大きな問題がある場合、買い手が見つかりにくくなりかねません。最低限の費用をかけて建物を蘇らせることも、売却のためには有効な手立てです。
もうひとつの方法が、現在の家を取り壊し解体して、更地として売却すること。長年放置された古家があるよりも、更地のほうが売却はしやすくなります。エリアや立地条件にもよるため一概にも言えませんが、空き家があるよりかは買主が見つかりやすいでしょう。ただし売却できない場合、固定資産税や相続税評価額が上がる可能性もあるので注意します。
遠方の家を売却依頼する不動産会社の選び方
なかなか現地に足を運べない場合、どこに家の売却を依頼すれば良いのかも迷いどころです。遠方、特に都心ではなく地方の不動産の場合には、そのエリアにも支店があるような大手不動産会社を利用すると何かと便利でしょう。同じ系列の不動産会社なら、仮に都心にいたとしても意思疎通がしやすく、担当者への確認もスムーズにできます。
独立採算制で営業しているようなチェーンの不動産会社は避けたほうがベターです。直営の店舗がある場合、現在住んでいる場所から近い店舗に相談するだけで済みます。
あるいは売却までの時間の早さを優先させるなら、買取業者に依頼してしまうのも一案です。いちいち遠方への行き来をする必要もありません。買取なら瑕疵担保責任なども免除されるため、古家を手放すにあたってもストレスや心配が少なく済むでしょう。
遠方の家を売却するとき、立ち合いはどうなる?
売買契約はかなり大きな決定事項であるため、通常は売主立ち合いのもとで行われます。しかし日程の都合がつかず、どうしても出席が難しい場合もあるかもしれません。この場合、3つの代替策が考えられます。
まずひとつが「持ち回り契約」と呼ばれる方法です。契約の場には直接足を運ばず、買主の署名と捺印がされた契約書を送付してもらいます。その後、売主が残りを記入し再度、不動産会社に送付する形です。あるいは郵送ではなく、不動産担当者に両者の間を行き来してもらうこともできます。ただし買主が不安を感じてしぶることもあるため、確実な方法とは言えません。
もうひとつは、売主の署名・捺印を済ませた契約書を家族や親せき、信用できる知人などに預ける代理契約方法です。対象不動産に近いエリアに知り合いがいる場合、お願いをしてみるのも良いでしょう。
そして最後が、署名捺印まで代理人に任せる方法です。この場合、代理人に与えた権限の重みによっては、代理人が勝手に契約を破棄できてしまいます。また契約において代理人がなにかミスをおかしてしまっても、責任を問われるのは売主です。このため不動産売却に関して知識がまったくない初心者などを代理人に任命するのは、多少リスクがあります。
以上の3つの方法のうち、いずれかを利用すれば売買契約時に現地へ出向かなくても問題はありません。
家が売れるまでの期間
家の売却が長期化した場合、資金計画が立てづらくなるほか、建物の劣化が進み、値下げせざるを得ない可能性もあります。「なるべく早く売れて欲しい」と考えるのは当然のことです。大手不動産情報サービス・アットホームによる「中古物件の“売り手”と“買い手”のキモチ調査」によれば、「売却までの平均期間は約8ヶ月」と報告されました。
なかでも対象不動産を戸建てに絞った場合、結果は約11ヶ月という結果に。あくまでも参考ですが、半年以上はかかると考えておいてください。期待し過ぎは禁物ですが、のんびり構えすぎていると「いつまで経っても買い手が現れない」ということも考えられます。
もしかすると媒介契約を結んでいる不動産会社の努力不足かもしれません。その場合、仲介を依頼している業者を変えることでも、売却期間を短縮できる可能性があります。それでも難しいときは、「値付け」に問題があることも。最終的にはやはり値下げをすることが、最も手っ取り早く売却する方法です。
さらに「仲介」「買取」のどちらの方法をとるかでも、売却にかかる時間は違ってきます。一覧にして比較してみました。
仲介 | 買取 | |
①準備相談 | 2週間前後
家族や親せきとの相談、転居先・新居の決定をはじめとする事前の準備期間です。家庭によって、どれだけ時間をかけるかは異なるでしょう。 |
2週間前後
家を手放すことを決定したとき、早期の売却を優先するのであれば買取も検討します。 |
②査定依頼 | 3週間前後
複数社に査定を依頼し、そのときの対応やレスポンス、査定額などを総合して不動産会社を選定します。 |
2週間前後
仲介での売却時よりは、査定依頼をする件数は少なくて問題ありません。 |
③不動産会社との媒介契約 | 1週間前後
媒介契約時には身分証明書、登記済権利書、認印が必要になります。ほかにも不動産会社から伝えられた必要な書類があれば、契約時までに用意しておきましょう。 |
― |
④販売活動の準備 | 1週間前後
媒介契約を締結した不動産会社の担当と家の値決めをします。ポータルサイト用の写真撮影も、このときに行うことになるでしょう。 |
― |
⑤販売活動開始 | 1ヶ月前後
不動産ポータルサイトや新聞折り込み、チラシ、ポスティングなど、家を売るための販促活動を開始します。 |
― |
⑥問い合わせ・内覧 | 1ヶ月前後
家の値決めがうまくいっていれば、販売活動開始後に問い合わせや内覧希望者が現れます。 日程を調整しながら、値下げ交渉も含めて対応しましょう。 |
― |
⑦売買契約 | 2週間前後
価格交渉や条件提示の内容に売主が納得できたら、その買主と売買契約を結ぶことになります。 手付金もこのときに受領するケースが一般的です。 |
1週間前後
買取の場合、売買契約を結ぶ相手は業者です。 |
⑧決済・引き渡し | 2週間前後
買主が住宅ローンを利用する場合、銀行の融資に時間がかかることもあります。ただし一般的には、売買契約の時点で仮審査が下りているはずです。2週間以上時間がかかることはほぼありません。 残金を決済し、引き渡して終了です。 |
1週間前後
業者によっては、売買契約当日のうちに決済できることもあります。引き渡しが住んだら、売却は終了です。 |
家を売る際にかかる費用
不動産を売る際に発生する金銭は、売主の手元に入る売却価格だけではありません。売主にも、支払わなければならない費用があります。費用の概算と支払うタイミング、また家の売却にともなう税金の問題について見てみましょう。
費用項目 | 内容 | 費用金額 | 支払い時期 |
仲介手数料 | 家売却の仲介を依頼した不動産会社へ支払う成功報酬 | 売却価格が400万円を超えるとき:
【売却価格×3%+6万円】×消費税 売却価格200万円~400万円まで: 【売却価格×4%+2万円】×消費税 売却価格が200万円以下の時: 【売却価格×5%】×消費税 |
締結した媒介契約書の内容によっても違いますが、売買契約時に半金、決済引き渡し時に残金を支払う形が一般的です。 |
印紙税 | 売買契約時に、売買契約書に貼付する必要がある収入印紙代 | ・売却価格100万円超500万円以下:1,000円
・売却価格500万円超1,000万円以下:5,000円 ・売却価格1,000万円超5,000万円以下:1万円 ・売却価格5,000万円超1億円以下:3万円 ※軽減特例適用時 |
売買契約時に必要です。 |
抵当権抹消費用 | 売却する家に抵当権が設定されている場合にかかる費用 | ・登録免許税で、建物につき1,000円
・抵当権抹消手続きをする司法書士に支払う報酬:1万5千円前後 ※自分で抵当権抹消手続きをすることも可能ですが、難易度が高いため専門家に頼むケースがほとんどです。 |
残金決済時まで |
クリーニング・リフォーム費用 | リフォームやリノベーションをしてから売却する場合 | 5万円~
※クリーニング・リフォーム・リノベーションの内容によって異なる |
家の査定、内覧前までに |
引っ越し費用 | 家の売却にともなって転居が必要な場合 | 引越し先の間取り、荷物の数、距離にもよる | 1~3月、6月などの繁忙期は
引越しにかかる費用が高くなります。早めの見積もりを心がけましょう。 |
上記であげたものは、比較的わかりやすい費用です。多くの方がつまずいてしまう費用といえば、売却したあとに発生する「税金」。売却できたことで安心して、税金や確定申告を忘れていたという事例は少なくありません。場合によってはペナルティの対象にもなりかねないため、注意しましょう。
税金・確定申告による特別控除
不動産を売却した翌年には、確定申告を行います。申告時期は、家を売った年の翌年2月15日から3月15日まで。税金を計算するうえでの所得(利益)は、家の売却金額から取得費(家を買ったときの金額、家を売る際に掛かった費用など)を控除した金額を基に計算します。
また譲渡所得の計算には、家の「所有期間」が大きく影響することも覚えておきましょう。
所有期間が5年を超える時=長期譲渡所得=税率20%
所有期間が5年以下の時=短期譲渡所得=税率39%
※所有期間は家を売却した年の1月1日で判定
※住民税込み
所有期間が5年以下か、それよりも長いかで税金の計算結果には2倍もの違いがあります。これをふまえたうえで、家の譲渡所得は以下のように算出が可能です。
売却金額−(取得費+売却費用)=譲渡所得
売却費用としては、さきほどご紹介した仲介手数料・登記費用・不動産所得税・契約書の印紙代などがあります。特に注意したいのは家の取得費です。取得費は、購入した当時の金額では計算できません。なぜなら家は住み続けることで経年劣化するため、そのぶん減価償却をして取得費から引く必要があるのです。
これを忘れてしまうと、売却利益が少なく計算されることになります。自分で確定申告をする際には十分確認しましょう。
しかしながら日本という土地の影響もあり、戸建てを売却する際に売却益が出ることはあまりありません。四季を通して湿気が多いことや、木造建築が多いために家の価値が低くなりやすいことが理由です。マンションであれば、立地によってプレミアムがついて売却益が出ることもあります。ただ上物だけでそれほど多くの利益は見込めないのが現実です。
「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」という税制上の優遇制度もありますが、適用するには土地付きの戸建てで、「土地」のほうに価値があるようなケースを想定しておきましょう。
家を売る際に必要な準備書類とそのポイント
実際に売却が決まり、売買契約を結ぶときには必須で用意しなければならない書類があります。なかには「査定時にあったほうが便利な書類」と共通したものもあるため、そういったものから優先して取り寄せるのも良いでしょう。
通常は媒介契約を締結した不動産会社の担当者から、事前にひととおり書類の内容は伝えられます。売却することを決めた段階で少しずつ集めておくと、いざというときに焦りません。
必要書類名 | 取得可能場所 | 内容 |
①所有権登記済証(権利証)または登記市議別情報通知書 | 法務局
※紛失してしまった場合 |
「登記済証」とも言われる、家の所有者を登記権利者として証明するための書類です。 |
②印鑑証明書(3ヶ月以内に発行のもの) | 住所がある自治体、コンビニ(マイナンバーカードがある場合) | 売買契約時に実印を求められるほか、各種登記の際にも必要になります。 |
③固定資産税・都市計画税納税通知書・固定資産税評価説明書 | 市区町村の課税課 | 固定資産税を売却時に案分して、買主と清算するときに使います。 |
④抵当権抹消書類 | 抵当権抹消を依頼した司法書士 | 家を購入したときに、借入金の担保として抵当権を設定している場合があります。このときは抵当権を抹消しない限り、売却できません。 |
⑤本人確認書類・実印・委任状 | 免許証やパスポートなど、本人画像がある書類 | 売却を代理人に委任する場合には、委任状も必要になります。 |
⑥鍵(複製も含めたすべて) | ― | 売却後に鍵は交換されますが、複製した鍵も含めすべて引き渡し時に渡しましょう。
オリジナルの鍵をなくしてしまった場合、理由をきちんと説明できるようにしておきます。 |
⑦住民票 | 住所がある市区町村、コンビニ(マイナンバーカードがある場合) | 本人確認書類があれば、必要でないこともあります。事前に確認してみてください。 |
⑧境界確認書、越境の覚書 | 法務局 | 家の屋根や樋、エクステリアが隣地に越境している場合などは、隣地所有者との覚書や確認書を用意しましょう。境界問題を黙っておくと、のちのちのトラブルにもつながります。 |
なかでも「①所有権登記済証(権利証)または登記市議別情報通知書」は聞き慣れない名前ですが、不動産売却においてはとても重要な書類です。その概要をご紹介します。
所有権登記済証(権利証)・登記市議別情報通知書とは
所有権登記済証(権利証)は、「不動産の所有者を確認」するために必要な書類です。売却予定の家の移転登記で、売主から買主に権利を移すときにも必要となります。最近は改正不動産登記法が施行され、資料の電子化が進んだことで「登記識別情報通知書」が一般的になりました。
務局の不動産部門で取得が可能です。この登記識別情報通知書には英数字を組み合わせた12桁の記号が記載され、シールで見えないように隠されています。以上が権利証(登記識別情報通知書)の簡単な概要です。
権利証(登記識別情報通知書)はなぜ重要?
家の売買が済んだあと、一般的には売主から「買主に所有者が移転しました」と法務局に申請します。しかし、この所有権移転登記は義務ではありません。赤の他人との売買ならあまり起こり得ませんが、親の代から家を相続し遺産分割をしたものの、登記をしていない家庭などはよくあります。
身内や家族内での取引なら問題はなかったとしても、第三者との売買契約でそうはいかないでしょう。実際の不動産の所有者を確認する手段は、「権利証(登記識別情報通知書)」しかないためです。登記簿謄本だけでは不確かな不動産の真の所有者を知るため、不動産会社は必ず必要書類としてこれを挙げます。
権利証(登記識別情報通知書)を紛失した場合
不動産登記法改正前に取引されたような家だと、権利証が見つからないということもあるでしょう。もし紛失してしまった場合、印鑑証明書などと違って簡単に取り寄せることができません。以下の3つのいずれかの手続きが必要になります。
1.公証人による本人確認制度 | 「不動産登記法第23条第4項第2号」に基づき、公証人が家の名義人を確認したのち、法務局がそれを認めるというステップを踏みます。このため公証人との面談が必要です。公証人への依頼費用として1通3,500円かかります。 |
2.事前通知制度 | 時間はかかりますが、費用は発生しません。登記申請当日には権利を変更できない旨で、買主から了解を得る必要があります。 |
3.本人確認情報の提供制度 | 司法書士が家の所有者本人であることを書類と面談で確認して、権利証に代わる書類を提出します。ただし書類に不備がある場合、スムーズには権利変動できない可能性もあるでしょう。
司法書士手数料がかかると同時に、面談等の時間も発生します。 |
いずれの方法をとるにしても、それなりの時間を要することになります。家の売却を決めた時点で、権利証もしくは登記識別情報通知書の有無を忘れずに確認しておきましょう。
家を売った後にやること
売買契約を締結した段階で、「家を売却した」ということ自体は成立した事柄となります。ただし、これはあくまで契約上のもので、ここから【移転登記】と【立ち合い】、さらに【引き渡し】の工程が必要です。ここまで完了したうえで、年度末に【確定申告】をして、「家を売る」のに必要な手続きがすべて終わり。家の売却には、成立まででほっとしてしまい、それ以降の手順を忘れて後々に不備とならないよう、事後の手続きも覚えておきましょう。
移転登記
移転登記は、自分が所有していた家を、買主である新しい持ち主のものになったことを証明するために行うものです。この手続きは専門書類となるため、通常売買契約が済んだらその足で法務局へ申請に行くのが基本。決済時に司法書士が同席してもらい、必要書類をその場で確認しておきましょう。
このとき、売主が用意しておく必要のある書類は以下の6つです。
①不動産売買契約書
②登記識別情報又は登記済証
③印鑑証明書 ※発行後3ヶ月以内のものが必要
④固定資産評価証明書
⑤委任状
⑥身分証明書 (本人確認書類)
印鑑証明書の住所が、登記簿の住所と異なる場合には、別途で住民票の提示が求められるケースもあります。決済より前に印鑑証明書を取得しておき、この際に住所の差異があるかを確認しておくと安心です。
また、⑥の本人確認書類には、顔写真のあるパスポートや運転免許証といったものが求められますので注意してください。
移転登記にかかる期間
法務局による処理が必要なので、一定ではありませんが1週間から2週間程度を見積もっておくようにしましょう。後ろの手続きを先んじて進めることはできないので、スケジュールの確保はこの期間を事前に織り込んでおく必要があります。
移転登記に必要な費用について
移転登記には、税金や必要資料の準備のために専門家委託に費用がかかります。具体的には、「登録免許税」と「司法書士手数料」が挙げられます。前者は、固定資産税評価額の1,000分の3(居住用として算出)、司法書士の手数料は2万円前後が相場です。
これらの費用負担については、売主と買主のどちらにあるのかが義務付けられているわけではありません。売買契約時に話し合いをしたうえで、契約書に明文化して双方の納得をした状態で手続きを進めます。
立ち合いおよび引き渡し
売却後、引き渡し時に現地での立ち合いは任意で行われるもので、必須ではありません。ただし、買主より希望があった場合は、意向に沿ったほうが後々のトラブル回避につながるため事前に確認をしておきましょう。もし、買主側からの希望がない場合で、現状有姿での売却に関して合意が取れていれば、鍵の引き渡しのみで済ませても問題ないでしょう。売買仲介を依頼した業者が代行することも少なくありません。
確定申告
「家を売る際にかかる費用」でもご紹介したとおり、家を売却した場合には年度末に確定申告が必須です。これは、譲渡利益(売却益)が出たことを所得して申告する必要があるため。また売却益がない状態であっても、損失として申告することで納めた税金が戻ってくる優遇措置があります。売却における損、得を問わず忘れずに申告するようにしましょう。
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
家屋の売却時に得られる税制上の優遇制度として「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」があります。確定申告と合わせてこちらも覚えておきましょう。これは、売却金額から取得費や売却費用を控除した計算でプラスが出たとき、「3,000万円までであれば、その利益に税金がかからない」という制度。売却で利益が出たときには、この制度で範囲内であれば課税されることなく額面通りを受け取れます。
建物のみの売却では、大きな利益はなかなか難しいかもしれませんが、付加価値があれば話は異なります。たとえば、土地付き戸建てで、立地や家屋の価値が高く、転売益も考えられるような物件に関して売却が成立した場合には大きな利益となるでしょう。こういった税制上の特例についても覚えておいて損はありません。
家を売る時の注意点
ここまでに説明したような売却時に覚えておきたいようなこと以外にも、いくつかの細かい注意点があります。時期や手続き、税金のようなものと比べれば大きな影響はありませんが、知らずに売却した場合トラブルの原因となりがちです。下記のようなものは確実におさえておきましょう。
注意点 | 内容とポイント |
①「境界明示義務」について | 境界明示というと、土地売却の際に問題となる隣地との【境界】が挙げられますが、家の場合には、【越境】にも注意が必要です。これは、地続きの部分では問題がなくとも2階部分や屋根が境界を越えているケースのことを指し、屋根に取り付けたアンテナや雨どいといったエクステリアが隣地にはみ出してしまっている状態が該当します。
特に、長期間保有・居住していた場合には、近所づきあいでトラブルにならなかったようなことでも、所有者が変わったことで顕在することもあります。後々の面倒を避けるためにも、隣地の居住・所有者との確認や仲介依頼をした不動産会社にも確実に伝えるようにしましょう。 |
②家の隠れた瑕疵 | 中古の物件で築年が経っている家を売却する際には、特約で瑕疵担保責任免責での取引をしていたり、つけていても短い期間で設定していたりすることが多いです。しかし、これらの告知を十分に売主に行わないまま売却を完了した場合、後になってから損害賠償や契約解除の対象となってしまう可能性もあります。
とくに問題になりやすいのが「隠れた瑕疵」です。これまでにあった欠陥や本当は修繕が必要にもかかわらず放置した箇所がある場合には、後に見つかったときに大きなトラブルの元。雨漏り、配管の不具合、シロアリなどが代表的ですが、こういった内容は、売却成立前に確実に伝えておくことが必要です。 |
③過去における自殺、他殺事件など | いわゆる「事故物件」の場合には買主による告知義務があります。売却価格に大きく影響するため、知らせたくない気持ちもわかりますが、訴訟に発展するようなリスクもあるため必ず明示するようにしましょう。 |
④近隣とのトラブル | 上記は、確実に伝えておきたい事項となりますが、町内会でのトラブルの事例など、家屋に直接付随しないような環境の話題は、開示をどこまで行うかがあいまいな部分です。しかし、売買成立後のトラブルを避けるのであれば、仲介業にも伝えたうえで書面化するといった対策をとることもよいでしょう。 |
⑤オーバーローン | 家に対して借入の担保をするために抵当権を設定していた場合、借入残高が売却価格を超える状態をオーバーローンと呼びます。この状態で、建物自体を担保として抵当権を入れている場合には売却ができません。
建物の価値はローンの返済スピードを上回るケースが多いため、新築購入をしている方でも発生する可能性があります。ローンが残っている場合には、事前に残高と抵当権があるかどうかについて確認をしておきましょう。 |
不動産一括査定サイトを上手に活用しよう
家の売却には、ここまでに述べたように、さまざまな手続きや必要書類が求められます。働いている方が片手間ですべてを進めることは至難だといえるでしょう。そこで考えたいのが、不動産会社に相談することです。
不動産会社では、家の売却に関する仲介を請け負ってもらえるほか、価格交渉や手続きをワンストップで行ってくれるため、売主となる方の負荷を軽減できます。
ただし注意しなければならないのは、家の売却査定自体が不動産会社によって差が出てしまうこと。自身で売るのではなく仲介業者を挟む分だけ買主からの信頼は得られやすくなる一方で、不動産会社の査定額は必ずしも自分自身の希望通りとはならないかもしれません。しかも、その価格が希望通りでなかったときに、果たして適正な相場に近いのかどうかは、売主では判断できないことがほとんどです。
とはいえ、複数の会社に相みつをとろうと、自分の足で不動産会社に1社ずつ連絡をするのも簡単にはできません。その点、インターネットの不動産一括査定サイトであれば、利用者が自分で希望を記入したうえで、見積もりをお願いする会社を絞ることが可能。連絡希望も働いている時間を外したうえで、手段をメールやSNSといった指定もできます。
これであれば、手間や時間もかからずに家の売却準備が進められるでしょう。大手、地元の不動産会社含め複数社から、自宅にいながら売却査定金額を確認でき、ロスも最低限に取引を進められます。もちろん買主を探すことも書類の準備も、慣れた業界のプロが進めてくれるため、信頼できるパートナーとして助けになってくれるでしょう。